2015年2月26日木曜日

[32] 高年齢者雇用の実態【国内政経】

政府の啓蒙はうまくいってる?

◆9割以上が高年齢者雇用を実施
 高年齢者雇用安定法では60歳以降の継続雇用についていずれかの雇用確保措置を講じなければなりませんが、厚労省より平成26年6月時点の実施状況等をまとめた集計結果が発表されました。
   ①定年制の廃止
   ②定年の引き上げ
   ③継続雇用制度の導入
 その結果、14万5千社余りの企業のうち、98.1%は雇用確保措置をすでに実施していました。企業別では大企業が99.5%(約1万5千社)、中小企業では98%(約12万8千社)!

◆8割は継続雇用制度実施
 雇用確保措置の内訳は、
①「定年の廃止」実施企業…2.7%(約3800社)、
②「定年の引き上げ」実施企業…15.6%(約2万2300社)、
③「継続雇用制度の導入」による措置企業…81.7%(約11万7千社)と8割程度を占めています。
 うち、希望者全員が65歳以上まで働ける企業割合は71%(約10万3千社)、大企業では51.9%(約7800社)、中小企業では73.2%(約9万5千社)となっています。70歳以上でも働ける企業となると19.9%(約2万7700社)のうち、大企業は約1700社、中小企業約2万6千社となっており、中小企業の方が長く働ける状況である事が分かります。働く時間や賃金を見直しつつ、雇用契約期間の更新をしながら柔軟に継続雇用をしてゆく雇用形態が一般的です。

◆目標は「70歳まで働ける企業」作り
  政府は生涯現役社会の実施にむけた取り組みとして将来の労働力減少、団塊の世代の65歳到達等も踏まえ、年齢に関わりなく働ける社会を目指したいとしています。

  ***** ひとりごと *****
  政府の理想的な啓蒙活動は当然なのですが、実態が追いつくのには、まだ時間がかかりそう…。最近、大企業でリストラを実行している話をよく耳にしますし、その対象になった40歳や45歳の人の話も聞きます。理由は企業としての人材確保は重要であり、若年者の雇用にも繋げていかなければ先行きが危ぶまれるという事です。それも確かにその通りですねぇ。…今後は年齢分布を考慮して雇用政策を行う器用な企業が多くなることを祈っています。
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】
Webサイト/
http://et-inc.jp

2015年2月23日月曜日

[31] スキャナ保存制度の規制緩和【規制】


「平成27年度税制改正大綱」の発表により、「納税者の国税関係書類の保存に係るコスト削減等を図る観点からスキャナ保存制度の要件を緩和」することが予定されています。

(1)対象書類の見直し:スキャナ保存の対象となる契約書及び領収書に係る金額基準(現行:3万円 未満)が廃止されます。ただし、この際、重要書類(契約書・領収書等)については、適 正な事務処理の実施を担保する規程の整備と、これに基づき事務処理を実施していること(適正事務処理要件を満たしていること)をスキャナ保存に係る承認の要件としています。
 (注)上記の「適正事務処理要件」とは、内部統制を担保するために、相互牽制制、定期的なチェック及び再発防止策を社内規程等において整備するとともに、これに基づいて事務処理を実施していることをいう。
 (2)業務処理後に保存を行う場合の要件の見直し:重要書類について、業務処理後にスキャナ保存を行う場合に必要とされている関係帳簿の電子保存の承認要件が廃止されます。
 (3)電子署名要件の見直し:スキャナで読み取る際に必要とされている入力者等の電子署名を不要とし、タイムスタンプを付すこととするとともに、入力者等に関する情報の保存が要件となります。
 (4)大きさ情報・カラー保存要件の見直し:重要書類以外の書類について、スキャナで読み取る際に必要とされているその書類の大きさに関する情報の保存を不要とするとともに、カラーでの保存を不要とし、グレースケール(いわゆる「白黒」)での保存でも要件を満たすことが必要です。
経団連の試算では「税務関係書類の紙による保存コストは年間約3,000億円」(平成17年:e-文書法制定当時)とされ、「適正事務処理要件」という内部統制の確立が、具体的な経費削減に結びつくものであり、企業では、自らの内部統制の確立を再点検して、この「適正事務処理要件」の充足に向けた体制整備をする必要があるでしょう。
【執筆者:公認会計士松澤公貴】Webサイト/
www.jp-kmao.com

資料提供:インテリジェントウィルパワー株式会社http://www.tiwc.co.jp

2015年2月19日木曜日

[30] 投資の評価【国内政経】

2015年3月期の第3四半期の決算発表が終了しました。
上場企業全体で経常利益は7%増加、そのうち製造業が12%増と全体を押し上げました。一方で足を引っ張ったのが石油、商社などの資源関連企業です。特に商社では住友商事の2,400億円を筆頭に丸紅1,200億円、三菱商事650億円、三井物産560億円と資源価格の下落に起因した減損損失計上がありました。
減損損失とは資産の収益性が低下し、その投資額の回収見込みが立たなくなった場合に一定の条件のもとで投資額を回収可能額まで減額するものです。
商社では海外資源の投資に積極的でしたが、最近の資源価格の下落により将来の回収額の減少が見込まれ、回収可能額の合計が投資額に達しないため減損損失を計上することになりました。原油のようにマーケットがあるものの場合、市場価格の下落が投資の評価に直結するため、今後も原油価格の下落が続けば追加の減損損失の計上も考えられ、資源関連企業の決算動向は今後も予断を許さない状況ということですね。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年2月16日月曜日

[29] 中小企業対策費1,853億円(平成27年度予算)【国内税務】

この予算って多いの?

◆一般会計予算総額は96兆3,420億円で過去最高となり、その恩恵(❓)で中小企業対策費も多少増えたものの…前年比0.2%増の1,853億円にとどまりました。法人減税をはじめとした黒字大企業への優遇に比べ、中小企業に冷たいといわれているアベノミクスの中身があらためて表れた結果という指摘も出ています。
◆予算の中身ですが、日本政策金融公庫の中小事業者の資金繰り対策や、事業再生支援のための1,059億円を計上したほか、中小事業者の地域資源を活用した「ふるさと名物」の開発や海外への販路拡大支援に16億1千万円、中小企業・小規模事業者人材対策事業に10億円、事業承継による新分野への創業挑戦を支援する創業・第二創業促進補助金7億6千万円などを新規計上しています。
◆消費税転嫁対策事業は前年比15.9%減(38億7千万円)となり、10月に予定通り10%に増税されていたら転嫁対策事業はもっと膨らんでいたでしょう。H29年はまた15.9%予算増えるかも?
◆安倍政権の経済政策「アベノミクス」では、大企業が潤うことで次第に中小事業者にも恩恵が滴り落ちる「トリクルダウン」を口上としていますが、まだその兆候は見えておらず、それだけに、本年度予算での中小企業対策費には期待がかかっていました。やはり、今年も中小事業者は引き続き気が許せない舵取りをすることになるかもしれません。

  ***** ひとりごと *****
 じつは日本の全法人の99%は中小法人です。今回の税制改正では欠損金繰越控除や留保金課税をはじめてとして、中小法人は大法人とは異なる扱いになっていると表面上は弱い者の味方!みたいになっていますが、実はその99%のうち70%は赤字法人です。

・・・→ つまり身近な中小法人は減税の実感がほとんどないわけですよね^^それどころかH28年以降も法人税率を引き下げて20%以下にしようっていうことになっているし、もともと法人税を支払っている大法人がさらに優遇されていく仕組みでしょうかねぇ。個人所得税についても金融などは金持ち優遇に。
じゃどこで税金を挽回するのでしょう。それは今年から相続税改正で一般ぴーぽーも相続税が簡単にかかりそうですし、H29/4からは消費税10%ですから、こっちでがっちり税金をとるのでしょう。何も言わない日本人はおとなしすぎる?(参考資料:平成27年度税制改正大綱 H26/12/30自民党公明党)
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】

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2015年2月12日木曜日

[28] 会社法改正のポイント③:M&A編【法務】

2014.6.20に、会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)の一部を改正する法律が成立し、2015.5.1から施行されます。
改正法は、多岐に亘っており、ビジネスに与える影響が大きいと予想されています。最終回である今回は、「組織再編」や「M&A」に影響があるポイントに絞り解説致します。
改正9:支配株主の異動を伴う第三者割当による新株発行には株主総会の普通決議が必要
 募集株式の発行等により支配株主が異動する場合において、有価証券報告書を提出していない公開会社は、株主に通知または公告をし、総議決権の10%以上を有する株主が反対の通知をしたときは、株主総会の承認による決議を受けることが義務づけられました(会社法第206条の2第1項から第3項、第244条の2第1項から第4項)。ただし、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときは、株主総会の承認決議は不要です(同法第206条の2第4項、第244条の2第5項)。なお、定款で株式の譲渡制限を規定しているいわゆる非公開会社では、従来から第三者割当による新株発行に株主総会の特別決議が必要です(同法第199条1項、2項)。

改正10:一定の要件を満たす子会社の株式等の譲渡は株主総会の特別決議が必要
子会社株式の譲渡は、親会社にとって実質的に事業譲渡であるとして、一定の場合に株主総会の特別決議が必要となりました(同法第467条1項2号の2)。
改正11:特別支配株主による株式売渡請求(キャッシュ・アウト)制度
総株主の議決権の10分の9を直接・間接に保有する株主(特別支配株主)が、他の株主に対しその保有する株式の売渡しを請求できる制度が新設されました(同法第179条1項)。
改正12:株主による組織再編の差止請求制度
 組織再編が法令または定款に違反する場合で株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、会社に対し、当該行為を止めることを請求することができるようになりました(同法第784条の2、第796条の2、第805条の2)。
改正13:詐害的な会社分割における分割会社の債権者保護
 債権者を害する会社分割が行われた場合に、承継会社に債務の履行を請求することができない分割会社の債権者(残存債権者)は、承継会社に対し、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるようになりました(第759条4項、第761条6項等)。

会社法改正のポイントは今回で以上です。なお、詳しい内容は、法律の専門家にお問合せ下さい。
【執筆者:公認会計士松澤公貴】Webサイト/
www.jp-kmao.com
<バックナンバー>
会社法改正のポイント①:中小企業編【法務】
http://keiei-economy.blogspot.jp/2015/01/23.html
会社法改正のポイント②:公開会社編【法務】http://keiei-economy.blogspot.jp/2015/02/25.html

2015年2月9日月曜日

[27] 農協の監査【規制】

農協改革の一環として各地域農協の監査を監査法人がやることになるようです。

これまではJA全中がやってきたものを公認会計士の監査に変え、JA全中の監査部門は分離独立して監査法人化するとのことです。実はJA全中にも会計士は30名程度所属し、「農業協同組合監査士」という資格を持つ人も300名ほどいるらしく、それなりの規模の監査法人ができるということです(http://www.zenchu-ja.or.jp/kansakikou/audit.html)。
農協側から見れば、これまでは全中の管理監督の名のもとに無料で監査をしてもらっていたところ、急に組織が独立したからということで有料の監査になるのではないでしょうか。その分全中への上納金は減るのかもしれませんが、これまで無料だった監査が有料になるのはかなり違和感ありそうですね。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年2月5日木曜日

[26] 「資産税」平成27年度税制改正大綱【国内税務】

◆住宅取得資金贈与の非課税枠が見直されます
 直系尊属(★)から贈与された住宅取得等資金の非課税措置については、適用期限が平成31年6月30日まで延長されます。限度額についても住宅取得等に消費税10%が適用される場合とそれ以外の場合に分けた上で、良質な住宅とそれ以外に区分することになります。消費税10%適用の場合、住宅取得に係る契約の締結期間が平成28年10月~平成29年9月までは、良質な住宅取得には非課税枠は最大3,000万円、それ以外の住宅取得には最大2,500万円とする等の改正が行われます。


◆結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置
 内容は次のようなものです。
(1)贈与者である親・祖父母が、金融機関に受贈者である子・孫(20歳~50歳未満)の名義口座を開設し、(2)その口座に結婚・子育て資金を一括して拠出した場合、(3)子・孫ごとに1,000万円を非課税とする。(4)贈与者死亡時の残高は相続財産に加算するが2割加算はない。(5)受贈者が50歳に達する日に口座は終了し残高があれば贈与税を課税する。(6)適用期限は、平成27年4月1日~平成31年3月31日までです。なお、結婚・子育て資金の払出し可能な使途ですが、結婚費用(限度額300万円)・不妊治療・子の保育費・出産費用等が追加される予定です。


◆教育資金贈与の一部見直しと期限延長
  適用期限は、平成31年3月31日まで延長されます。対象である教育資金の範囲に、通学定期代・留学渡航費が加えられます。


◆非上場株式に係る納税猶予の一部見直し
 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予につき、事業承継の円滑化の観点から贈与税の納税義務が生じないような改正がなされます。具体的には、1代目が存命中に、2代目が3代目に株式を贈与した場合(3代目が納税猶予制度を活用して再贈与を受けること)には猶予されていた贈与税の納税義務が免除される等の改正です。
   

  ***** ひとりごと *****
 (★)さて直系尊属って、税金の話をするとよくでてくる言葉ですが…。いったいどの人までをさすのかなぁ❓
答えは、父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことです。養父母も含まれますが、配偶者の父母・祖父母は含まれないんです。ではついでに直系卑属って?… 子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族のことです。養子も含まれます。でも兄弟・姉妹、甥・姪、子の配偶者は含まれません。^^以外と細かい定義‼きをつけてね。 
    
【執筆者:金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】
Webサイト/
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2015年2月2日月曜日

[25] 会社法改正のポイント②:公開会社編【法務】

2014.6.20に、会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)の一部を改正する法律が成立し、2015.5.1から施行されます。

改正法は、多岐に亘っており、ビジネスに与える影響が大きいと予想されています。2回目は、「公開会社」に影響があるポイントに絞り解説致します。
改正6:社外取締役設置義務化の見送り
法制審議会では、コーポレートガバナンス強化の一環として社外取締役の設置を義務化する案も提案されましたが、経済界等からの反対論が根強く、結局義務化は見送られることになりました。しかし、改正法では、一定の要件を満たす公開会社が社外取締役を選任しない場合は、株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明や事業報告への記載が義務づけられます(会社法第327条の2)。
改正7:監査等委員会設置会社の新設
社外取締役の導入を促すため、監査等委員会設置会社制度が新設されました(同法第326条2項)。なお、監査等委員会設置会社とは、監査役・監査役会が設置されない代わりに、3名以上(過半数は社外取締役)の「監査等委員である取締役」によって構成される監査等委員会が設置される会社です。
改正8:会計監査人の選任等の議案決定権限が監査役会に変更
 監査役設置会社において、株主総会に提出する会計監査人の選解任・不再任に関する議案の内容は、監査役会が決定することになりました(同法第344条1項、3項)。

次回も引き続き解説致します。なお、詳しい内容は、法律の専門家にお問合せ下さい。
【執筆者:公認会計士松澤公貴】Webサイト/
www.jp-kmao.com
<関連記事>
会社法改正のポイント①:中小企業編【法務】(
http://keiei-economy.blogspot.jp/2015/01/23.html
会社法改正のポイント③:M&A編 【法務】 (http://keiei-economy.blogspot.jp/2015/02/28-m.html)