2015年9月3日木曜日

[86] 資産運用:トヨタの新しい風⁈【国内政経】

♪新しいトヨタ株(AA型種類株式)が話題になりました!
トヨタ自動車は元本保証、最高2.5%の配当利回りという、これまでにない新たなスタイルの株を2015.6月に発行しました。通常の株には元本保証はなく、株価が下がればその分は損失となります。それが、この株式は元本保証(トヨタに対して発行価格での買い取りを要求できる)というのだから魅力的です。

◆通常と違う点は、
 この新型の株式は“種類株式”と言い、通常会社が発行する株式(普通株式)とは異なります(ちなみに、普通株式とは議決権・利益の配当がそれぞれ株主の持っている株の数に応じて一律に決まります)。

◆“種類株式”のメリットは、
 この“種類株式”のメリットは、議決権・配当・譲渡などを“普通株式”と違うようにすることができる点です。今回の新型株はこの方法を用いることで、出資者にとっての魅力を生みだすことがきるようになりました。トヨタ社にとっても“種類株式”を発行することで、資金調達というメリットを得ることができます。

◆このトヨタ株のデメリットは・・・
①今回のトヨタの新型株の場合、最大の難点は“普通株式”のように、自由に売買できないことです。
・取得についてはトヨタが募集した時に応募する形をとっているため、欲しいと思っても発行のタイミングまで待たなければなりません。
・また、譲渡も最初の5年間はできない決まりになっています。
②リスクについては“普通株式”と比べて低いですが、当然トヨタが倒産したときは、払い込んだお金は戻らないといったことが生じます。万が一上場廃止となった場合は、普通株式に転換できないといった不都合もあります。

◆発行時の条件は、
(1)募集要項:
•発行予定額:5,000億円、発行数は3000万~5000万株を上限
•発行価格 :普通取引の終値に1.26倍~1.30倍した金額。普通株8,000円くらいなので1株9,600円くらい!?
•申込単位 :100株以上で100株単位
 
(2)配当について:
2015年度は0.5%、1年ごとに0.5%ずつ上がり、2020年には2.5%になり、以降、2.5%を継続します。現在のトヨタ自動車の予想配当利回り(*)の値は2.36%になります。現況で比較すると、最初の4年間は普通株式のほうが利回りは良いのですが、5年以降は新型株のほうがよくなります。
* 予想年間配当金を株価で割って算出した値、数値は2015年3集の会社四季報より

(3)譲渡制限:
取得後、5年間は売れませんが、経過後は種類株式のまま保持することもできますし、普通株式へ転換または発行価格でトヨタに買い取ってもらうように要求することもできます。

※トヨタ自動車の株価が上がっていれば、普通株式に転換し売れば売却益となります。反対に株価が大きく下がっているときは、普通株式に転換すると損失となります。その時はそのまま持ち続けるか、取得価格で買い取り請求を出すかの選択肢があります。銀行預金などと利回りを比べて、新型株の配当2.5%のほうが有利と判断したならば、そのまま持ち続けるのがよいです。
トヨタに発行価格で買い取ってもらう場合、売却益は出ませんが、その間に配当金を受け取っているので、銀行預金と比べたら、受け取った金額は多くなることが予想されます。
(4)議決権は普通株式と同様にあります。
(記事提供者:税務研究会 税研情報センター)

*** あとづけ ***
●メリットをもう少し具体的にみてみると。
《配当》
毎年0.5%ずつ上がり5年後には最高の2.5%となります。5年間で平均すると1.5%になり、6年目以降は株式をそのまま保有していればずっと2.5%の配当になります。普通株の現在の配当は2.0%ですので、このAA株の5年目以降は、普通株の配当の率を超えることになりますね。
•2016年3月期:年0.5%
•2017年3月期:年1.0%
•2018年3月期:年1.5%
•2019年3月期:年2.0%
•2020年3月期:年2.5%

《狙える値上がり益は・・・》
2015年6月18日号の東洋経済の記事では、5年目以降以下の3パターンのどれでも損をしません。
•選択肢1の場合:
5年後に、トヨタの普通株価がトヨタのAA株を上回れば、売却して利益を得ることができます。これに加えて、5年間分の配当もあるため、配当+売却益で最も得するパターンです。

•選択肢2の場合:
5年後に、AA株をそのまま持ち続けていれば毎年2.5%の配当ももらうことができます。

•選択肢3の場合:
5年後に、トヨタの普通株価がトヨタのAA株を下回った場合でも、トヨタに元本価格で買い取ってもらえるために5年間分の配当がプラスとなります。

●デメリットをもう少し現実的にみてみると。
【税制上は非上場株式扱い】
このトヨタのAA株は、特定口座やNISA口座に組み入れることはできません。また、株式の配当については20.42%(所得税および復興特別所得税)が源泉徴収され、総合課税分としての確定申告が必要になります。

【野村證券のみ】
発売した際、購入できるのは野村證券のみで、ネットで購入もできませんでした。そしてこの野村證券の株式の購入手数料は高かったようです。以下が、野村證券でトヨタのAA株を購入した場合でしたが、普段はネットで株式を売買している手数料からみれば法外な手数料と言えそうです。300万円分の株式を購入しただけで、実に29,000円近くの手数料がとられたようです。(すでに完売ですが)
・100万円超 300万円以下 :0.8640% + 3,327円
・300万円超 500万円以下 :0.8316% + 4,299円
・500万円超 1,000万円以下:0.6912% + 11,319円

●総合的な実入りをみてみると。
発行価格が普通株式の1.2~1.3倍の金額で設定されているため、買ったときより20%超えたときから利益となるので値上がり益はあまり望めそうにありません。トヨタの今後がどうなるかは分かりませんが、20%の上昇でも値上がり益がでないのでリスクをとっても値上がり益を目指す場合には向いていないかもしれません。また、前述しましたように、野村證券の手数料+配当に対する税金の20.42%があるので、配当の利益は5年間で実質1%前後になります。
これらを踏まえた上で、5年以上使わず寝かせておける資金があるのであれば是非検討したい商品になり、大きな投資機関や安全志向の方には、元本割れせずこの低金利の世の中では魅力的な投資と言えます。
以上大きな話題となったトヨタの新型株第一回の募集は残念ながら終了してしまいましたが今後、他企業でも種類株式の発行の可能性は大いにあります。新たな資産運用の形としては有益だといえるかもしれません^^♪
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト |
http://et-inc.jp  

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