企業価値と株主価値はよく使われる言葉ですが、その両者はどのように違うのでしょうか。
◆貸借対照表の左のお話
貸借対照表の左側は資産項目が並んでおり、“お金をどのように運用しているか”を表示しています。資産とは、今後収益を生み出す財産をさしており、手持ちの財産をどのように有効に使って収益を上げるかが企業は問われます。
★資産から収益を上げる方法には大きく次の2つの方法
・資産を今の時価で売却してキャッシュに換える方法。
・資産を長期保有し事業に役立てて収益を上げる方法。
一般的には資産を全部売って現金に換えてしまうより、資産を使用して将来にわたって収益を上げた方が有利なはずです。なぜなら、企業は利益を求めて行動しており、そのために資産を保有し上手に利用する事が目的だからです。そこで大切な点は、“資産の使い方が企業価値を決定する”というところです。企業価値とは企業全体の価値、いわば企業全体の値段です。企業価値は多くは、資産を事業に使用することにより生ずる将来収益により決まるとも言えます。
★具体的企業価値評価には
・コストアプローチ ⇒ BSの資産合計に近い考え方 (清算価値)
・インカムアプローチ⇒ 将来の業績を予測し現在のキャッシュフローを生み出す価値
・マーケットアプローチ⇒実際の取引株価で評価する (株価倍率法)
があります。ですので、同じ資産を保有していても、その利用の仕方が違えば企業価値の切り口も変わることになります。資産が高収益を上げるように使えば企業価値は増えますし、下手に使えば企業価値は減少することになるので、資産の使い方が企業価値を決めそれをうまく使うことが経営者に求められる能力といえます。
★このように、企業価値は貸借対照表の資産で決まり、貸借対照表の右側の負債と株主資本はまったく関係しないことになります。
◆貸借対照表の右
次に貸借対照表の右側はどんな意味を持っているのでしょうか。貸借対照表の右側は“資金の調達方法”を表示しており、次の2つの区分からできています。
他人資本・・・有利子負債など銀行等の債権者からの資金調達⇒ ⦅負債⦆
株主資本・・・株主からの資金調達 ⇒ ⦅出資⦆
そして資金提供者はそのリスクに応じたリターンを得ることができます。⦅負債⦆と⦅出資⦆ではそのリスクが違いますから、それに応じてリターンも変わってきます。⦅負債⦆は契約により、金利を含めた返済金額と返済時期が確定しています。しかし、この企業が爆発的に儲かっても、契約で決められた以上のものを返済する必要はありません。つまり、リスクとリターンが限定されたローリスク・ローリターンの投資といえます。
一方、⦅出資⦆=株主資本は資金提供に対する返済は確定していませんので、もし会社が爆発的に儲かれば、大きな利益を手にすることもできますが、会社が不振になれば元本がなくなってしまうリスクがあるのです。つまり⦅出資⦆=株主資本に対する資金提供はハイリスク・ハイリターンの投資といえます。
◆企業価値と株主価値のちがい
上記記載より・・・
資産の運用によってもたらされた企業価値は(貸借対照表の左)、資金の源泉である負債か出資(貸借対象表の右)のどちらかに帰属する事ということになります。
*負債に帰属する金額は契約で確定していますから、
企業価値 - 負債 = 出資 株主価値となります。
* 企業価値は資産の使用状況によって常に変動していますから、⇒・・・ 変動分=株主価値の変動として表わされる。
ゆえに、企業価値が増加すれば、その恩恵は株主が享受し、株主価値が増加します。逆に、企業価値が下がれば、株主価値が減少します。このように、企業価値の増減は株主価値に直結することから、株主は企業価値を向上させることを経営者に要求するのです。
以上よりこの2つの言葉は違うものを指していたのですね。 一部記事提供:税務研究会(税研情報センター)
*** あとづけ ***
さて、株にまつわる余談はたくさんあるのですがよく耳にする〝株価〟についてです。〝株価〟とは何でできているかご存知でしょうか。これは他の言葉で〝時価総額〟とか上述した〝企業価値〟に置き換えることができます。または将来に稼ぐ現金、いわゆるキャッシュフローを今の現在価値に割り引いた価格=〝理論価値〟なんですね。だいたいの投資家はこの〝理論株価〟をじっ~とみつめつつ・・実際の株価が理論株価より安ければ買い、高ければ売るということを行なっているようです。これで市場の受給バランスが作られ変動するのです。
そしてうまくいっている投資家達がおっしゃるには、理論株価を計算すると実際の株価推移と殆どずれが生じることがなく、みごとに把握でき、投資先企業の稼ぐ力を正確に把握できるとの事なのです。 すばらしいですね。
次に〝投機〟と〝投資〟の違いはなんでしょうか。
簡単には〝投機〟は確立に依存して賭けるということでギャンブルということです。一定の確率で勝ち、一定の確率で負ける・・・ようにできています。ギャンブルは俗に言うゼロサム理論の中にあります。しかし〝投資〟は企業の将来値上がる価値に対しての投資なので、1万円の株が4万円になれば、その株を所有している全員が3万円の利益を得るチャンスに恵まれるということになり負けという概念はないわけです。ですので〝投資〟はギャンブルであるという考えは違うようですね。例えばA社の評価が高くなれば、株価も高くなり、企業価値も上がり、右肩上がりのA社の株主全員が利益を得ることができます。そしてその実現益は当然GCP(国内総生産)にも計上されるのです。
・・・日本では、株式投資がギャンブルであるとの考えが根強くあるからでしょうか。
日本の相続税の株式の評価はとてもシビアです。亡くなった時点が評価の基準になるので、その後どんどん下がってしまっても10ヶ月後の納税額は高い評価のまま支払うことになります。この事については、最近日本証券業協会が税制改正要望を出しました!!株式にも、土地やマンション、生命保険のような減額評価が適用されると、相続対策としてもう少し株を購入する人も増えるのでしょうね。
★ おまけ:1株当り利益倍増が見込まれる米4社
米アルファベット、セルジーン、チャールズシュワプ、エレクトリックアーツ(EA社)の4社は2020年までに、1株当り利益が倍増すると見られています。優れた成長力を持つ企業株価か総じて来年は20%以上の値上がりが期待できるそうですよ(日経ヴェリタスより)。EA社のゲームは大ヒット‼
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】 Webサイト | http://et-inc.jp
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