2016年12月15日木曜日

[217] プレミアムフライデー【国内政経】

プレミアムフライデーの実施に向け、官民連携の「プレミアムフライデー推進協議会」が設立されました。2016.12.12、第1回協議会が開催され、実施方針・統一ロゴマーク等が決定されました。なお、プレミアムフライデーとは以下の効果につなげていく取組みです。

個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光等)や、そのための時間の創出を促すことで、
(1) 充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる
(2) 地域等のコミュニティ機能強化や一体感の醸成につながる
(3)(単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる

詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください(http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161212001/20161212001.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年12月8日木曜日

[215] 老後のライフマネー【国内税務】

◆老後破産を防ぐ
 最近、メデイアや雑誌等で「老後不安」「老後破産」と言う事を聞くことがありますが、高齢化社会を長生きリスクと考えるならば、対策をしておくことは必要ですね。日本人の平均寿命は男性「80.50歳」女性「86.83歳」となっています。男女平均で83.7歳は世界首位です。人生80年の老後に備えた必要なお金をどう手当てしてゆくかを考えることは重要ですが、老後の生活を考える際には「どう生きたいか」と言う事もあると思います。ライフプランとも言いますが自分の描いたライフデザインを実現する為の準備として考える事が大事でしょう。


◆生活費を考える
 総務省の家計調査によると夫65歳以上、妻60歳以上の高齢者無職世帯の実収入は平均20万7,347円、可処分所得は17万7,925円となっています。
消費支出は23万9485円で毎月6万1560円不足となり不足を補う為に貯蓄を取り崩してゆくことになります。この調査は平均ですので実際は住む場所や生活ぶり、自宅か賃貸か等で変わります。 一般的には60歳以降の夫婦の必要経費は次のように計算します。
①夫婦の生活・・・1ヶ月の生活費×12ヶ月×60歳時の夫の平均余命
②夫死亡後の妻の生活・・・1ヶ月の生活費×0.7×12ヶ月×夫死亡時の妻の平均余命
 
現在の公的年金の平均受給額は約月22万円(夫40年厚生年金加入、妻専業主婦)で生涯5千万円から6千万円が年金から賄われる想定です。現実はこのような条件の方ばかりではありません。家計の収支を検討し、まずは支出の把握から始め自分の必要生活費を計算し対策する必要があります。また、毎月の生活費以外にも突然の入院や介護、不慮の事態に備えた費用として半年分位のキャッシュが必要でしょう。

◆財形年金制度等の利用
 財形年金制度は勤務している事業主を通じて給与天引きで貯蓄をしてゆく制度です。貯蓄型では元利合計550万円まで、保険型では払い込み保険料385万円まで利息も合わせて非課税です。自前で行う場合、掛け金が所得控除となる確定拠出年金個人型も注目されてきています。どちらも将来の公的年金の補てんとして研究の余地はありますね。

                                                  
※上記の記載内容は、平成28年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年12月5日月曜日

[214] 事業承継ガイドライン【経営】

中小企業庁は、中小企業経営者の高齢化の進展等を踏まえ、円滑な事業承継の促進を通じた中小企業の事業活性化を図るため、事業承継に向けた早期・計画的な準備の重要性や課題への対応策、事業承継支援体制の強化の方向性等について取りまとめた「事業承継ガイドライン」を策定しました。

本ガイドラインの主な内容は、以下のとおりです。
(1)事業承継に向けた早期・計画的な取組の重要性(事業承継診断の導入)
(2)事業承継に向けた5つのステップの提示
(3)地域における事業承継を支援する体制の強化

中小企業経営者や、経営者の身近な存在として活動されている団体や金融機関等の支援機関の皆様に、本ガイドラインを活用し、価値ある事業をしっかりと次世代へ承継していただくことが期待されています。
詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください(http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161205002/20161205002.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年11月28日月曜日

[212] 個人型DCの愛称が「iDeCo」に【国内政経】

全国銀行協会や生命保険協会など金融関連団体で組織する「確定拠出年金普及・推進協議会」は、個人型の確定拠出年金(DC)の愛称を「iDeCo(イデコ)」に決定したと発表しました。金融機関はすでにこの愛称を使って自社商品のPRを始めています。「iDeCo」は個人型確定拠出年金の英語表記の単語の一部で構成されたもので、4,351件の応募のなかから30代女性の案が選ばれました。「i」には「私」という意味が込められていて、協議会は「自分で運用する年金の特徴をとらえている」と評価しました。

確定拠出年金は、毎月決まった額を拠出し、その積立金を基に本人が資産運用し、損益が給付額に反映される年金制度。将来の給付額が決まっている確定給付年金と異なり、毎月どれだけ支払うかは定められている代わりに、将来もらえる額は確定しませんが、投資時や年受取時には税優遇が受けられます。
個人で入る「個人型」と会社ごとに入る「企業型」があり、来年以降、これまで自営業者や企業年金のない会社員が対象だった個人型につき、主婦(加入対象約400万人)や公務員(同900万人)、すでに企業年金に入っている会社員(同1,300万人)が加わることになります。
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年11月24日木曜日

[211] 不適切な手続による貸付【国内不祥事】

2016.11.22に商工中金の危機対応業務において、不適切な手続による貸付が判明し、経済産業省及び財務省は、商工中金に対して、本事案の徹底調査と原因の究明、再発防止策の策定等を指示しています。
 


【内容】
商工中金鹿児島支店において、一部の職員が、顧客から受領した試算表等を自ら書き換えて危機対応貸付を行っていた事実が判明し、危機対応業務の要件に合致しない貸付が行われた可能性があります。

詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください(http://www.meti.go.jp/press/2016/11/20161122003/20161122003.html)。

【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年11月17日木曜日

[209] のれん償却方法の違いから見る企業文化【国際会計】

現在の日本の会計基準では、M&Aで生じる資産側に発生するのれんについて、20年以内で定期的に償却をすることを定めています。一方、IFRS(国際会計基準)や米国会計基準では定期償却はせず、のれんはそのままの金額で資産に残し、買収した事業や企業の収益性が落ちたときに、減損として費用処理するようにしています。したがってこの場合、収益性が落ちない限り、のれんの償却は発生しません。資産にあるのれんを償却すれば、損益計算書に費用が発生するのに、償却しなければ費用が出ないので、日本の会計基準はM&Aでは不利になると言われています。

のれんを償却しようがしまいが、会計上の処理方法が違うというだけであり、キャッシュフローには関係なく、企業行動に影響することはありません。M&Aをするかしないかは、企業なり事業を手に入れるために投下したキャッシュフローと、獲得した企業や事業が将来獲得するであろうキャッシュフローを比較して判断することですから、会計基準の変更自体は企業に影響を与えないと考えるべきです。ただ、会計基準が違えば表示される利益が違ってきますから、株価には影響を与えることはあるかもしれません
先ほども述べたように、のれんの償却、非償却は本質的にM&Aの判断に影響を与えるものではありません。ただ、のれんを償却するかしないかという会計基準の違いは、日本と欧米の企業文化の相違を示唆しているように考えます。
のれんについて、日本基準は定期償却ですから、買収対象事業や企業の損益状況とは無関係に償却が発生します。また、のれんの償却費は企業全体の利益から控除されます。こうした会計基準の背景には、事業や企業も買収されてしまえば、もはや親会社と一体になったという認識があります。買収の象徴として発生したのれんは買収対象企業が親会社と一体化するにつれ、徐々に小さくなり、何年か経てば消えてなくなると考えます。同じ企業グループになったのだから、いつまでも買収した側と買収された側を区分して、個別の事業の採算を云々するのではなく、企業グループ全体で前向きに進もうという思想には合致した会計処理だといえます。ただ、この場合、個別の責任追及は甘くなる傾向があります。
これに対し、IFRSや米国会計基準ではのれんの定期償却はせず、買収した事業や企業の業績が著しく悪化したときに、減損をします。そこには、同じ企業グループに入ったといっても、ある事業の損失を他の事業でカバーする全体責任ではなく、あくまで個別事業体として、損失が発生した責任はその事業にとってもらうという発想があります。これは事業ごとの責任追及には適した思想ですが、企業グループ一体で利益を追求するという観点とはやや違います。
どちらの思想にも一長一短があり、どちらがいいとか、悪いとかいうことではないのですが、買収が終わってしまえば、買収した方もされた方も一体だという集団主義的考え方の方が日本人のメンタリティーにはあっているような感じもあります。
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年11月14日月曜日

[208] 財務省(税関)「関税法基本通達の一部改正について」を公表【国内税務】

2016.11.1、税関ホームページで「関税法基本通達の一部改正について(平成28年11月1日財関第1302号)」が公表されました。

詳細は、税関のWebサイトをご覧ください(http://www.customs.go.jp/kaisei/tsutatsu/H28tsutatsu/H28tsutatsu1302/index.htm)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年11月7日月曜日

[206] 相続税の20%加算と養子【国内税務】

相続税で特に多く指摘される項目
◆指摘が多いのは2割加算
 相続税の基礎控除引き下げにより、課税対象者が大幅に増加しました。国税庁では申告書の内容に誤りがあると疑われる場合に、納税者に文書を送付し申告書の見直しを促していますが特に指摘の多いのが「相続税額の2割加算」のようです。


◆相続税額の2割加算
「相続税額の2割加算」とは、相続又は遺贈により財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合に、相続税額を2割加算するとするものです。一親等の血族とは父母や子を指すので、それ以外のいわゆる被相続人の兄弟姉妹が相続等で財産を取得した場合や、血縁関係がない者などに遺贈があった場合には割増し加算があるのです。

 また、孫も2割加算の対象ですが、被相続人の子が相続開始以前に死亡するなどし、代襲相続人となっている場合には2割加算は不要となります。
◆一親等の法定血族でも孫養子は
  一親等の血族には「養子」も含まれますが、例外があり、被相続人の直系卑属で被相続人の養子になっている者、つまり“孫養子”は2割加算対象外に含まれません(代襲相続人は除く)。「養子」に2割加算はないが、“孫養子”に限っては2割加算があるというこの取扱いのところに間違いが多いようです。

◆孫養子類似の一親等の法定血族だが
  国税庁の質疑応答事例に「被相続人の直系卑属でない者が養子となっている場合」の事例があり、ここでは「子の配偶者」が養子となっている場合に2割加算がないことを示しています。すなわち、“孫養子”以外の「養子」は一親等の血族に含まれるため、例えば、「孫の配偶者」や「養子の養子縁組前の子(養子 
の連れ子)」が養子となっていても2割加算は不要です

◆代襲相続でも2割加算される例
  国税庁の質疑応答事例には、代襲相続した孫やひ孫で、遺贈があるので代襲相続人の地位を放棄した場合、この相続放棄者には2割加算除外の適用がない、という珍事例も紹介しています。(代襲相続の規定では放棄をなかったものとするとしていない。)

※上記の記載内容は、平成28年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年11月3日木曜日

[205] 経済産業省「生産性向上設備投資促進税制の概要資料(更新)」等を公表【国内税務】

本税制措置は、質の高い設備の投資について、特別償却50%又は最大4%の税額控除が適用出来る税制措置です。


具体的には質の高い設備投資の促進によって事業者の生産性向上を図り、もって日本経済の発展を図るため、 「先端設備」や「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」を導入する際の税制措置を新設しています。対象設備は、平成26年1月20日から平成29年3月31日の間に取得等をし、かつ、事業の用に供した設備です。A類型 とB類型の2つの確認等の方法があり、どちらかの確認等を受けた上で取得価額要件等を満たした場合に税制措置が受けられます。
詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください(http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/seisanseikojo.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年10月27日木曜日

[203] 印紙を忘れてペナルテイが3,000万円【国内税務】

兵庫県警の警察官や職員らを組合員とする某金融機関が、課税文書への収入印紙への貼り忘れで、約2,900万円分の印紙税を納めていなかったことが分かりました。その後、印紙税の規定に従い過怠税約3,100万円を納めたものの、もし気付くのがさらに遅れていれば、税負担は9,000万円近くになっていた可能性があるようでした。

印紙税は、不動産契約書や手形、領収書などの法で定められた取引文書について、記載金額に応じた額を納めなければならないもの。印紙税額は5,000万円を超える不動産契約書であれば1通60,000円を超えるため、額の大きい取引を多くこなす企業や団体であれば、印紙税の負担は巨額なものとなります。
兵庫県警信組が、他の信用組合で同様の納付漏れがあったため内部調査をして、疑わしいものがあったので税務署に相談したところ、納付漏れを指摘されたとのことです。
信組が納付していなかったのは、昨年11月までの3年間に扱った住宅ローンの申込書にかかる税金で、印紙税の規定上、住宅ローン申込書はおおむね非課税ですが、同信組の作成した書類は名称が「申込書」であっても実際には契約成立を意味する文言が盛り込まれていたため、課税文書に当たる実質上の契約書と認定されました。
印紙税の納付漏れにかかる過怠税は、納付していなかった税額の1.1倍です。そのため信組は、不納付2,900万円の1.1倍に当たる約3,100万円を納めました。1.1倍というのは、あくまで調査を受ける前に自発的に納付漏れに気付いて納めたときの話で、税務署などの調査によって発覚したケースだと過怠税はなんと当初の税額の3倍になります。もし課税当局の指摘によって初めて気付いていた場合、同信組が納めなければならない税額は2,900万円の3倍に当たる8,700万円となっていたことになります。
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年10月24日月曜日

[202] 「割賦販売法の一部を改正する法律案」が閣議決定【法務】

2016.10.18に「割賦販売法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、臨時国会に提出されます。

本法律案は、近年、クレジットカード番号等の漏洩事件や不正使用被害が増加するとともに、消費者トラブルが増加している現状を踏まえ、安全・安心なクレジットカードの利用環境の整備に向けて、所要の措置を講じるものです。

クレジットカード情報の適切な管理等:販売業者に対し、クレジットカード番号等の適切な管理及び不正使用の防止(決済端末のIC対応化等)の義務付け。         


販売業者に対する管理強化:クレジットカード番号等の取扱いを認める契約を締結する事業者に登録制度を設け、その契約を締結した販売業者に対する調査及び調査結果に基づいた必要な措置を行うこと等の義務付け。

FinTechの更なる参入を見据えた環境整備:

特定商取引法の改正に対応するための措置:特商法の改正により、不当な勧誘があった場合の消費者の取消権等が拡充されたことに合わせ、こうした販売契約と並行して締結された分割払い等の契約について、割賦販売法においても同様の措置。

詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください(http://www.meti.go.jp/press/2016/10/20161018001/20161018001.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年10月17日月曜日

[200] 個人型DCの改正【国内税務】

2017年から個人型確定拠出年金(DC)の制度が変わります。節税効果を売り物に、個人の投資行動を促す狙いですが、新しく制度の対象に加わる専業主婦は掛け金に対する所得控除が認められていないなど注意すべき点があります。自民党税制調査会が、専業主婦世帯の税負担を軽減する「配偶者控除」の見直しを検討するなど、今後税制が大きく変わる可能性があるだけに、対象者には慎重な判断が求められそうです。

個人型DCは、
① 掛け金の全額所得控除、
② 運用益の非課税、
③ 給付金の税制優遇措置――の3つの税制優遇措置が最大のメリット。

一方、積立金の運用は加入者自身の責任で行うこと、原則60歳まで引き出せないこと、口座手数料がかかることなど注意点もあります。従来は自営業者や企業年金のない会社員が対象でしたが、今回の制度改正で主婦や公務員、すでに企業年金に加入済みの会社員も対象に加わります。
このうち、所得がない専業主婦では掛け金に対する所得控除が認められていません。控除の対象はあくまで加入者本人の掛け金のみで、社会保険料のように配偶者など本人以外の負担を含めることができないためです。課税所得が500万円ある対象者が毎月23,000円を拠出した場合、節税効果は所得税と住民税の合計で年82,800円。30年間で考えると、積立額828万円に対して248万4千円もの効果がある計算ですが、こうしたサラリーマンなど向けの説明を専業主婦層がそのまま受け止めないよう注意が必要と言えます。
運用益については非課税ですが、利回りや開始時期によって左右される面もあります。3号被保険者である専業主婦には「保険料を支払わなくても基礎年金が受け取れるのは不公平」との議論があり、配偶者控除の見直しが進む可能性もあるため、慎重な検討が欠かせません。
                                                           
出典:エヌピー通信

※上記の記載内容は、平成28年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年10月13日木曜日

[199] 「監査役の会計監査と監査役スタッフの役割」【経営】

日本監査役協会は、2016.9.29に「関西支部監査役スタッフ研究会「監査役の会計監査と監査役スタッフの役割~会計不祥事の防止に向けた実効性のある監査とは~」」を公表しています。65ページに及ぶ大作で、主な内容は、以下のとおりです。
 


  第1章 監査役監査の役割
  第2章 会計監査及び財務報告内部統制
    第1節 会計監査人が実施する会計監査
    第2節 監査役が実施する会計監査
    第3節 財務報告内部統制
  第3章 近年発生した会計不祥事
    第1節 会計不祥事の類型化と傾向
    第2節 会計不祥事の事例
    第3節 子会社に係る会計不祥事例から
  第4章 会計監査における監査役及び監査役スタッフの役割
    第1節 監査役の会計監査の実態
    第2節 監査役自らが実施すべき会計監査
    第3節 会計監査人との連携
    第4節 会計監査人の評価
    第5節 内部監査部門との連


詳細は、日本監査役協会のWebサイトをご覧ください(http://www.kansa.or.jp/news/briefing/post-370.html)。


【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年10月6日木曜日

[197] 住宅の貸付けの消費税課税の例外【国内税務】

住宅の貸付けは消費税非課税となることはご存じのとおりなのですが、次のような一部のものは課税されたり、されなかったりすることになりますので注意が必要です。

1.家具付き住宅の場合
家具、照明器具、エアコンなどの住宅付属設備を含めた全体を貸付けの対価として賃貸借契約を締結している場合は、家賃全体を非課税として取り扱われます。

2.1ヶ月未満の住宅の貸付けの場合
住宅の貸付けであっても、ウイークリーマンションなどのように1ヶ月未満の貸付けや、民泊等は旅館業に係る貸付けに該当するため非課税になりません。

3.駐車場付きの住宅の場合
戸建住宅のように住宅の敷地の一部にある駐車スペースは、それも含めた全体が住宅の貸付けとして非課税の扱いとなります。しかし、賃貸用マンションのように必ずしも駐車スペースが住宅と一体でなく独立した賃貸借の目的の施設となっており、駐車料金として住宅部分とは別に定められている場合は、その駐車料金は課税扱いとなります。

4.賃貸借契約の際に発生する付帯収入
住宅の賃貸借契約の際に賃貸人が収受する礼金、保証金の償却や更新料のように賃借人に返還しなくてよい部分は、家賃と同様に非課税として扱います。敷金など返還を必要とする部分はもともと資産の譲渡に該当しませんので、消費税上課税の対象になりません。

5.賃貸中の住宅を売却した場合
売却代金のうち、土地の譲渡対価については非課税ですが、建物部分の譲渡対価に対しては課税の対象となります。住宅の譲渡代金は土地と建物との一体金額で取引されることが通常ですので、その場合はその譲渡代金を土地と建物に合理的に按分する必要があります。

6.共益費や管理費の取扱い
外灯の電気料、清掃費用や庭木の管理費用などのように、共同住宅でその利用者が共通に使用する施設の応分負担として徴収する共益費や管理費は住宅の貸付けの対価の一部として非課税扱いとなります。

※上記の記載内容は、平成28年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年10月3日月曜日

[196] 現在開発中の会計基準に関する今後の計画【国内会計】

企業会計基準委員会は、2016.9.28に日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準及び修正国際基準の開発に関する予見可能性を高めるため、同委員会における検討状況及び今後の計画をまとめ公表しています。今後の動向に留意が必要です。

1. 開発中の会計基準
 収益認識に関する会計基準
2. 開発中の指針(実務上の取扱いを含む)
 税効果会計に関する指針
 リスク分担型企業年金に係る会計処理に関する指針
 一括取得型による自社株式取得取引に係る会計処理に関する指針
 権利確定条件付きで従業員等に有償で発行される新株予約権の企業における会計処 理に関する指針
 公共施設等運営権に係る会計処理に関する指針
 実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の
 取扱い」の見直し
3. 今後、開発予定の会計基準又は指針(実務上の取扱いを含む。)
 「企業結合に関する会計基準」に係る条件付取得対価の取扱い
 子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係
 マイナス金利に関連する会計上の論点への対応

詳細は、企業会計基準委員会のWebサイトをご覧ください(https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/plan/plan_20160928.pdf)。

【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年9月26日月曜日

[194] 非上場企業の決算書を有効にするには【国内会計】

決算書は財務内容を正確に表示することにより、企業の現状の課題を正しく認識し、その課題解決に踏み出すスプリングボードの役割を果たすといわれています。その一例として、上場企業では退職給付会計がありますが、退職給付に関する会計処理は、上場企業と非上場企業で相違があります。そのことは年金基金の処理の違いにも結びついています。

◆上場企業は時価会計?
上場企業では2000年に退職給付会計の改正が行われました。それまでの年金会計は給付を確定している厚生年金基金であっても、原則的に毎年の掛け金を費用処理するだけで、約束した給付と積み立てた資産との差額である積立不足は、貸借対照表には表示されていませんでした。
しかし、改正された退職給付会計では、確定給付年金の積立不足は企業の債務ですから、貸借対照表の負債の部に退職給付引当金としてオンバランスすることが求められたのです。いわば、負債の時価会計といえます。当然、その分自己資本は減少します。その積立不足額は予想していた以上に巨額で、自己資本のほとんどを打ち消してしまうような会社すらありました。
その後も運用環境の好転は望み薄で、確定給付型の厚生年金基金を抱え続ける限り、年金資産の運用成績は悪化することが予想されました。そうなると負債の退職給付引当金は増加し、自己資本を毀損させ続けます。ただでさえ厳しい経営環境の中で、そうした危険性のある制度を抱え続けることは株主が許さず、多くの上場企業は、やむなく積立不足の補填という大きな犠牲を甘受した上で、厚生年金基金の廃止や、401k等の確定拠出型年金への変更に踏み切ったのです。

◆非上場企業は取得原価主義?
しかし、非上場企業では上場企業が採用している退職給付会計そのものが適用されていないので、厚生年金基金の積立不足については完全にブラックボックスになっており、決算書からは全くうかがい知ることはできません。そのことが非上場企業の厚生年金基金の解決の遅れにつながっているのが現状です。
基金の抱える深刻な課題の存在は認識できていても、その課題が自身の決算書に表示されず、しかも課題解決には積立不足の解消というかなり強烈な痛みを伴うものであり、処理を先延ばししたくなるのが内心だったのでしょう。そして、そのうちに相場環境が改善されるかもしれない、などといった期待を抱き続けた結果、事態はますます悪化し、問題は放置されてしまいがちになります。

◆決算書を側面から検討してみる
いずれの経営者も自分の会社の決算書に積立不足額が計上され、自己資本を減少させていれば、何とか解決しなければならないと考えます。非上場企業でも、上場企業と同様の退職給付に関する時価会計が導入されれば、事態が深刻化する前に何らかの処置を施すことができるかもしれません。悪いことは時が経つほど状況が悪化して処理が難しくなります。
決算書に企業の現状の姿を正しく映し出す時価会計は、企業の課題処理を促す有用なツールだと考えることができます。非上場企業は、主として税務基準で決算処理を行うため、どのように時価会計を導入していくのかは難しい問題ですが、経営者は将来の起こり得る経営課題をとらえ、顧問の専門家から積極的にアドバイスを受けたりしながらリスク管理を前倒しで取り組むべき時期がきているといえます。

出典:税務研究会より 
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年9月22日木曜日

[193] VISA免除国・地域(短期滞在)【規制】

2014.12現在、日本において67の国・地域に対してビザ免除措置を実施しています。これらの国・地域の人、商用、会議、観光、親族・知人訪問等を目的とする場合には、入国に際してVISAを取得する必要はありません。ただし、日本で報酬を受ける活動に従事する場合又はそれぞれ国毎に決められた短期滞在の期間を超えて滞在する場合にはVISAを取得する必要があります。なお、上陸許可の際に付与される在留期間は、インドネシア、タイ及びブルネイは15日、その他の国・地域については90日となっています。

インドネシア、アイスランド、シンガポール、アイルランド、タイ、アンドラ、マレーシア、イタリア、ブルネイ、エストニア、韓国、オーストリア、台湾、オランダ、香港、キプロス、マカオ、ギリシャ、クロアチア、米国、サンマリノ、カナダ、スイス、スウェーデン、アルゼンチン、スペイン、ウルグアイ、スロバキア、エルサルバドル、スロベニア、グアテマラ、セルビア、コスタリカ、チェコ、スリナム、デンマーク、チリ、ドイツ、ドミニカ共和国、ノルウェー、バハマ、ハンガリー、バルバドス、フィンランド、ホンジュラス、フランス、メキシコ、ブルガリア、ベルギー、オーストラリア、ポーランド、ニュージーランド、ポルトガル、マケドニア旧ユーゴスラビア、イスラエル、マルタ、トルコ、モナコ、アフリカ、ラトビア、チュニジア、リトアニア、モーリシャス、リヒテンシュタイン、レソト、ルーマニア、ルクセンブルク、英国

【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】
Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年9月15日木曜日

[191] 「源泉徴収免除制度」の対象となる国内源泉所得の改正【国内税務】

◆概要
2014年度税制改正にて、源泉徴収免除制度の対象となる特定の国内源泉所得とは「対象国内源泉所得※」とする改正が行われました。
(※・・・外国法人又は非居住者の恒久的施設に帰せられる国内源泉所得)


1.外国法人の源泉徴収免除制度の対象となる国内源泉所得は、外国法人が2016年4月1日以後に支払を受けるべきものから、
2.非居住者の源泉徴収免除制度の対象となるものは、非居住者が2017年1月1日以後に支払を受けるべきものから、それぞれ適用されます。

これに伴い、従来は源泉徴収免除制度の対象となっておりました「A.国外の本店支店等に帰せられる特定の国内源泉所得」については、適用後は“源泉徴収免除制度の対象となる対象国内源泉所得に該当しない!” こととなります。
◆影響は
2014年改正法によって、改正後に源泉徴収免除制度の対象とならない「A.」については、原則として源泉徴収が行われることになりますので、該当されます方は、ご注意ください。

◆租税条約による免除
ただし、外国法人又は非居住者の居住地国と我が国との間で租税条約が締結されている場合には、その外国法人又は非居住者が支払を受ける所得に対する課税が軽減又は免除される場合があります。

この課税の軽減又は免除を受けようとする場合は、所定事項を記載した届出書をその国内源泉所得の源泉徴収義務者を経由して税務署に提出する必要があります。
◆継続による免除
なお、すでに交付を受けている「源泉徴収の免除証明書」は、新たに、所得税法の規定に基づく「源泉徴収の免除証明書」の交付を受けるまでの間は、有効期限内であれば引き続き使用できます。交付要件に該当しないこととなった場合には、遅滞なく、納税地の所轄税務署長に「外国法人又は非居住者が証明書の交付要件に該当しなくなったことの届出書」を提出するとともに、その証明書の提示先にその旨を通知する必要がありますので、該当されます方は、あわせてご注意ください

※上記の記載内容は、平成28年9月15日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年9月12日月曜日

[190] 介護分野に関する調査報告書【国内政経】

2016.9.5に公正取引委員会は、介護分野の現状について調査・検討を行い、競争政策上の考え方を整理し、調査報告書を公表しています。公正取引委員会としては、介護分野について検討を行うに当たっては、[1]多様な事業者の新規参入が可能となる環境、[2]事業者が公平な条件の下で競争できる環境、[3]事業者の創意工夫が発揮され得る環境、[4]利用者の選択が適切に行われ得る環境が整っているかといった点が重要であると考えているようです。なお、調査報告書の要旨は、以下のとおりとなっています。

<1> 提供主体等による規制の緩和:特別養護老人ホームの開設主体に係る参入規制については、多様な事業者の新規参入を図るためにこれを撤廃し、医療法人、株式会社等が社会福祉法人と対等の立場で参入できるようにすることが望ましいとし、多様な事業者の新規参入を図る観点から、自治体が設置する特別養護老人ホームにおいて、株式会社等を指定管理者とするように、指定管理者制度を積極的に活用していくべきであるとしています。
<2> 需給調整を目的とした規制の緩和:自治体は、介護保険事業計画等の本来の目的に立ち返り、総量規制を適切に運用すべきであり、あわせて、選定基準を明確化し、客観的な指標に基づいて選定を行うなど、恣意性の排除を図るとともに選定の透明性を高めるべきであるとしています。
<3> 補助制度・税制等の見直し:自治体は、助成・補助に当たっては経営主体による差異を設けないように求める厚生労働省の通知の趣旨を踏まえ、独自に行う補助制度について、法人形態を問わず公平な補助制度とすべきであるとしています。なお、特別養護老人ホームに対する補助は、例えば、低所得者層の自己負担の軽減等といった公益的な役割を果たすために必要な範囲で行われるべきであり、それを超える過剰な補助は好ましく、社福軽減事業についても、導入していない自治体においては、法人形態を問わずに利用できるようにすることが望ましいとしています。また、社会福祉法人に対する税制上の優遇措置等については、基本的枠組みは維持するとしても、株式会社等が提供可能な介護サービスと同一の介護サービスを提供する場合には、その部分について社会福祉法人に対する税制上の優遇措置は除外する方向で検討することが望ましいとしています。
<4> 介護サービス・価格の弾力化:介護サービス事業者間の競争を促進し、介護サービスの効率性の向上や利用者の多様なニーズに応えるためには、混合介護の弾力化を認めることにより、事業者の創意工夫を促し、サービスの多様化を図ることが望ましいとしています。介護付き有料老人ホームの体験入居費について、割引提供を行おうとすると、一部の自治体から値引き提供を禁止する指導が行われるなど、事業者の価格の弾力的な運用を妨げる指導が行われているといった指摘があり、このように、自治体によって制度の解釈や運用が異なると、事業者が十分に創意工夫を発揮できなくなるため、国は、自治体により事業者の創意工夫を妨げるような運用が行われることがないよう、制度の解釈を明確化し、事業者の予見可能性や透明性を高めるべきであるとしています。
<5> 情報公開の促進:事業者には、利用者が入手しやすい方法により、更に積極的な情報公開を行うことを期待したい。国は、介護サービス情報公表制度の抜本的な見直しを含めて、その在り方について検討すべきであるとしています。
<6> 第三者評価の活用:自治体においては、第三者評価の対象となるサービスをできるだけ拡大し、事業者が第三者評価を受審できる体制を整えるとともに、受審を促進するための積極的な施策を講じるべきであるとし、事業者においては、第三者評価の必要性や意義を十分に認識し、積極的な受審や評価結果の公表に努めるべきであるとしています。

詳細は、公正取引委員会のWebサイトをご覧ください(http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/sep/160905_1.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年9月8日木曜日

[189] 労働時間削減で人件費削減、そのうえ業績アップ?【経営】

こんにちは。社会保険労務士のシオンシーです。
昨年度から厚生労働省が「過重労働防止(残業時間削減)」をテーマにしたセミナーを全国で開催しています。
私は、この手のセミナーの講師を年に何回かさせていただくことがあります。昨年に、このセミナーも2回ほど東京近郊の会場でやらせていただきました。
会場によって、50名から100名くらいの方(社長様、役員様、人事系の担当者様)がいらっしゃいます。


厚生労働省は、今年度のセミナーは「過重労働防止(残業時間削減)」に加えて、それが「業績がアップ」に繋がることをテーマとしました。注目は、やはり労働時間を減らして・・・・・「業績アップ!」「そんなことあるのかよー。」という声も聞こえてきそうですが、セミナーでご紹介する事例はヒント盛りだくさんです。
 ・役員様の覚悟と実践
 ・従業員を主としたプロジェクト化
 ・削減した経費の活かし方         など

セミナー自体は基本的な内容と成功事例がメインとなります。専門家として日頃からいろいろな事例に触れていますが、このセミナーで出てくる事例もかなり参考になります。
私は、今回も講師の依頼をいただきましたので、引き続きやらせていただいています。手前味噌ですが、今年度は、昨年度の受講生のアンケートで高評価だった講師を選んでいる、らしいです。私は、昨年より多い会場(全国60会場で開催されるうち、東北から関東甲信越エリアの10会場)を担当させていただいておりますので、参加される場合にはお会いできるかもしれませんね。
でも、自分のスタイルでやっているだけなので講師としての、良いところ悪いところは、自分でも正直分かりません。セミナー講師とは、合う合わないもありますので、期待しないで参加がよいなあ、と思います。
セミナーは無料ですので、お時間ある方はヒントをひとつだけ見つけるつもりで、お近くの会場にお申込みされてはいかがでしょうか。

〈参考:過重労働解消セミナー〉http://partner.lec-jp.com/ti/overwork/

【執筆者:シオンシー/社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーAFP】

2016年9月5日月曜日

[188] 「中小企業等経営強化法」が施行されました【法務】

◆中小企業等の生産性向上の為の法律です!
経営力強化のために適切な計画をする中小企業・小規模事業者等を政府が積極的に支援する法律が施行されました。人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や、設備投資等から、生産性を向上させる計画を作成することと認定された事業者は税務上等、様々な支援措置を受けることができます。


◆固定資産税(償却資産税)が半分に!
中小企業者等が機械装置(新品に限る)を導入する場合で要件を満たすときは、一定の手続きのもとに償却資産税が3年間1/2に軽減となる特例が設けられました。

[要件とは]
➣ 生産性を高める機械装置の取得が対象 
② 160万円以上、
②生産性1%向上、
③10年以内に販売開始

※生産性向上設備投資促進税制のA類型から最新モデルを除外しているため、10年以内のものであれば、古いモデルでも対象となります。
※中古機械は対象になりません

◆固定資産税の軽減措置を受ける場合の流れは次のようになります
①経営力向上計画策定時に設備を決定
    ↓設備メーカーを通じて工業会等による証明書の入手
②主務大臣に計画を申請
    ↓経営力向上設備等の種類を記載した計画申請書と証明書を提出
③主務大臣より認定される
    ↓計画認定書と計画申請書の写しが交付される
④償却資産税申告書に書類添付
    計画申請書、証明書の写しを添え償却資産税の申告時に提出

※年末までに認定が受けられない場合は減税の期間が2年となります。申請から認定までは最大30日程度要しますので、余裕を持った計画策定が必要となります。
◆その他金融支援
   固定資産税減税以外の支援措置として、
   ①商工中金による低利融資
   ②中小企業信用保険法の特例
   ③中小企業投資育成株式会社法の特例
       などがあり、購入に際して、円滑な資金調達ができるようになりました

※上記の記載内容は、平成28年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年9月1日木曜日

[187] 「ネガワット取引に関するガイドライン」の改定【国内政経】

2016.9.1に、経済産業省は「ネガワット取引に関するガイドライン」(2015.3月策定)を改定しています。2017年中に予定されているネガワット取引市場の創設により、今後、ネガワット取引が活発化していくことが期待されます。

本ガイドラインは、需要家が節電した電力量(ネガワット)に対し電力会社が対価を支払う「ネガワット取引」に関するガイドラインであり、ネガワット取引の普及に向け、ネガワットの量の評価方法など、取引の実務において重要となる事項について指針を示したものです。なお、今回の改定では、電力会社とネガワット事業者(ネガワットアグリゲーター)との間の取引における基本的なルールをガイドラインに追加する等の変更を行っています。

 <主な改定ポイント>
❏ ベースラインの設定方法:市場でのネガワット取引を想定して、ネガワットの量の評価の基準となるベースラインの設定方法が変更されています。
❏ ネガワット調整金:供給力調達のための費用を負担する小売事業者と、ネガワット取引に基づいてその供給力の一部を譲り受けるネガワット事業者との間での利益調整を行うため、ネガワット調整金についての規定が追加されています。

詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください(http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160901003/20160901003.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年8月29日月曜日

[186] 2016.10月から最低賃金が全国で大幅にアップ【規制】

こんにちは。今回からこのブログに参加します 社会保険労務士のシオンシーです。
まずは自己紹介から。出身は東京の西の方です。
趣味・・・と呼べるものはありませんが、スポーツやアウトドア、竹林整備(筍が楽しみ)、車の運転、旅行、温泉 大好きです。。。でも、実は最近ほとんど、できてません。
得意(特異?)技術は、車いすの二輪走行。障害を持つ家族がいて幼少期から家に車椅子があったので、遊んでいるうちにできるようになりました。
この少ない情報では私の人物像は浮かばないと思いますが、これからブログでどうぞよろしくお願いいたします。


さて、本題に入っていきます。
事業主(会社)が従業員へ払う給料(賃金)には最低賃金法という法律で、「¥円(時給換算)以上支払ってください」という最低基準が決められています。この最低賃金には、都道府県ごとに決められている「地域別最低賃金」と各都道府県の業種ごとで決められた「特定最低賃金」の2種類があります。
基本的には、特定最低賃金は地域別最低賃金より高く設定されますので、自分の会社が特定最低賃金に該当する場合には、その高い賃金を支払う必要がありますので、ご注意ください。ご自身の業界が特定最低賃金を採用しているのかが、気になる事業主様はこちらで確認できます(参考URL)
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-19.htm

そして、この最低賃金の見直しは、おおよそ毎年10月におこなわれます。
そしてそして、今の安部政権では、最低賃金(時間給換算)を全国の加重平均で1,000円にする、と明言しています。
したがいまして・・・・この10月も地域別最低賃金の大幅なアップが決定しているんです。

そのアップする額が、なんと!全国的に20円以上。東京都とその隣接するいくつかの県は、25円アップです。
会社の地域の最低賃金の確認はこちら(下のURLです)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

町中を歩いていて、最低賃金が切りかわる時期に良く見かけるのが、「従業員(パート)募集 時給¥円~」という表示が、最低賃金より安い金額で店頭などに貼られている募集チラシ。ほとんどの地域が10月1日から新最低賃金が適用ですので、事業主様、店長様は、従業員募集広告の賃金が最低賃金を下回らないように、ぜひご注意ください。
【執筆者:シオンシー/社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーAFP】

2016年8月25日木曜日

[185] 経営ビジョンの要件【国内政経】

◆経営ビジョンの要件とは
経営ビジョンが具備すべき要件はおおきく次の2点です。


1.自企業の社会の発展に貢献する事業領域・長期的目標と創造的な取り組み方が“経営者の思い”として単純明快で、分かりやすく表現されていること。
2.そのビジョンの実現は、同時にステークホルダーのメリットや社員の処遇向上につながる約束がされていること。
➣ すなわち、1と2によって、企業の業績向上と社員をはじめとするステークホルダーのメリットが同時に期待できる点が重要であり、2つの要件が欠落していたり、曖昧であると様々な問題が生じます。

◆経営ビョン不在・要件欠落の害
経営ビジョンが明示されていない企業、または、経営ビジョンはあっても、要件が満たされていない企業では、ビジョンの浸透が図りにくく次のような経営にとっての害が生じやすいと言えます。
①社員のバイタリティーが生まれない。
 ⅰ)現状維持志向、保守的な意識・行動が生まれやすい。
 ⅱ)消極的になり、高い目標に挑戦しようとしない。
 ⅲ)目標達成意欲が低く、障害を乗り越える力に欠ける。
 ⅳ)自らの座標軸を持たず、向上意欲に欠ける。

②株主・金融機関など、ステークホルダーの支持が得られにくい
 

◆経営者の留意点
経営ビジョンの策定と実現にあたって、次の点に留意することが重要です。
①前記の要件1を満たすとともに、要件2について、ビジョン実現に伴う企業とステークホルダーの利益配分の考え方を共有すること。
②業績向上と社員の活躍・貢献に報いて処遇レベルの向上を図ること。
③経営ビジョンによる経営者の意思表示に止まらず、長期経営計画・中期・年度経営計画で、それらを具現化し、人事処遇制度の改定などにより、具体的に実現努力を行なうこと。
などがあげられます。

 *****  
ポケモンGOはすごい人気でした!任天堂のビジョンが世界中を巻き込んで熱くなりました。あのファンタジックなビジュアルな画面の中に企業と個人の夢が凝縮されていると私は感じました。 さて、みなさまはいくつの夢あるポケモンをゲットできたでしょうか。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト |
http://et-inc.jp

2016年8月22日月曜日

[184] JETRO「世界貿易投資報告」公表【国際政経】

2016.8.9に日本貿易振興機構(JETRO)は、2016年版「ジェトロ世界貿易投資報告」-広域経済圏と日本企業の成長戦略-を公表しています。

ポイントは以下のとおりです。
1.世界貿易は12.7%減、6年ぶりのマイナス伸び率
2.新興・途上国で顕在化するスロー・トレードの動き
3.改善方向にある日本の貿易収支、2016年上半期は170億ドルの黒字に
4.日本の対外直接投資は5年連続で1,000億ドル超え
5.対日直接投資で一段と高まるアジアの存在感
6.世界のFTA発効件数は282件に、2015年はアジアのFTA網が拡充
7.貿易拡大効果が期待される拡大ITA、世界のITA貿易は3兆ドル
8.幅広い活用が期待されるTPP
9.波及効果をもたらすインバウンド市場
10.農林水産物・食品輸出額が過去最高の7,451億円

詳細は、JETROのWebサイトをご覧ください(https://www.jetro.go.jp/news/releases/2016/41ec591029d31aca.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年8月15日月曜日

[182] 国税庁より:移転価格税制に係る文書化制度を具体的に【国内税務】

2016年度税制改正により、租税特別措置法の改正とともに、移転価格税制に係る文書化制度が整備されました。国税庁では、移転価格税制に係る文書化制度の改正内容の中で、
・多国籍企業グループが作成する文書と
・国外関連取引を行った法人が作成する文書
の主要2項目をパンフレットで紹介しています。


◆多国籍企業グループが作成する文書については・・・、
・直前会計年度の連結総収入金額1,000億円以上の多国籍企業グループ(特定多国籍企業グループ)の構成会社である内国法人及び恒久的施設を有する外国法人は、
・最終会社等届出事項、国別報告事項及び事業概況報告事項を国税電子申告・納税システム(e-Tax)で国税当局に提供しなければならないこととされました。
・この改正は、2016.4.1以後に開始する最終会計年度に係る次の報告(届出)事項について適用されます。
 ※このパンフレットでは、提供義務及び提供義務者を条件フローで確認することができます。

具体的には、提供義務のフローにおいて、下記のすべてに該当する場合は提供義務があります。
①所属する企業集団は企業グループに該当
②所属する企業グループは多国籍企業グループに該当
③所属する多国籍企業グループは特定多国籍企業グループに該当
④自社は構成会社等に該当


◆国外関連取引を行った法人が作成する文書については・・・、
・国外関連取引の合計金額(前事業年度)が50億円以上又は無形資産取引の合計金額(前事業年度)が3億円以上である法人は、
・当該国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために
・必要と認められる書類を確定申告書の提出期限までに作成又は取得して保存しなければならないこととされました。

➣ 国外関連取引というのは、法人が国外関連者と行う資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引をいい、無形資産取引とは、特許権、実用新案権などの無形固定資産その他無形資産の譲渡又は貸付け等をいいます。
 
※この改正は、2017.4.1以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

※上記の記載内容は、平成28年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年8月11日木曜日

[181] 「監査役監査と監査役スタッフの業務(中間報告書)」を公表【経営】

2016.8.10に日本監査役協会における本部監査役スタッフ研究会は、「監査役監査と監査役スタッフの業務 (中間報告書)」を取纏め公表しています。

超大作である本報告書は、以下のことが取纏めてあります。是非ご一読を。
★期初業務
★期中業務
★期末業務
★監査役会の運営に関する事項
★非日常的活動に関する事項
★その他不定期活動事項

詳細は、日本監査役協会のWebサイトをご覧ください(http://www.kansa.or.jp/support/library/staff/post-161.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年8月4日木曜日

[179] 経済産業省:都道府県でエンジェル税制の申請を受付【国内税務】

経済産業省は、第五次地方分権一括法の施行に伴い、2016.4.1からエンジェル税制の申請・相談窓口を、各経済産業局から➣都道府県に変更となることを明らかにしました。エンジェル税制というのは、個人投資家によるベンチャー企業への投資を促進するために一定の要件を満たす出資について、出資をした個人に対する所得控除等の課税の特例税制をいいます。

具体的には、
1.ベンチャー投資を行った時点の優遇措置は・・・「対象企業への投資額-2,000万円」の所得控除の適用があり、直接投資以外にファンド経由でも適用できます。
・対象企業は設立3年未満で、
・ベンチャー投資に対する所得控除の上限は「所得金額×40%」と「1,000万円」のいずれか低い方となります。

2.キャピタル・ゲインに対しては・・・
・投資額をその年の株式売却時点まで繰り延べることができ、
・対象企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除できる措置があります。
・控除対象となる投資額の上限はなく、ベンチャー企業要件も設立10年未満と長いものの、
この措置は投資に対する所得控除との選択制で、
➣2つとも投資した年に受けられる所得税の優遇措置です。
 
3.一方、株式を売却して損失(キャピタル・ロス)が発生した場合には、損失を、その年の他の株式譲渡益と損益通算できるだけでなく、その年に損益通算しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と損益通算ができます。

4.対象企業が上場しないまま、破産、解散等をして株式の価値がなくなった場合にも、同様に翌年以降3年にわたって損失の繰越ができます。
➣対象企業へ投資した年にこの優遇措置を受けた場合には、その控除対象金額を取得価額から差し引いて売却損失を計算します。
➣また、20004.1から2008.4.30までに取得した株式に限り、投資した日の翌日から3年を超えて当該株式を保有した後に、売却したとき(対象企業の株式を上場後に売却した場合は上場から3年以内)は、譲渡益を1/2に圧縮して課税します。
 
★ 該当される株式をお持ちの方は、ご確認くださいね。


※上記の記載内容は、平成28年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年8月1日月曜日

[178] 「経営力向上計画」を初認定【経営】

2016.7.1に施行された「中小企業等経営強化法」に基づき、中小企業・小規模事業者・中堅企業等が策定する「経営力向上計画」が2016.7.29、初めて47件認定されたようです。今回、認定された47件の内訳は以下のとおりです。

• 建設業:1件
• 製造業:32件
• 情報通信業:7件
• 卸・小売業:2件
• 学術研究、専門・技術サービス業:4件
• サービス業(他に分類されないもの):1件

なお、同法に基づき中小企業・小規模事業者等は、人材育成、コスト管理のマネジメントの向上や設備投資等、事業者の経営力を向上させるための取組内容などを記載した事業計画(「経営力向上計画」)を作成し、。計画の認定を受けた事業者は、機械及び装置の固定資産税の軽減(資本金1億円以下の会社等を対象、3年間半減)や金融支援等(低利融資、債務保証等)の特例措置を受けることができるようになっています。また、当事務所にような「認定経営革新等支援機関」(主に商工会議所、商工会、中央会、金融機関、士業等)による計画策定の支援を受けられることも魅力の一つです。
詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください(http://www.meti.go.jp/press/2016/07/20160729002/20160729002-1.pdf)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年7月25日月曜日

[176] 消費税の軽減税率の対象事例集を公表【国内税務】

政府は消費税増税の延期を発表しましたが、その一方で、国税庁は、消費者や事業者が軽減税率の対象になるかどうかを判断するための参考となる事例集を公表しています。
事例集には、
・「飲食料品」の譲渡の範囲等、
・飲食料品の輸入取引、外食の範囲、
・「一体資産」の適用税率の判定、
・「新聞の譲渡」の範囲等、
・区分記載請求書等の記載方法、    
等が全75項目がQ&A形式で掲載されています。軽減税率制度では、客の自宅やホテルに出向いて調理や給仕を伴うケータリング・出張料理などのような相手方が指定した場所において行う調理等は外食に当たるため、軽減税率の対象から除外されています。ただし、「有料老人ホームその他の人が生活を営む場所として政令で定める施設」での飲食料品の提供は除かれ、外食の対象外として軽減税率が適用されています。


なお、有料老人ホームとは、入居者が60歳以上の者、介護保険法の要介護認定又は要支援認定を受けている60歳未満の者、前記のいずれかに該当する者と同居している配偶者のいずれかに該当する者をいいます。これらの施設には、有料老人ホームのほか、
①サービス付き高齢者向け住宅
②義務教育諸学校の施設
③夜間課程を置く高等学校の施設
④特別支援学校の幼稚部又は高等部の施設
⑤幼稚園の施設
⑥特別支援学校に設置される寄宿舎などもあります。

事例集では、外食の範囲の中で「有料老人ホームの飲食料品の提供」を掲載し、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅での食事は、原則、軽減税率の対象ですが、同一の日に同一の者に対して提供する食事の対価の額(税抜き)が1食当たり640円以下で、1日の合計の食事代が1,920円までは軽減税率の対象となるとし、小中学校や夜間高等学校などの食事も同様としています。
一方、学生食堂や社員食堂の食事は軽減税率の対象とはなりません。事例集によると、軽減税率の適用対象となる「学校給食」とは、その学校の児童や生徒の全てに対して学校給食として行う飲食料品の提供をいい、利用が選択できる学生食堂での食事はこれに該当しないとしているためです。また、学生食堂での飲食料品の提供は、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供に該当するので、軽減税率の適用対象とならないようです。

※上記の記載内容は、2016.7.1現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年7月21日木曜日

[175] 監査提言集の公表【国内不祥事】

2016.7.1に日本公認会計士協会は、「監査提言集」を公表しています。主に会計監査人にとっての注意喚起ポイントが取り纏められておりますが、受監側にとっても非常に有益な注意すべきポイントが網羅されております。

詳細は、日本公認会計士協会のWebサイト(http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/20160701db7.html)をご覧ください。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年7月14日木曜日

[173] 在宅勤務制度の就業方法がひろがりつつあります【国内政経】

昨今、在宅勤務を本格的に導入する企業が増えています。2016.8月、トヨタ自動車は、総合職社員を対象に在宅勤務制度をとり入れます。具体的には、週に1日、2時間だけ出社すれば、あとは自宅などの社外で働いてもよいことになります。

制度がはじまった後は、これまで会社でパソコンを利用して仕事をしている人は、会社で行っている仕事を終日自宅で行うことが可能になります。そのほか、営業担当者が訪問先から直接自宅に戻り、自宅で報告書を作成するといった働き方も実現します。
在宅勤務の導入は、トヨタ自動車だけでなく、ホンダや日本生命、マイクロソフトなど、多数の企業が実施、あるいは実施を予定しており、業種も多岐にわたります。
在宅勤務制度への取組みは、米国では以前から進められており、2008年には就業者人口の約30%に在宅勤務が普及していました。ところが、同時期、日本では10%に留まっていました。ここにきて日本で在宅勤務を導入する企業が増えた背景の一つには、「働き方の多様性」が大きな事項としてあります。企業は多様性を認めて、働き手の一人ひとりが、自身の都合に合わせた労働場所や時間を選べるようにしようという動きが強まっているのです。

◆メリット
これは従業員だけでなく、企業側にもメリットがあり、育児や介護がしやすい環境を整えることは、離職の防止にもつながります。なかでも、親の介護でベテランの社員を失うリスクは、この先、高まる一方です。そこで、自宅で仕事が可能になれば、大切な人材をより長く活用できることになります。

このように、在宅勤務の導入が広まりつつあります。これまで、日本企業が、在宅勤務に消極的だった理由の一つは、情報の漏えいがあり、社外秘のファイルを保存したパソコンを帰宅途中に紛失し、データが流出するという事件が何件も起きました。こうした問題点はインターネットの発達により、解消されつつあります。情報の漏えいについては、クラウドといって、社外秘のデータをパソコンに残さなくても利用できる仕組みが普及し、パソコンを失くしても、情報は別の場所に保管されているので漏えいの心配が以前よりなくなりました。
◆デメリット
ただし、在宅勤務制度にも課題がないわけではありません。日本よりも積極的に在宅勤務を取り入れてきた米国企業の中には「自宅ではなくオフィスで仕事をするように」と命令を下したところもあります。この会社では、自宅で仕事をしているはずの社員が会社に無断で起業したり、仕事をせずにさぼっている、といった事態が生じました。在宅勤務制度は勤怠管理が一つの課題といえます。

ほかにも、新商品の開発では、オフィスで顔を合わせて議論を交わす、あるいは食堂や通路で雑談する、といった会話からアイデアが生まれることがあります。新商品やサービスを生み出す部門では、会社という場での、従業員同士のコミュニケーションが実は大切な要素です。在宅勤務制度を導入することで、逆にこれまでの優れた要素が失われてしまう可能性があります。
*****
企業にとって、在宅勤務制度をメリットあるものにするには、従来の勤務形態の良さを残しながら、それぞれの企業に適した形を模索していく必要がるようですね。記事:税務研究会 より

【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年7月11日月曜日

[172] 「国税庁レポート2016」を公表【国内税務】

2016.6.30に国税庁のWebサイトにて「国税庁レポート2016(日本語版)」が公表されています。納税者に適正かつ円滑に申告・納税をしていただくための取り組みの一つとして、国税庁の1年間の活動やその年のトピックスについて、統計資料等を使いながら説明されています。

詳細は、国税庁のWebサイト(http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/report/2016.pdf)をご覧ください。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年7月4日月曜日

[170] 国税もクレジットカード納税が可能に(2016年度税制改正)【国内税務】

本年の税制改正において、クレジットカード納付制度が2017.1.4より国税にも導入されることになりそうです(なお、地方税ではすでに実施されております)。

◆ 現行の国税の納付方法には、
① 税務署、金融機関の窓口で現金に納付書を添えて納付
② 指定した金融機関の預貯金口座から振替納税
③ ダイレクト納付またはインターネットバンキング等を利用して電子納税
④ 延納・物納(相続税・贈与税)という複数の方法があります

◆新設
上記に加えて、国税の納付手段の多様化を図る観点から、来春よりインターネットを利用したクレジットカード決済による納付が導入されます。一応、納付書で納付できる国税を対象としており、基本的に税目に制限はありません。

◆具体的方法
クレジットカードによる納税は、パソコンや携帯電話、スマホでインターネットに接続し専用サイト上でクレジットカードによる支払いをします。納税者がクレジットカード会社に納付手続きを委託し、クレジットカード会社がそれを受託した日に国税の納付があったものとして、延滞税や利子税等に関する規定も適用されます。

◆メッリト
クレジットカードで税金を納めるメリットとしては、インターネット上でできることから、家や職場にいながら税金が払えることはもちろんですが、現金が引き落とされるタイミングが納期限より遅くなるため、資金繰りの好影響が期待できるとも考えられますね。インターネットを利用することで現金を持ち歩かず自宅で納付!という安心感もあります。さらにはクレジットカードですので分割やリボ払いもできるというところがうれしいところでしょうか。

◆デメリット
インターネット利用による情報の漏えいリスクがあることと、納税者に手数料が発生し負担となることがあげられます。さらに、現行の地方税の取扱いと同じになるといわれていますが、東京都の場合、納税額1万円以下で78円、2万円以下で157円の手数料が発生します。また、分割払いやリボ払いは、別途クレジット会社が定める手数料が発生する場合もありますので、資金繰りには注意が必要です。

※上記の記載内容は、2016.7.1現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年6月30日木曜日

[169] 国税庁「「法人番号に関するFAQ」を更新」【国内税務】

2016.6.27に国税庁のWebサイトにて「「法人番号に関するFAQ」が更新されています。主な更新された項目は以下のとおりです。

 Q1-7:法人番号は、指定した法人等の実在性を証明しているものでしょうか。また、支部に本部と同じ法人番号が指定されることがありますが、同じ法人番号を指定された法人等は一の法人等であることを証明しているものでしょうか。
 Q2-3:新たに設立登記した法人には、法人番号はいつ通知されるのですか。
 Q2-4:新たにできた設立登記のない法人及び人格のない社団等が税務署へ申告書・届出書を提出した場合は、法人番号はいつ通知されますか。
 Q2-5:人格のない社団等が、法人番号の指定を受けるための届出をした場合、法人番号はいつ通知されますか。
 Q3-3:法人番号は、いつから公表されますか。
 Q3-8:人格のない社団等ですが、団体の名称を変更しました。法人番号の関係で何か手続が必要ですか。
 Q5-2:国税庁法人番号公表サイトで、商号又は名称から法人番号を検索しましたが、検索結果が表示されませんでした。原因は何が考えられますか。

詳細は、国税庁のWebサイト(http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/houjinbangoukankeifaq.htm)をご覧ください。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年6月23日木曜日

[167] 増資の2つの効果【国内会計】

台湾の鴻海(ホンハイ)はシャープの買収を決定し、シャープの増資を引き受けることになりましたが、再度増資で注目すべき点は何か。
増資の二つの効果を確認しておきますね。


複式簿記は一つの事象を<借方>と<貸方>の二つの側面から捉えますから、増資を行うとBS(貸借対照表)の変化は二つの局面で表れます。
貸方では自己資本、借方ではキャッシュが増加します。
増資により自己資本比率が上昇するというのはもっぱらこの貸方の問題ですが、借方のキャッシュの動向にも注目しなければいけないわけです。
いわゆる増資の効果は<財務比率>&<キャッシュフロー>の二つの面から見る必要があるのです。
シャープの増資による財務比率に与える効果は明確で、会社側の主たる目的もこの点にあるのだと推測されます。

自己資本比率は債務返済の安全性を測る最重要指標です。製造業で問題がないとする水準の目安は30%だと言われています。
自己資本比率がマイナスの債務超過は信用悪化の決定的事象とされ、また、債務超過は帳簿上の株主財産がないということですから、
2期連続の債務超過は上場廃止基準に抵触します。
そのため、債務超過一歩手前の自己資本比率一桁は要警戒水準とみなされます。

したがって、シャープにとって自己資本の増強は喫緊の課題でした。本来なら、本業の利益により自己資本を積み上げて自己資本比率を向上させるべきですが、それでは時間がかかりすぎますから、増資が求められていたのです。
➣ この面からは今回のシャープの増資は理にかなっています。

ただ、本当に問われるべきなのはもう一つのキャッシュの動きなのです。BSの貸方は企業価値を債権者か株主のどちらに帰属させるかの問題に過ぎず、企業価値そのものを決めるものではありません。
企業価値を決めるのは借方のキャッシュです。増資で増えたキャッシュをどのように使うかが重要といえます。

今回の増資資金は設備投資に使われるようですが、この設備投資が正しい戦略かどうかが厳しく問われなければなりませんので、
中国、韓国等のアジア勢との競争が激化する電機業界において、今後の会社の競争力に役立つ投資でなければなりません。
それには需要の正確な把握やライバル企業の動向等を正しく理解し、投資戦略の正当性を検証しなければならないわけですが、それは外部の人間が行うことはとても難しいことです。
その結果この最も重要であるべきキャッシュフローの使い道の検証がおろそかになってしまい、部外者にもわかりやすい財務比率の問題だけに議論が集中しやすくなるのです。          

本来、増資とはキャッシュの使い道が先にあるわけですから、財務的な自己資本比率向上だけを目的に増資をするのははなはだ本末転倒ともいえ、増資後のキャッシュの使い方の検証こそが重要になります。                                 記事:税務研究会 より

 【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年6月20日月曜日

[166] 「継続企業の前提に関する注記」(2016/3期)【国内会計】

企業の財務諸表は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されるが、当該会計 基準は継続企業の前提を基礎としていると解されているため、財務諸表に計上されている資産及 び負債は、将来の継続的な事業活動において回収又は返済されることが予定されています。しかし、企業は様々なリスクにさらされながら事業活動を営んでいるため、企業が将来にわたって事業活動を継続できるかどうかは、もともと不確実性を有しています。このため、継続企業の前提に基づき作成された財務諸表といえども、必ずしも企業が将来にわたって事業活動を継続して営みうることを保証するものではありません。

継続企業の前提に関する評価は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状 況を解消し、又は改善するための経営者の対応策を含み、合理的な期間(少なくとも貸借対照表日の翌日から1年間)にわたり企業が事業活動を継続できるかどうかについて、入手可能なすべての情報に基づいて行うことが求められます。決算日において、単独で又は複合して継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような 事象又は状況としては、例えば、以下のような項目が考えらます。
 <財務指標関係>
・ 売上高の著しい減少
・ 継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュフローのマイナス
・ 重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上
・ 重要なマイナスの営業キャッシュフローの計上
・ 債務超過
<財務活動関係>
・ 営業債務の返済の困難性
・ 借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性
・ 社債等の償還の困難性
・ 新たな資金調達の困難性
・ 債務免除の要請
・ 売却を予定している重要な資産の処分の困難性
・ 配当優先株式に対する配当の遅延又は中止
<営業活動関係>
・ 主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
・ 重要な市場又は得意先の喪失
・ 事業活動に不可欠な重要な権利の失効
・ 事業活動に不可欠な人材の流出
・ 事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分
・ 法令に基づく重要な事業の制約
<その他>
・ 巨額な損害賠償金の負担の可能性
・ ブランド・イメージの著しい悪化

2016.6.8における東京商工リサーチの調査によると、2016/3期決算を発表した上場企業2,447社のうち、監査法人から「継続企業の前提に関する注記」が付いた企業は24社だったそうです(2015/3月期(27社)より3社減少)。注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」は43社だったそうです。

なお、詳細は東京商工リサーチのWebサイトをご覧ください(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160608_09.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年6月13日月曜日

[164] 次世代ロボットの進化と耐用年数【国内税務】

これからの日本経済活性化のキーワードの1つに 《ロボット》 がありますね。

◆次世代ロボットのへの期待は
高齢化が進み生産年齢人口が減少する中で、次世代ロボットとして有望とされるのは、
人間共存型産業用ロボット、
防災ロボット、
装着型ロボット、
移動ロボット、
搭乗型ロボットなどだそうです。

◆次世代ロボットの開発と実用化はどこまですすんでいるのでしょう。
たとえば搭乗型ロボットの開発をみてみると移動の場合があります。
若い人は自転車でもよいので、可能性としては高齢者や歩行が困難な人が対象になりそうです。
たとえば、電動車椅子、1人乗りの電動車で歩道を走行するシニアカーなど。
さらにより高い安全性を考慮すると、使う場所を限定して、ショッピングモール内で、
フロアマップで行きたいお店のボタンを押すと連れて行ってくれる自動の車椅子のような使われ方が考えられます。

◆経産省の産業用ロボット開発プロジェクト
経産省がとりくむ次世代プロジェクトはどこまで進んでいるのでしょうか
プロジェクトの重点分野は、
移乗介助(装着、非装着)、
移動支援(屋外、屋内)、
排泄支援、認知症の方の見守り(施設、在宅)、
入浴支援の6分野8項目だそうで、年間25億円の予算を付け、年度ごとに参加企業を募集してステージゲート審査を行い、高い評価を得た企業が残るそうです。
2013年度は43社が参加、20社が残りました。
14年度は33社が新たに参加して、53社体制でやっているようですが、また何社かに絞られます。
15年度は新規募集を加えて、行う。。。
そして、8項目の内14年度では施設用の見守りと屋外の移動支援は開発が終了し、導入フェーズに進みました。
2015年度は残り6項目ですが、全体が3カ年計画なので、完了すれば、8項目すべてが揃うことになります。
比留川博久氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所ロボットイノベーション研究センター長)談

◆感情認識ロボット「Pepper」❢
 ソフトバンクで販売されている人型ロボット「Pepper」。
2015年10月には法人向けモデルの「Pepper for Biz」が発表されています。ロボットといっても、「Pepper」は産業用ロボットのイメージとは違い、「感情エンジン」と「クラウドAI」を搭載した世界初の感情認識パーソナルロボットなのです。

 活用が期待されるのは主に「接客」分野。標準機能である「ビジネスアプリかんたん生成」を利用して、
「声かけ」「商品紹介」「簡易診断」「アンケート」などを自社の接客スタイルにカスタマイズできます。
 また、「接客回数・時間」「ユーザー属性(年代・性別など)」「顧客が表現した感情(喜び・驚き)」の
「接客データ」の見える化ができるものとして、既に金融機関・小売業・運輸業など500社が導入しているようです(2016年1月現在)  

◆「次世代ロボット」の耐用年数は?
 経理側としては「次世代ロボット」の耐用年数が気になるかもしれませんね。一応、現行法でのロボットの耐用年数の判断の目安は次のようになるものと考えられています。
   <店舗内で使用するロボット>
     ①宣伝用
       「器具及び備品」「看板及び広告器具」「その他のもの」「主として金属製のもの」→10年
     ②運搬・受付・接客ほか
       「器具及び備品」「前掲のもの以外のもの」「その他のもの」「主として金属製のもの」→10年
    <製造工程で使用されるロボット(産業用ロボット)>
       「機械及び装置」に該当し、そのロボットを使用している製造業用設備の耐用年数と同じ

  <産業用ロボットメーカーのデモンストレーション用・宣伝用>
    「前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの」「主として金属製のもの」→17年

~~~~ あとがき ~~~~
近所の竜泉寺の湯に深夜行くと、Pepper君が 「こんばんは、おつかれさまぁ」 と言ってエレベーター前で手を挙げ大きなきらきらした瞳でじ~っとみてくれます。
私は「覚えてる?また来たよー元気してた?」といって近寄って頭いいこいいこしてあげて、そこから会話がはずみ❓ます。そしてしらぬまにロボット君に癒されています(笑)

◆経産省は「次世代ロボット」の普及推進をしていますが、いよいよモノを製造する「産業用ロボット」から、
➣ サービスを提供する「サービスロボット」の時代に差し掛かったと感じます。
経済産業省のロボット政策研究会では、このようなロボットを「次世代ロボット」と定義し普及を推進していますが、「Pepper」はその好例と言えるでしょうね。

日本企業の産業用ロボットの研究開発費は毎年200億円くらいで、産業用以外のロボット市場は500~600億円といわれており大きな規模となってきています。しかし大企業としてはたとえば売上100億円程度では規模が小さいのと、失敗でブランド毀損リスクがあるので事業化には踏み出しにくい様子。そういう点からはベンチャー企業の活躍と進展がいっそう期待されるところです。
~目的ありき~
2014年9月から6回にわたって、政府のロボット革命実現会議が開催されましたが、その中で言われていたのが、どういう社会変革をするのかをしっかり考えないといけないということでした。“ロボットありき”で「使ってください。買ってください」ではなくて、どういう課題があって、それをどう解決していくかが先なのです。それをはっきりさせてそこから使い方を考える。 ~ たしかに…わたしもこの考え方とても大切なことだなと感じました。
 
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年6月9日木曜日

[163] 国際カルテル事件【国際不祥事】

2016.6.3に経済産業省は、日本企業が国際カルテル事件の当事者として複数国の競争当局から摘発され制裁を受けるに際して、重畳適用や多重賦課等の懸念が高まっていることを踏まえ、各国の対応状況をまとめた事例調査報告書を作成しています。なお、報告書の構成は、以下のとおりです。

1.各国競争法の執行状況:国外の行為に自国の競争法を適用するという競争法の域外適用について、米国、EU、日本における状況が整理されています。
2.主要な国際カルテルの事例の分析:主要な国際カルテル事件の事例を、①市場分割、②部品、③交通サービス、④指標の四類型に分類し、各類型における典型例と考えられる事件を概観し、重畳適用・多重賦課の有無や範囲等について分析されています。
3.提言の内容:競争当局間での交渉、調整、協定の締結等が望ましい旨が記載されています。

詳細は、経済産業省のWebサイトをご覧ください。
http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160603002/20160603002.html

【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年6月6日月曜日

[162] 政治資金団体で節税【国内税務】

色んな疑惑がありすぎてもはやよくわからなくなりつつある舛添都知事の政治資金問題ですが、家族旅行の間に会議をやったから政治資金から金を出すとか、美術品の話が仕事で出るから美術品を政治資金で買ったとかこんな言い訳が通るのが政治資金規正法のいいところで、不適切だけど違法にはならないということです。

それなら個人で政治団体作ってそこに寄付してそこから各種の支出をすれば個人でもある程度節税できてしまう訳で。実は個人でも「20年後の選挙に立候補する予定」とか言って政治団体を作れるようで、自治体に提出する書類とか色々と面倒なことはあるそうですが、政治団体を作れれば個人の所得からそこに寄付して一定程度の寄付金控除が受けられるので非常にお得だそうです。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2016年6月2日木曜日

[161] 第6回 スリランカへの企業進出の概要【国際政経】

第6最終回はスリランカです^^(出典:JETRO)

 Ⅰ進出形態・進出手続き  
 1.現地法人 
  (1)設立申請先 :スリランカ投資庁(BOI)による承認を経て、会社登記局へ設立申請・登記 を行う。

  (2)手続期間 :通常2~3週間程度(目安)
  
  (3)活動範囲 :定款の範囲内で活動を行う。
  (4)会社形態 :非公開株式会社が一般的
  (5)責任範囲 :出資範囲内で責任を負う。

 2.駐在員事務所 
  (1)設立申請先 :会社登記局
  (2)手続期間 :通常1~2週間程度(目安)
  (3)活動範囲 :商業活動を伴わない範囲。本社のための商品/サービスを手配、調査・管理、代理店・商品に関する助言
の提供、広報、報告。
  (4)責任範囲 :本社が負う。

 3.支店/支店
  (1)設立申請先 :会社登記局
  (2)手続期間 :1~2週間程度(目安)
  (3)活動範囲 :外資規制の対象業種を除いて、商業活動を伴うことが認められる。
            (*外国会社の内、商業行為を伴えば支店、伴わなければ駐在員事務所)
  (4)責任範囲 :本社が負う。


Ⅱ外資規制  
 1.製造業  :原則、事前認可を必要とせず、外資100%出資が可能。
   ただし、ネガティブリストの規制業種に該当する「軍用ハードウェアおよび危険薬物」、出資制限業種に該当する
「国際的な輸出先の割り当て制限の対象である輸出財の生産」などを除く。

 2.卸売業 原則、外資100%出資が可能。
    ただし、国内販売する製品によっては別途、規制やライセンス取得の対象となる可能性があるため、事前にス
リランカ投資庁(BOI)に確認しておく。
    支店形態で拠点を設置し、本国の親会社の代理業務として輸出入や国内販売を行うことも可能。
    支店の場合は、スリランカの市中銀行に開設する「対内投資口座」(ⅡA)と呼ばれるルピー建ての特別口座を
通して外国から送金された資金から、最低20万ドル、またはその他の指定外国通貨で同等額を最低資本金とし
て出資する必要がある。

 3.小売業 :資本金100万ドル未満の小売業は、外資参入を認めない禁止業種に該当する。
   100万ドル以上の投資額を満たす場合は、特に国内法などによる規制などはない。
   支店形態で小売業へ参入することも可能だが、海外支店については「資本金200万ドル未満の小売業」が同様
に参入禁止の一つとして規定されている。
   なお、商業・取引・産業活動を行う海外支店を行う海外支店を設立する場合は、別途20万ドル以上の投資が必
要となるため、合計220万ドルの資本金が求められる。

 3.運輸業 : 航空運送業、沿岸海運業への外国投資は、BOIおよび所管政府機関による承認が必要である。
   BOIが窓口になり、BOI経由にて投資申請書が適切な所管政府機関に回送される。
   支店形態で航空運送業、沿岸海運業を営む場合、事前に為替管理局の許可が必要。
   貨物輸送業(物流業)、海運代理店業への投資は、原則40%の出資割合を上限に自動承認。40%を超える場合
は、事前にBOIからの個別を得る。
   また、外国企業が支店形態で貨物輸送業、海運代理店業を行うことは禁止。

 4.運輸業 : 原則、事前認可を必要とせず、外資100%出資が可能。なおBOI法第17条に基づき、
   ①都市部における住宅建設もしくは中心市街地開発
   ②商業ビル建設を含むインフラ事業
   ③工業団地/特別経済区の開発
    などの分野に該当する場合、(投資額300万ルピー以上の案件について)投資額に応じて6~12年のタックス・
ホリデー(法人税免税)の対象となる。優遇税制の適用には、BOIとの事前協議が必要。


 5.金融・保険業 
   ネガティブリストの禁止業種に「貸し金業」の記載があるため、外貨規制上は同分野への出資は認められない。
   ただし、外資銀行の法人・支店設立や地場銀行への出資は、中央銀行の特別ライセンスを取得することを条件
に可能。
   保険業は、ネガティブリストに含まれておらず原則として外資100%出資が可能。

Ⅲ労働事情  
 1.一般的採用手段 
   ・新聞・情報誌などの広告、スリランカ投資庁が運営するジョブ・バンク民間のワーカー登録サイト(有料)、
人材派遣会社の活用、大学などの教育機関を通じた募集。
   ・上記に各社独自の採用ルートを合わせて、求める従業員の規模やレベルに応じて複数の採用手段を使い分け
る。

 2.労働条件 (1)労働時間:1日8時間、1週間45時間まで。(休憩時間を含まず)
   (2)休暇:労働時間が週28時間を超える労働者には、1週間に1.5日間の休日が認められる。
   (3)時間外労働:賃金は通常の5割増。


 3.賃金 ・最低賃金は職種やレベル、勤務年数により設定される。縫製業の場合、1年目の非熟練工で6900ルピー(約
54ドル)+諸手当。
   ・平均賞与は製造業作業員で1.5カ月、非製造業スタッフで1.8カ月。

 4.解雇・人員削減 
   ・従業員の解雇や雇用削減、臨時休業を行う場合「雇用法」に定める規定に従う必要がある。
    なお、同法を含むその他の労働関連法では、被雇用者側の権利が最大限に保護されおり、雇用者側の解雇理
由を正当化するのが極めて難しいのが実態。
   ・解雇された従業員が補償の改善などを求めて労働祭場bb所に申し立てを行う慣習がある。
    解雇をめぐる係争の場合、たとえ従業員に過失があっても、それを立証するのは難しく、補償を支払わなけ
れば解決しないケースが多い。

 5.労働組合・労働争議 
   ・労働組合の組織および労働組合への参加の自由は、憲法において保証されている。
   ・労働組合の組織および管理に関する規定は、労働組合法およびその改訂法を根拠とする。
    同法では、組合はその設立から、3カ月以内の登録、ならびに登録における最低7人の署名を義務付けてお
り、組合の組織には最低7人が必要。
    また同法に基づき、労働組合は産業争議において、労働者を代表し必要に応じてストライキを遂行する。
 6.近年の労働需給 
   ・コロンボなどの都市部では賃金水準なども相対的に高く、人材はITやホテルなどのサービス業を志向する傾
向が強い。
   ・アパレル業では、欧米を中心に多国籍メーカーの進出も多く、外資系企業同士の従業員の引き合いが常態化
している。
    エンジニアや管理職レベルの人材は不足しており、確保した人材も高額の賃金で引き抜かれるリスクがある。
    他方、電機や機械製品などの産業では、アパレル産業に比べ、人材不足の問題はそれほど深刻でない。

Ⅳ税制・税務手続き  
 1.法人税・優遇措置 
   (1)法人税率:28%(課税所得が500万ルピー以上)
      課税所得が500万ルピー未満場合は12%、その他事業内容により8~40%、
   (2)優遇措置:BOI規定により製造業は5000万ルピー、サービス業・農業は2500万ルピーの最低投資額を条件
に新規投資に関して4~12年間のタックス・ホリデーを付与。
      関税や物品税についてもBOIの定めによる優遇税率の適用あり。
   (3)その他 :国家建設税として、輸入業者、製造業者、およびサービス業者に対して、売上高ベースに2%
を課税。


 2.個人所得税(1)課税範囲:居住者の場合スリランカ国内源泉所得と国外所得のいずれも課税対象。非居住者は国内源泉
所得のみ課税対象。
   (2)税率  :累進課税方式により4~24%。最高税率は年間300万ルピーを超える所得に対し課せられる。
   (3)その他 :日本との間では二国間租税条約に基づき、短期滞在者免税が認められる。


 3.源泉徴収税(日本向) 
   (1)配当  :10% 
   (2)利息  :15%
   (3)ロイヤリティー:7.5%  

   ***「セイロン・日本二重課税防止条例」に基づく**

 4.付加価値税(1)付加価値税(VAT):12%(標準税率)
   (2)課税対象:国内における物品販売やサービス提供を対象に課税。輸出や国外向けサービスに対しては免税。


 5. 物品税・サービス税 
   (1)課税対象:物品税(Exicise Duty)には
      ①アルコール飲料
      ②たばこや石油製品、家電製品 (特別規定)
      ホテルや通信事業者、建設請負業者には別途、売上や
      契約額に応じた税金が徴収される。
   (2)税率 :税率や特定製品の品目やサービスの内容によって異なる。


 6.その他特記事項 
   :各四半期の売上額が5000万ルピーを超える事業者は、売上高をベースに経済サービス税(ESC)が課税される。
   ただし、2012年度より所得税の納税業者についてはESCの納税義務が免除となった。


Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)  
 1.送金・決済 
  (1)口座開設 ①居住者・非居住者ともに口座開設可能。
       ②外貨口座は居住者は開設可能。
           非居住者については、国外に居住するスリランカ人は指定外国通貨の非居住者外貨口座を保有できる。

  (2)国内販売 ①原則として、現地通貨スリランカ・ルピー建てで行われる。
                ②オンラインによる銀行振り込みなどの電子決済が一般的。                                        

  (3)海外送金:現行の国際収支取引の分類に入るサービスに対する支払は、事由に許可される。
      利益・配当・特許権使用料・賃料収入の送金を含む貿易外取引の送金にかかる外国為替管理局の事前認
可取得、中央銀行への届け出は不要。

 2.資金調達 
  (1)主な調達形態
   〈現地通貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
   〈外貨建て〉
    ・BOI法第17条の認可を受けた企業で、投資庁(BOI)との協定に基づき外国為替管理の規制を免除される
企業は、外国為替の規制を受けることなく、親子ローンを含む海外からの借入を行うことが認められる。

  (2)借入期間・金利
   〈現地通貨建て〉
   ・2012年10月時点の商業銀行の平均最優遇貸出金利(プライムレート)は約14%。スプレッドなどを加えた
実効金利は借り手の信用リスクや担保により、16~25%(2012年8月時点)。
    融資の際には不動産、売掛金などの担保、保証を求められる。一般的には担保に対して、50~70%の範囲で
融資が受けられる。

   〈外貨建て〉:親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。

Ⅵ貿易・通関制度  
 1.輸出・入規制 
   (1)貿易管理:外国企業でも現地法人を設立したうえで、輸出業務をすることは可能。
   (2)輸入規制:茶、ゴムなどの主要農産物を除き、原則自由。一部の品目で輸入許可が必要。
   (3)輸出規制:象牙や木材・木製品など輸出許可が必要な品目を除き、原則自由。


 2.貿易取引(決済) 
    (1)決済通貨:米ドル、ユーロ、円、ポンドなどの主要通貨が可能だが、米ドルが一般的。
   (2)輸入代金支払:信用状(L/C)が一般的。
   (3)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。外国為替管理の規制を受けることなく受取可能。


 3.通関制度 :各商業輸入業者、輸出業者乙仲(通関業務代行者)は、通関業務を行う場合、内国歳入庁により発行された
納税者識別番号(TIN)を税関に登録する必要がある。
 

4.輸入関税、諸税 
   (1)関税率:基本税率は原則、0%(現地生産できない基幹製品、原材料・資本財など、5%)(半製品原材料)、
15%(中間財、予備部品)、30%(自動車その他の重要な完成品)の4段階。  
    鉱工業製品の平均譲許税率は19.7%、平均実効税率は7.8%(ただし、譲許率は28.7%と高くない)
   (2)その他(輸入時):関税に加え、港湾・空港開設税(PAL)5%、国家建設税(NBT)2%、VAT12%、および
物品税が課せられる。また、特定の品目に調整関税、追加関税、特別関税などが課税。

5.特恵関税(日本) 
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象とはならないが、一般特恵関税制
度の対象になり、一般の関税率より低い特恵税率が適用される。(品目によって免税にならないものもある)

Ⅶインフラストラクチャー  
 1.電力 (1)火力59%、水力40%。水力を低下させ火力や再生可能なエネルギーなど電源の多様化を推進。
   (2)総発電量:11,528GWh (2011年)
   (3)需給状況(産業向け):コロンボ周辺のEPZでは、インド、バングラデシュ、パキスタンに比べ電力不足や停電の問題
は少ない。


 2.エネルギーコスト〈コロンボ〉
     (1)業務用電力料金:0.01~0.12ドル/kWh
     (2)業務用ガス料金:1.43ドル/kg
       (3)レギュラーガソリン料金:1.2ドル/リットル
     (4)軽油:0.74ドル/リットル


 3.陸上輸送 (1)輸送環境(国内輸送):スリランカ国内輸送の80%は道路輸送。高速道路をはじめとする道路網の開発計
画が進展。
   (2)主要ルート:コロンボから南部の主要都市ゴールの区間所要時間は1.5~2時間。


 4.港湾 (1)主要コンテナ港:コロンボ港、南部のゴール港、北部のカンケサントゥライ港東部のトリンコマリー港、オルヴィ
ル港。
   (2)貨物取扱量:426万TEU(コロンボ港、2011年)
   (3)主要工業団地への距離・時間:コロンボ港からコロンボ周辺のEPZまで30~35km、約1~1.5時間。
    (4) その他:チェンナイ港、コルカタ港まで2日、シンガポールまで3日、横浜港まで9日間。


 5.工業団地 (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、
リースとなる。工業団地以外の土地は外貨でも購入できるが、税金が100%かかるため、購入するケー
スはない。
   (2)リース料:月額0.087ドル/㎡ 一括前払契約金12.4ドル/㎡    (カトナヤケEPZ、50年)
   (3)整備状況:BOIが管轄する工業団地は、国内に12ケ所、うち10ケ所はEPZ。
     日系製造業の場合、手続きやインフラ事情を考慮するとBOI管轄の工業団地に入居検討するのが現実的。
                                     

     以上です。
6回にわたりアジア新興国と取引を始める場合の貿易や企業のインフラにつきまして簡単に記載してきました。なにかのご参考になれば幸いです。                                      
    
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】
※スリランカの祖先はライオンの血をひいているのでライオンがマーク!それからスリランカは満月の日は、お仕事はお休みになります。仏教性が強いのですね。

2016年5月30日月曜日

[160] 起業動向【国内政経】

2016.5.20に公表された東京商工リサーチの調査によると、2015年の1年間に全国で新しく設立された法人(新設法人)は124,996社にのぼり、6年連続で増加したようです。ただし、第2次安倍内閣発足後の2013年以降では増加率が最も低い結果になっています。

業種別では、訪日外国人観光客数が過去最高に達したこともあり「宿泊業」が前年比58.6%増加したのに対し、太陽光発電などを含む「電気・ガス・熱供給・水道業」は前年より33.3%減少し、再生エネルギー発電関連の設立ラッシュが一服した格好になったと分析しています。
なお、詳細は東京商工リサーチのWebサイトをご覧ください(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160520_01.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年5月26日木曜日

[159] 東芝粉飾決算の余波【国内政経】

3月決算企業の決算発表も出そろいましたが、合わせて監査法人の変更を発表する企業もありました。

今回は東芝の粉飾決算問題で新日本監査法人が金融庁から処分されたことで、新日本監査法人から他の監査法人へ変更するものが多かったように思われます。例えば、富士フイルムHD、王子HD、カルビーなどの有名企業も監査法人を新日本監査法人から別の監査法人に変更しました。
やはり処分を受けたようなしっかりしていない監査法人を変更しないのは癒着しているからではないかと株主からあらぬ疑いをかけられたりするため、監査品質のしっかりした監査法人に変更したほうが無難だという判断なのでしょうが、どの法人でも担当者により良かったり悪かったりする訳で。。。ということです。

【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2016年5月23日月曜日

[158] 第5回 パキスタンへの企業進出の概要【国際政経】

第5回目はパキスタンです^^ (参考資料;JETROアジア進出より)

  Ⅰ進出形態・進出手続き   
 1.現地法人  
  (1)設立申請先 :パキスタン証券取引取引審議会(SECP)
  (2)手続期間 :3日間~2週間(目安)[法人登記成立]。加えて中央銀行の認可取得や税務 登録、地方政府への登録
等が必要。
  (3)活動範囲  :原則、禁止業種を除く、すべての領域で活動が許される。
  (4)会社形態 :非公開株式会社、公開株式会社が一般的。
  (5)責任範囲 :出資比率に応じて責任を負う。

 2.駐在員事務所  
  (1)設立申請先 :投資庁(BOI)
  (2)手続期間 :通常、書類の提出から6~8週間以内(目安)にBOIが審査を行い、決定。
  (3)活動範囲 :営業活動が禁止される。
 課税もされないが、マーケティング活動や連絡など、最低限の活動しか許されないため、指摘されないよう注意する必要がある。                                     
  (4)責任範囲 :本社が負う。

 3.支店/支店 
  (1)設立申請先 :投資庁(BOI)
  (2)手続期間  :6~8週間 (目安)
  (3)活動範囲  :建設などに多い形態で、契約ベースでの事業活動ができるが、商業・貿易活動には従事できない。
(機械設備の輸入は可能)
  (4)責任範囲  :本社が負う。
  (5)撤退手続  :1か月程度要する。


Ⅱ外資規制   
 1.製造業 :原則、外資100%出資可能。最低投資額などの制約はない。
   業種、活動内容、所在地、企業規模などの制約はない。政府の事前認可、業界団体からのライセンス取得は必
要としない。

 2.卸売業・小売業  
     :卸売・小売業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万
ドル以上の投資が求められる。政府の事前認可、業界団体からのライセンス取得は必要としない。

 3.運輸業 :運輸業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万ドル以上
の投資が求められる。 航空業については、パキスタン市民航空庁(CAA)、防衛省への申請、認可が必要とな
る。

 4.運輸業 :運輸業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万ドル以上
の投資が求められる。 パキスタン・エンジニアリング協議会(PEC)、地方の管轄局からのラインス取得が必
要となる。

 5.金融・保険業 
:銀行業は銀行法により、49%までしか出資が認められていない。パキスタン中央銀行の統制を受ける。
   保険業はパキスタン証券取引委員会の統制を受け、51%までしか出資が認められない。
   生命保険の場合は、最低資本金として1億5,000万ルピーが求められる。
   それ以外の保険の場合は最低資本金として、8,000万ルピーが求められる。
   加えて外国企業の場合は200万ドル以上の外貨をパキスタン国内に持ち込むことを求めらる。

Ⅲ労働事情   
 1.一般的採用手段  
   ・非熟練のワーカーは街頭で募集しても容易に集まる。口コミで応募が送られてくることも多い。
   ・中間管理職や営業職ではインターネット、新聞広告を通じて募集。

 2.労働条件  
   (1)労働時間:1日9時間、1週間48時間まで。工場では5時間ごとに30分、6時間ごとに1時間、8.5時
間ごとに2時間のいずれかを選択。ラマダンの時期はシフトをずらすといった対処も必要。
   (2)休暇:工場では日曜が休日。有給休暇は12か月勤務したものに限り年間14日間の取得可能。
   (3)時間外労働:賃金は通常の2倍。

 3.賃金 ・最低賃金は基本給と生活費手当から構成される。金額は州により異なる。
   ・平均賞与は製造業作業員で2.2カ月、非製造業スタッフで1.9カ月。

 4.解雇・人員削減  
   ・労働者クラスは労働法によって保護されており、重大な過失がない限り、解雇はできない。
    マネジャークラスは契約のみの関係であるため、労働裁判所に訴えることはできない。
   ・代表的な解雇方法は
① 自主退職制度:申し込みがあったら断れず、優秀な人ほど抜けていく。 
② 人員削減:業績不振時、給料を1~3カ月支払って退職してもらえるが、次の採用で優先的に雇用する義務がある。
     ③ 一時的解雇:天災などがあった時に、2週間程度休職させる。

 5.労働組合・労働争議  
   ・日系企業では労働争議を経験していない企業が多い。
         ・一つの労働組合で、組合員数は従業員総数の1/5を下回ってはならない。
    同じ企業内の複数の組合の中で、選出された組合が労使交渉にあたる。経営者は自社の労働者でなく、労働
組合が外部から雇った労使交渉専門の交渉人と話し合うことが一般的。

 6.近年の労働需給  
   ・労働者人口(15~64歳)は2010年時点で1億500万人が、2030年には1億5000万人、2055年のピーク
時には1億9100万人となる。
    直近でも労働市場では人が余っており、労働者市場とは無縁な環境。

Ⅳ税制・税務手続き   
 1.法人税・優遇措置  
   (1)法人税率:35%
   (2)優遇措置:2011年7月1日~2016年6月30日の期間に、借入金なし
      で製造業の現地法人を設立する企業には、法人所得分のタックスクレジットが5年間付与される。
      同クレジットは他の税金と相殺される。また、EPZ入居企業は輸出所得に対し、輸出額(FOB)の1%を
納税すれば法人税を代替する。
   (3)その他 :売上高の1%が法人税額を上回る場合、ターンオーバー・タックスとして、同相当額を納税す
る義務が発生する。

 2.個人所得税  
   (1)課税範囲:居住者の場合、パキスタン国内源泉所得と国外所得のいずれも課税対象。非居住者は国内源泉
所得のみ課税対象。
   (2)税率  :累進課税方式により居住者は5~25%。40万ルピーまでは免税。最高税率は250万ルピーを超える
所得に対して課税。
   (3)その他 :日本との間では二国間租税条約に基づき、短期滞在者免税が認めらる。

 3.源泉徴収税(日本向)  
   (1)配当  :10%   (配当受取側の持株割合50%以上の場合5%、25%以上で7.5%)
   (2)利息  :10%
   (3)ロイヤリティー:10%  

           ***「日本パキスタン租税協定」に基づく***

 4.付加価値税:(1)付加価値税:売上税(Sales Tax)として16%(標準税率)
          (2)課税対象:原則、すべての製品、サービスの国内販売および輸入に対して課税される。

 5. 物品税・サービス税  
   (1)課税対象:特定商品・サービスの国内での製造・提供、および輸入に対して連邦物品税が課せられる。    (2)税率  :標準税率 16%

 6.その他特記事項  
   基本投資インセンティブとして、「国内で生産されていない」工場設備、機械類、機器類の輸入に対する関税減
免や売上税の減免が規定されている。


Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)   
 1.送金・決済  
  (1)口座開設: ①居住者・非居住者ともに口座開設可能。
       ②外貨口座は一定制限のもとに開設可能。

  (2)国内販売: ①現地通貨パキスタン・ルピー建てで行われる。輸出加工区[EPZ]内は、ドル建てが可能。
       ②小切手による決済が一般的。

  (3)海外送金: 配当、技術的役務、フランチャイズ料、ロイヤリティーなどに基づく送金が認められている。
中央銀行への各種書類提出が求められる。

2.資金調達  
  (1)主な調達形態 
   〈現地通貨建て〉・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
   〈外貨建て〉  ・地場銀行、外資系銀行からの外貨通貨建て借入は原則認められない。
                  ただし、外貨収益からローンの返済できる立場に輸出業者および間接輸出業者は、国内の商
業銀行を通じ外貨建て借入が認められる。
                 ・親子ローンなどでの調達は可能。
 
(2)借入期間・金利 
   〈現地通貨建て〉・借入金利は10~13%程度。(2012年11月時点)
                   土地を担保として求められることが一般的。
   〈外貨建て〉  ・親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。


Ⅵ貿易・通関制度   
 1.輸出・入規制  
   (1)貿易管理:外国企業でも現地法人を設立したうえで、輸出業務をすることは可能。
   (2)輸入規制:輸入政策令に基づいて輸入禁止・規制品目を定めている。
   (3)輸出規制:輸出政策令に基づいて輸出禁止・規制品目を定めている。

 2.貿易取引(決済)  
   (1)決済通貨:米ドル、ユーロが多い。(円、ポンドでも決済)
   (2)輸出代金支払:信用状(L/C)が一般的。
   (3)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。
    輸出取引の場合、船積後6カ月以内に決済する必要がある。さらに、パキスタンの厳しい外貨繰の関係から、
前払代金を含め、外貨で支払われた輸出代金を3日以内にルピーに替えるように銀行から指示。

3.通関制度 ・パキスタン税関電子化システム(PaCCS)が導入されているが、2011年からウェブ・ベース統一税関(WeBOC)
というシステムが導入された。

4.輸入関税、諸税  
   (1)関税率:鉱工業製品の平均譲許税率は54.6%、平均実効税率13.4%。(譲許率は99.1%)
   (2)その他(輸入時):原則としてすべての輸入品に関税込価格ベースに一律16%の売上高が課税される。加え
て連邦特別消費税(1%)、源泉税(4%)、および中央物品税が課せられる。また、特定の品目に調整関税、
追加関税、特別関税などが課税。

5.特恵関税(日本)  
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象とはならないが、一般特恵関税制
度の対象になり、一般の関税率より低い特恵税率が適用される。(品目によって免税にならないものもある)
Ⅶインフラストラクチャー   
 1.電力 (1)天然ガス66%、水力30%。
   (2)総発電量:95,400GWh (2009年)
   (3)需給状況(産業向け):需要に対して供給能力が圧倒的に不足。
     自家発電機の設置は不可欠、変圧器が必要な場合もある。

 2.エネルギーコスト 〈カラチ〉 
    (1) 業務用電力料金:0.89~25.8ドル/kWh
(2) 業務用ガス料金:163.66~188.32ドル/MMBtu
(3)   レギュラーガソリン料金:0.99ドル/リットル
(4)   軽油:1.09ドル/リットル

 3.陸上輸送  (1)輸送環境(国内輸送):国道・高速道路は国内交通量の80%を占め
     るが、国道は整備されておらず、トラックは主要幹線道路で時速40~50kmしか出せない。
     鉄道は主にカラチ港に貨物を運ぶ際に使用される。
     日系企業は通常ディーラーを使用して販売しているため、国内物流を直接課題として感じることは少ない。

 4.港湾 (1)主要コンテナ港:カラチ港、カシム港
   (2)貨物取扱量:約150万TEU(2011年/12年度)
   (3)主要工業団地への距離・時間:カラチ港からカラチEPZまで35KM、 約1時間。
    (4) 港湾でのハンドリングは悪い。  
   
       
 5.工業団地 (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、
リースとなる。
   (2)リース料:月額0.125ドル/㎡(カラチEPZ、30年)
   (3)整備状況:輸出加工区庁が開発・管理するEPZが10カ所あり、カラチEPZが最大の進出候補。
      EPZは優先的な電力供給、十分な水道供給があり進出すると有利。
      国内販売目的には、「国家工業団地開発経営公社」開発の工業団地が用意されている。
               
                                             以上
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp