2016年5月30日月曜日

[160] 起業動向【国内政経】

2016.5.20に公表された東京商工リサーチの調査によると、2015年の1年間に全国で新しく設立された法人(新設法人)は124,996社にのぼり、6年連続で増加したようです。ただし、第2次安倍内閣発足後の2013年以降では増加率が最も低い結果になっています。

業種別では、訪日外国人観光客数が過去最高に達したこともあり「宿泊業」が前年比58.6%増加したのに対し、太陽光発電などを含む「電気・ガス・熱供給・水道業」は前年より33.3%減少し、再生エネルギー発電関連の設立ラッシュが一服した格好になったと分析しています。
なお、詳細は東京商工リサーチのWebサイトをご覧ください(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160520_01.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年5月26日木曜日

[159] 東芝粉飾決算の余波【国内政経】

3月決算企業の決算発表も出そろいましたが、合わせて監査法人の変更を発表する企業もありました。

今回は東芝の粉飾決算問題で新日本監査法人が金融庁から処分されたことで、新日本監査法人から他の監査法人へ変更するものが多かったように思われます。例えば、富士フイルムHD、王子HD、カルビーなどの有名企業も監査法人を新日本監査法人から別の監査法人に変更しました。
やはり処分を受けたようなしっかりしていない監査法人を変更しないのは癒着しているからではないかと株主からあらぬ疑いをかけられたりするため、監査品質のしっかりした監査法人に変更したほうが無難だという判断なのでしょうが、どの法人でも担当者により良かったり悪かったりする訳で。。。ということです。

【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2016年5月23日月曜日

[158] 第5回 パキスタンへの企業進出の概要【国際政経】

第5回目はパキスタンです^^ (参考資料;JETROアジア進出より)

  Ⅰ進出形態・進出手続き   
 1.現地法人  
  (1)設立申請先 :パキスタン証券取引取引審議会(SECP)
  (2)手続期間 :3日間~2週間(目安)[法人登記成立]。加えて中央銀行の認可取得や税務 登録、地方政府への登録
等が必要。
  (3)活動範囲  :原則、禁止業種を除く、すべての領域で活動が許される。
  (4)会社形態 :非公開株式会社、公開株式会社が一般的。
  (5)責任範囲 :出資比率に応じて責任を負う。

 2.駐在員事務所  
  (1)設立申請先 :投資庁(BOI)
  (2)手続期間 :通常、書類の提出から6~8週間以内(目安)にBOIが審査を行い、決定。
  (3)活動範囲 :営業活動が禁止される。
 課税もされないが、マーケティング活動や連絡など、最低限の活動しか許されないため、指摘されないよう注意する必要がある。                                     
  (4)責任範囲 :本社が負う。

 3.支店/支店 
  (1)設立申請先 :投資庁(BOI)
  (2)手続期間  :6~8週間 (目安)
  (3)活動範囲  :建設などに多い形態で、契約ベースでの事業活動ができるが、商業・貿易活動には従事できない。
(機械設備の輸入は可能)
  (4)責任範囲  :本社が負う。
  (5)撤退手続  :1か月程度要する。


Ⅱ外資規制   
 1.製造業 :原則、外資100%出資可能。最低投資額などの制約はない。
   業種、活動内容、所在地、企業規模などの制約はない。政府の事前認可、業界団体からのライセンス取得は必
要としない。

 2.卸売業・小売業  
     :卸売・小売業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万
ドル以上の投資が求められる。政府の事前認可、業界団体からのライセンス取得は必要としない。

 3.運輸業 :運輸業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万ドル以上
の投資が求められる。 航空業については、パキスタン市民航空庁(CAA)、防衛省への申請、認可が必要とな
る。

 4.運輸業 :運輸業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万ドル以上
の投資が求められる。 パキスタン・エンジニアリング協議会(PEC)、地方の管轄局からのラインス取得が必
要となる。

 5.金融・保険業 
:銀行業は銀行法により、49%までしか出資が認められていない。パキスタン中央銀行の統制を受ける。
   保険業はパキスタン証券取引委員会の統制を受け、51%までしか出資が認められない。
   生命保険の場合は、最低資本金として1億5,000万ルピーが求められる。
   それ以外の保険の場合は最低資本金として、8,000万ルピーが求められる。
   加えて外国企業の場合は200万ドル以上の外貨をパキスタン国内に持ち込むことを求めらる。

Ⅲ労働事情   
 1.一般的採用手段  
   ・非熟練のワーカーは街頭で募集しても容易に集まる。口コミで応募が送られてくることも多い。
   ・中間管理職や営業職ではインターネット、新聞広告を通じて募集。

 2.労働条件  
   (1)労働時間:1日9時間、1週間48時間まで。工場では5時間ごとに30分、6時間ごとに1時間、8.5時
間ごとに2時間のいずれかを選択。ラマダンの時期はシフトをずらすといった対処も必要。
   (2)休暇:工場では日曜が休日。有給休暇は12か月勤務したものに限り年間14日間の取得可能。
   (3)時間外労働:賃金は通常の2倍。

 3.賃金 ・最低賃金は基本給と生活費手当から構成される。金額は州により異なる。
   ・平均賞与は製造業作業員で2.2カ月、非製造業スタッフで1.9カ月。

 4.解雇・人員削減  
   ・労働者クラスは労働法によって保護されており、重大な過失がない限り、解雇はできない。
    マネジャークラスは契約のみの関係であるため、労働裁判所に訴えることはできない。
   ・代表的な解雇方法は
① 自主退職制度:申し込みがあったら断れず、優秀な人ほど抜けていく。 
② 人員削減:業績不振時、給料を1~3カ月支払って退職してもらえるが、次の採用で優先的に雇用する義務がある。
     ③ 一時的解雇:天災などがあった時に、2週間程度休職させる。

 5.労働組合・労働争議  
   ・日系企業では労働争議を経験していない企業が多い。
         ・一つの労働組合で、組合員数は従業員総数の1/5を下回ってはならない。
    同じ企業内の複数の組合の中で、選出された組合が労使交渉にあたる。経営者は自社の労働者でなく、労働
組合が外部から雇った労使交渉専門の交渉人と話し合うことが一般的。

 6.近年の労働需給  
   ・労働者人口(15~64歳)は2010年時点で1億500万人が、2030年には1億5000万人、2055年のピーク
時には1億9100万人となる。
    直近でも労働市場では人が余っており、労働者市場とは無縁な環境。

Ⅳ税制・税務手続き   
 1.法人税・優遇措置  
   (1)法人税率:35%
   (2)優遇措置:2011年7月1日~2016年6月30日の期間に、借入金なし
      で製造業の現地法人を設立する企業には、法人所得分のタックスクレジットが5年間付与される。
      同クレジットは他の税金と相殺される。また、EPZ入居企業は輸出所得に対し、輸出額(FOB)の1%を
納税すれば法人税を代替する。
   (3)その他 :売上高の1%が法人税額を上回る場合、ターンオーバー・タックスとして、同相当額を納税す
る義務が発生する。

 2.個人所得税  
   (1)課税範囲:居住者の場合、パキスタン国内源泉所得と国外所得のいずれも課税対象。非居住者は国内源泉
所得のみ課税対象。
   (2)税率  :累進課税方式により居住者は5~25%。40万ルピーまでは免税。最高税率は250万ルピーを超える
所得に対して課税。
   (3)その他 :日本との間では二国間租税条約に基づき、短期滞在者免税が認めらる。

 3.源泉徴収税(日本向)  
   (1)配当  :10%   (配当受取側の持株割合50%以上の場合5%、25%以上で7.5%)
   (2)利息  :10%
   (3)ロイヤリティー:10%  

           ***「日本パキスタン租税協定」に基づく***

 4.付加価値税:(1)付加価値税:売上税(Sales Tax)として16%(標準税率)
          (2)課税対象:原則、すべての製品、サービスの国内販売および輸入に対して課税される。

 5. 物品税・サービス税  
   (1)課税対象:特定商品・サービスの国内での製造・提供、および輸入に対して連邦物品税が課せられる。    (2)税率  :標準税率 16%

 6.その他特記事項  
   基本投資インセンティブとして、「国内で生産されていない」工場設備、機械類、機器類の輸入に対する関税減
免や売上税の減免が規定されている。


Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)   
 1.送金・決済  
  (1)口座開設: ①居住者・非居住者ともに口座開設可能。
       ②外貨口座は一定制限のもとに開設可能。

  (2)国内販売: ①現地通貨パキスタン・ルピー建てで行われる。輸出加工区[EPZ]内は、ドル建てが可能。
       ②小切手による決済が一般的。

  (3)海外送金: 配当、技術的役務、フランチャイズ料、ロイヤリティーなどに基づく送金が認められている。
中央銀行への各種書類提出が求められる。

2.資金調達  
  (1)主な調達形態 
   〈現地通貨建て〉・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
   〈外貨建て〉  ・地場銀行、外資系銀行からの外貨通貨建て借入は原則認められない。
                  ただし、外貨収益からローンの返済できる立場に輸出業者および間接輸出業者は、国内の商
業銀行を通じ外貨建て借入が認められる。
                 ・親子ローンなどでの調達は可能。
 
(2)借入期間・金利 
   〈現地通貨建て〉・借入金利は10~13%程度。(2012年11月時点)
                   土地を担保として求められることが一般的。
   〈外貨建て〉  ・親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。


Ⅵ貿易・通関制度   
 1.輸出・入規制  
   (1)貿易管理:外国企業でも現地法人を設立したうえで、輸出業務をすることは可能。
   (2)輸入規制:輸入政策令に基づいて輸入禁止・規制品目を定めている。
   (3)輸出規制:輸出政策令に基づいて輸出禁止・規制品目を定めている。

 2.貿易取引(決済)  
   (1)決済通貨:米ドル、ユーロが多い。(円、ポンドでも決済)
   (2)輸出代金支払:信用状(L/C)が一般的。
   (3)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。
    輸出取引の場合、船積後6カ月以内に決済する必要がある。さらに、パキスタンの厳しい外貨繰の関係から、
前払代金を含め、外貨で支払われた輸出代金を3日以内にルピーに替えるように銀行から指示。

3.通関制度 ・パキスタン税関電子化システム(PaCCS)が導入されているが、2011年からウェブ・ベース統一税関(WeBOC)
というシステムが導入された。

4.輸入関税、諸税  
   (1)関税率:鉱工業製品の平均譲許税率は54.6%、平均実効税率13.4%。(譲許率は99.1%)
   (2)その他(輸入時):原則としてすべての輸入品に関税込価格ベースに一律16%の売上高が課税される。加え
て連邦特別消費税(1%)、源泉税(4%)、および中央物品税が課せられる。また、特定の品目に調整関税、
追加関税、特別関税などが課税。

5.特恵関税(日本)  
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象とはならないが、一般特恵関税制
度の対象になり、一般の関税率より低い特恵税率が適用される。(品目によって免税にならないものもある)
Ⅶインフラストラクチャー   
 1.電力 (1)天然ガス66%、水力30%。
   (2)総発電量:95,400GWh (2009年)
   (3)需給状況(産業向け):需要に対して供給能力が圧倒的に不足。
     自家発電機の設置は不可欠、変圧器が必要な場合もある。

 2.エネルギーコスト 〈カラチ〉 
    (1) 業務用電力料金:0.89~25.8ドル/kWh
(2) 業務用ガス料金:163.66~188.32ドル/MMBtu
(3)   レギュラーガソリン料金:0.99ドル/リットル
(4)   軽油:1.09ドル/リットル

 3.陸上輸送  (1)輸送環境(国内輸送):国道・高速道路は国内交通量の80%を占め
     るが、国道は整備されておらず、トラックは主要幹線道路で時速40~50kmしか出せない。
     鉄道は主にカラチ港に貨物を運ぶ際に使用される。
     日系企業は通常ディーラーを使用して販売しているため、国内物流を直接課題として感じることは少ない。

 4.港湾 (1)主要コンテナ港:カラチ港、カシム港
   (2)貨物取扱量:約150万TEU(2011年/12年度)
   (3)主要工業団地への距離・時間:カラチ港からカラチEPZまで35KM、 約1時間。
    (4) 港湾でのハンドリングは悪い。  
   
       
 5.工業団地 (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、
リースとなる。
   (2)リース料:月額0.125ドル/㎡(カラチEPZ、30年)
   (3)整備状況:輸出加工区庁が開発・管理するEPZが10カ所あり、カラチEPZが最大の進出候補。
      EPZは優先的な電力供給、十分な水道供給があり進出すると有利。
      国内販売目的には、「国家工業団地開発経営公社」開発の工業団地が用意されている。
               
                                             以上
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年5月19日木曜日

[157] 中国の「市場経済国」認定【国際政経】

中国は2001年のWTO加盟以来、15年に亘り「非市場経済国」として扱われてきています。WTOのルールによると、「非市場経済国」との貿易について、各国が簡単な手続で反ダンピング税を課すなどして、不当に安い製品の流入を阻止することができるようになっています。EUでは、2015年末時点で発動している反ダンピング税67件のうち、中国製品が52件となっています。

中国を「市場経済国」と認めるかどうかをめぐり、中国と欧米の摩擦が強まっているようです。欧州議会は2016.5.12、中国がEUの市場経済国認定の5基準を満たさない限り、これまでどおり通商関係で「非市場経済国」として扱うとする決議を圧倒的多数で可決しています。一方。中国は2016.12.11にWTO加盟15周年を迎えることになりますが、WTO加盟議定書上は加盟から15年が経過した場合、「非市場経済国」として扱う条項は失効するとの解釈もできると主張しています。
今後の影響や日本の立場にも注目です。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com


2016年5月16日月曜日

[156] 日産と三菱の提携【国内政経】

日産は燃費偽装問題が発覚した三菱自動車に対して2,373億円を出資し、三菱自動車株の34%を取得することで先日合意しました。

日産と三菱自動車は従来から日産が軽自動車の生産を三菱自動車に委託するなど緊密な関係にありましたが、三菱自動車には今後賠償やら罰金やらの負担がどれだけ発生するのか現時点では明確になっておらず、このタイミングで出資を決断することは非常にリスキーだと思いますが、週刊誌の記事によれば日産は三菱のもつ軽自動車の技術とアジア市場でのシェアが欲しかったようだとのことです。
また、ルノー日産グループは三菱自動車を傘下に収めることで販売台数でGMに肉薄するところまでくるようです。これまでの三菱自動車の不正は隠ぺい体質の企業風土に原因があったと言われていますが、この提携によりこれが改善するのか、個人的には企業風土なんてそんなに簡単に改善するわけないので、あと数年後に同じような事件が起きると思いますが。。。


【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2016年5月12日木曜日

[155] 第4回バングラディッシュへの企業進出の概要【国際政経】

第4回はバングラデイッシュです^^(参考資料;JETROアジア進出より)
 Ⅰ進出形態・進出手続き  
 1.現地法人 
  (1)設立申請先 ;商業登記所(RJSC&F)
  (2)手続期間 ;会社設立承認証(Certificate of Incorporation)を商業登記所(RJSC&F)にて取得するのに、通常2
週間~2ケ月程度必要。(目安)前段階での申請書類作成にも1か月程度見ておいた方がよい。
  (3)活動範囲 ;原則、禁止業種を除く、すべての領域で活動が許される。
  (4)会社形態 ;日系企業は通常、非公開株式有限責任会社を選択。
  (5)責任範囲 ;株式出資の範囲内。


 2.駐在員事務所 
  (1)設立申請先 ;バングラデシュ投資庁(BOI)
  (2)手続期間 ;1~6週間程度(目安)。BOI委員会が1か月毎に開催されるため、同委員 会の開催時期による。
原則、委員会の開催直後に許可の連絡がある。
  (3)活動範囲 ;原則として
        ①現地関係先との連絡機能 
②情報収集・提供 
③技術サポート 
        ④市場調査 の範囲内に限定。
  (4)責任範囲 ;本社が負う。

 3.支店 
  (1)設立申請先 ;バングラデシュ投資庁(BOI)
  (2)手続期間 ;1~6週間程度(目安)。BOI委員会が1か月毎に開催されるため、同委員会の開催時期による。
      (3)活動範囲 ;駐在員事務所に認められている活動に加え、BOIに別途申請を行うことに よりバングラデシュ源泉   
所得を得る活動(本社の代理として契約行為等)に従事できる。ただし、BOIに許可された業務の
範囲に限定される。
  (4)責任範囲 ;本社が負う。
Ⅱ外資規制  
 1.製造業 ;原則、外資100%出資可能。生産拠点として進出する場合は、輸出加工区(EPZ)に進出するか否かで手続き
            が異なる。商業登記所(RJSC&F)で法人登記を行ったうえで、EPZの場合は、バングラデシュ輸出加工
庁(BEPZA)それ以外はバングラデシュ投資庁(BOI)で手続きを行う。

 2.卸売業・小売業;
 外国企業による卸売・小売業参入を禁止する明文規定はなく、手続きは輸入・販売拠点を自ら設置し、会社設立後に輸入登録証を取得すれば可能である。しかし、外資100%での現地法人設立による輸入・販売にあたっては、現地雇用を生むかという点が重視されるため、販売活動のみであまりローカル・スタッフを必要としない場合、様々な許認可を取得する際に問題となることも想定される。この場合、将来的な現地製造、一定規模の人材雇用を前提にした法人登記により外資でも許認可を得られる事例もある。

3.運輸業 ;バングラデシュ企業との合弁であれば認められる。外資49%まで出資上限。

 4. 建設業 ;規制業種にあたる大規模インフラ、港湾建設などに関連することがなければ、特段の規制を受けることはな
い。ただし、現状で外資系の建設業の関与は、一部の援助プロジェクトや公共工事に限定されており、日系
企業でも現地法人としての進出事例はない。
当地ではプロジェクトオフィスの形態が存在しないため、援助プロジェクトや公共工事を国際入札で受注し、
支店を当地で設立し、現地の必要経費を海外から送金する形で運営するのがこれまでの事例となっている。

5.金融・保険業; 
   金融業は政府からの特別許可を必要とする。また、下記の通り資本金の最低額が設定されている。
   銀行:20億タカ、一般保険:4億タカ、生命保険:3億タカ、その他特殊保険:1500万タカ  以外:10億タカ


Ⅲ労働事情  
 1.一般的採用手段
   ・新聞広告で募集をかけるほか、労働者クラスの場合は、工場前の貼り紙などで募集。工場労働者は近辺から
雇用することが多い。

 2.労働条件 (1)労働時間:1日8時間+1時間休暇を基本とし、残業手当を支払えば最高10時間まで就労可能、1週48
時間を基本、最高60時間まで就労可。
   (2)休暇:工場では週、1日の休日、商業施設などの場合は1週間に1.5日の休日が認められる。
      有給年次休暇は、12か月間継続して就業としたすべての成人労働者に対し年間18日間付与。
   (3)時間外労働:賃金は基本時間給の2倍。

 3.賃金;  ・最低賃金はEPZ内のオペレーターで月額61~66ドル、EPZ外の非熟練工で3000タカ(約37ドル)、プラス諸
手当
      ・平均賞与は製造業作業員で1.8カ月、非製造業スタッフで1.8カ月

 4.解雇・人員削減 
   ・一時解雇、人員削減のための解雇、身体的・精神的支障を来した場合の解雇がある。それぞれ必要な補償額
を支払う。
    常勤労働者側からの辞職についても、5年以上の就業者は相当の補償を受け取ることができる。
・不正行為による解雇は補償を支払う必要はない。解雇するには、前提として相手に非があるかどうか(窃盗、
無断欠勤等)が重要となる。円満退社のためには警告を出し、輸出加工区の場合は輸出加工区庁にも
    申告しておく。

5.労働組合・労働争議 
・労働組合は議長と書記長の署名のもと、該当地域の労働組合/労働局所長の登録機関に登録。組合員数労者
数の30%以上必要。
          ・地場企業の経営者による労働者の扱いは悪い。それに比べて日系企業のマネジメントは厳しくないため、労
働争議は少ないが、近隣工場で起こった争議が飛び火するケースもある。

6.近年の労働需給 
   ・2010年代は毎年約200万人、2020年代は毎年約130万人の労働者が供給されると予測。
・ ワーカークラスは、工場が密集するダッカ首都圏でも募集をかければ、多くの応募が見込めるが、営業職等では経験豊富な人材は集まりにくい。

Ⅳ税制・税務手続き  
 1.法人税・優遇措置 
   (1)法人税率:37.5%(非上場の場合、上場企業は27.5%)
   (2)優遇措置:輸出加工区(EPZ)8か所に進出した企業は5年間の所得税減免措置あり。
     [1~2年目は免税、3~4年目は50%、5年目は25%免税]地方部に進出した企業にも最大5年の法人税
減免あり。
   (3)その他 :総売上の0.5%が法人税額を上回る場合、最低法人税制度によって、代替的に総売上の0.5%
分を納税する。

 2.個人所得税 
   (1)課税範囲:居住者の場合バングラデシュ国内源泉所得と国外源泉所得のいずれも課税対象。
        非居住者は国内源泉所得のみ課税対象。
   (2)税率  :累進課税方式により免税(20万タカまで)~25%。
     25%の最高税率は年間120万タカを超える所得に課せられる。非居住者は一律25%。
   (3)その他 :自動車を保有する個人に対しては、車種に応じて最大10万タカの自動車税を納税。
    日本との二国間租税条約により、短期滞在者免税が認めらる。

 3.源泉徴収税(日本向) 
   (1)配当  :15% (配当を支払う企業の25%以上の株式保有の場合は10%)
   (2)利息  :10%
   (3)ロイヤリティー:10%  

  ***「日本バングラデシュ租税条約」 に基づく***

 4.付加価値税 
   (1)付加価値税(VAT):15%(標準税率)
   (2)課税対象:国内における物品販売やサービス提供を対象に課税。製品/サービスの輸入時にも課税。

 5. 物品税・サービス税 
   (1)課税対象:特定商品・サービスに対し補足税が課税。
      ①対象商品の輸入時 
②生産時 
③サービスの提供時

   (2)税率 :商品20%、35%、65%、100%、250%、350%、500%
           サービス  10%、15%、35%

 6.その他特記事項 
   輸出企業の場合、輸出額の0.8%を輸出代金の入金口座を管理している取扱い銀行が源泉徴収する。
   縫製品、農産品の輸出企業の場合、輸出所得に対する法人税を同源泉所得が代替するため、最終納税額となる。
   縫製品、農産品以外の業種の場合、輸出所得に対しても通常の法人税を課税するため、源泉徴収税は前払い法
人税として取り扱う。

Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)  
 1.送金・決済 
  (1)口座開設
   ①居住者、非居住者とも口座開設可能。非居住者には一定の制限がある。
   ②外貨口座は開設可能だが、一定の制限あり。
    輸出加工区(EPZ)内の企業については、外貨保有で有利な条件が認められている。
  (2)国内販売
   ①国内での代金決済はタカ建てで行われている。
   ②小切手が最も一般的。

  (3)海外送金
   技術料、ロイヤリティー、サービスフィーは前年度売上(またはプロジェクトコスト)の6%まで送金することができ
る。
   前年度売上(またはプロジェクトコスト)の6%を超える場合、中央銀行や投資庁の事前強化が必要。

 2.資金調達 
  (1)主な調達形態
   〈現地通貨建て〉
    ・地場銀行・外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
   〈外貨建て〉
・ 親子ローンなどの海外借入を行う場合、資金調達計画をバングラデシュ投資庁(BOI)に事前申請する。使途に     
ついては資本財の輸入などに限られ、輸入する物品名や単価、数量まで記載が求めらる。
     返済期間は6年以内。

  (2)借入期間・金利
   〈現地通貨建て〉
・ 貸出金利水準(2012年11月現在)は、銀行によって大幅に異なるが多くの銀行は大企業向け短期ローン(借入期間1年)が14~16%、中小企業向け短期ローンが、15~17%である。

   〈外貨建て〉
・「国際金融市場における該当通貨、該当借入期間の金利と比較した際に適当な利率」と表現されており、明確な定義はなく、その他の条件とともに承認次第となる。
・ 親子ローンも可能。当局から低めの金利設定の誘導がある。

Ⅵ貿易・通関制度  
 1.輸出・入規制 
   (1)貿易管理:外国企業でも現地法人を設立したうえで、輸出入業務をする
    ことは可能。ただし、輸出入に係わる許可証などを複数取得する必要があり、外国企業が手続きを進める難
しさもある。

   (2)輸入規制:輸入登録証を取得する必要がある。
    輸入政策令などに基づいて、禁止品目、規制品目が定められている。

   (3)輸出規制:輸出登録証を取得する必要がある。
    輸出政策令などに基づいて、禁止品目、規制品目が定められている。

 2.貿易取引(決済) 
   (1)決済通貨:米ドルが一般的。
   (2)貿易決済の規制は特に強くないが、L/C決済遅延が頻発している点を注意。
   (3)輸出代金支払:信用状(L/C)が事実上義務となっている。
   (4)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。

 3.通関制度 
   ・船積前検査を受けないで貨物を出荷すると、現地での輸入通関に支障が生じるため、十分注意が必要。

 4.輸入関税、諸税 
   (1)関税率:鉱工業製品の平均譲許税率は39.7%、平均実効税率14%(ただし、譲許率は2.7%と相当低い)
   (2)その他(輸入時):諸税(調整税5%、補足税20~500%、
    付加価値税15%、前払所得税5%、前払貿易付加価値税3%)が課税。

 5.特恵関税(日本) 
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税、無枠措置が
適用される。


Ⅶインフラストラクチャー  
 1.電力 ; (1)天然ガス67%、ファーナス油22%。
   (2)総発電量:37,862GWh (2009年)
   (3)需給状況(産業向け):産業向けの電力供給が優先されているが、
     電力不足は解消されていない。

 2.エネルギーコスト 
   〈ダッカ〉
     ①業務用電力料金:0.05~0.09ドル/kWh
     ②業務用ガス料金:0.03~0.12ドル/㎥
       ③レギュラーガソリン料金:1.08ドル/リットル
     ④軽油:0.74ドル/リットル

 3.陸上輸送;(1)輸送環境(国内輸送):都市周辺の渋滞は年々ひどくなっているが、日系企業の商品輸送は夜間に行われ
るため影響は軽微。
   (2)主要ルート:主に日本に輸出する際のチッタゴン港やダッカ空港への輸送ルートが中心。

 4.港湾 ; (1)主要コンテナ港:チッタゴン港
   (2)貨物取扱量:約139万TEU(2011年)
   (3)主要工業団地への距離・時間:チッタゴン港からダッカEPZまで304KM、約1時間。
    (4) 港湾でのハンドリングは悪い。     
       
 5.工業団地;(1)工業団地購入可否(運用上):土地を含め一般区の工業団地は外国法人による購入可。個人は不可能。EPZ
はリースのみ。
   (2)リース料:月額0.1~01.8ドル/㎡(国内8ケ所のEPZ)
   (3)整備状況:8ケ所のEPZは、電力、水道、ガスが整備されている。EPZ外の建物や土地をリースで確保
し拠点にする動きも出ている。
                                 
                                                                                         以上。                                      
       
     注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、
実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】

2016年5月9日月曜日

[154] 法人実効税率の国際比較【国際税務】

法人実効税率は、以下のように計算がされます。
  実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率)/(1+事業税率)




自民党の税制調査会は2015.12.16の総会で、2016年度税制改正大綱を了承、法人実効税率を2016年度に29.97%(現行32.11%)に引下げるとし、2018年度には29.74%とする方針も同時に打出しています。
上記の状況を受けて、財務省は、同省のWebサイトの頁を2016.4.27に更新しています。更新したもののうち、「法人税など(法人課税)に関する資料」の頁において、「法人実効税率の国際比較」が「2016年4月現在」に更新されています。

詳細は、財務省のWebサイトをご覧ください。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm

【執筆者:公認会計士・税理士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年5月5日木曜日

[153] フランスの少子化対策【国際政経】

子供の日ということで、少子化対策がなかなかうまくいかない日本はさておき、成功しているフランスの少子化対策を紹介します。

1. 家族手当は2人目以上から支給されるが、所得制限はない。子供が20歳になるまで支給される。
2. 子供の数に応じて大幅な所得減税がある。
3. 子供を3人以上育てると親の年金が10%アップ
4. 出産費用はほぼ全て無料。
5. 高校までの学費は原則無料。
6. 事実婚が認められ、婚外子が嫡出子と同等の権利を得ている。
などといった感じです。年金アップは非常に面白い制度だと思いますが、ほとんどが財政負担を伴うものなので、日本でどこまでできるか。

【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2016年5月2日月曜日

[152] 第3回ミャンマーへの企業進出の概要【国際政経】

第3回はミャンマーです^^(参考資料;JETROアジア進出より)
        

     
Ⅰ進出形態・進出手続き  
 1.現地法人 
      (1)設立申請先 ; 投資企業管理局(DICA)企業登記室(CRO)。外国投資法の適用を受ける場合は、ミャンマー投資委員会(MIC)の事前認可が必要。
  (2)手続期間 ; 投資提案の提出から15日以内に受理が判断され、受理された場合はその後90日以内に投資提案を許可するか判断。登記自体は1日で完了。(目安)
  (3)活動範囲 ; 外国資本が入る会社は、外国会社扱いとなり、輸出入や販売などの商業行為は認められない。資源分野の場合事業を管轄する関係官庁へ事前説明の上、活動範囲を協議。
  (4)会社形態 ;  株式有限責任会社が一般的
  (5)責任範囲 ; 株主の責任が基本定款により保有株式(未払込分を含む)に限定される。

 2.駐在員事務所 
  (1)設立申請先 ; 投資企業管理局(DICA)企業登記室(CRO)。
  (2)手続期間 ; 現地法人と同様、投資提案が提出されてから15日以内に受理するかどうか判断され、受理した場合はその後90日以内に投資提案を許可するか判断される。登記は1日。(目安)
  (3)活動範囲 ; 本国の親会社が銀行業・保険業の場合のみ、駐在員事務所の設立が許可される。営業行為は一切認められない。
  (4)責任範囲 ; 本社が負う。

 3.支店 
  (1)設立申請先 ;投資企業管理局(DICA)企業登記室(CRO)。
  (2)手続期間 ;現地法人と同様、投資提案が提出されてから15日以内に受理するかどうか判断され、受理した場合はその後90日以内に投資提案を許可するか判断される。登記は1日。(目安)
  (3)活動範囲 ;本国にある親会社の代理業務を行う。外資規制上、現地法人と同様に商業 行為は認められない。
  (4)責任範囲 ;本社が負う。

Ⅱ外資規制  
1. 製造業 ; 原則、外資100%出資可能。ただし、2013年1月末に外資法細則(以下細則)で示された分野に該当する場合、現地企業との合弁や特別な条件を満たすことが求められる。同分野で合弁する場合、外資の出資は80%まで。(細則以外分野では制限なし)
2.卸売業 ; 細則において、卸売分野への外資参入は「商業省見解」に従うことにより可能。ただし、その具体的記述はなく、2013年2月の時点では、外国企業が「商業」に従事することは運用上認められていない。(合弁も不可)商品の輸入(貿易)に直接従事することも不可。ミャンマー国内販売を検討する場合、輸入販売店・代理店となる現地企業を探す必要性がある。(2013年2月時点)
3.小売業 ;  細則に従い、一定の条件(2015年以降、投資額300万ドル以上等)を満たせば、外国企業の小売業の参入が可能になったと理解される。ただし、細則の複数の条項で「小規模小売業」「ミャンマー企業の既存店舗から近接した場所」への参入は認めていない。案件ごとに、投資企業管理局(DIGA)へ確認要。商品の輸入(貿易)に直接従事することも不可。(2013年2月時点)
4.運輸業 ; ASEANとの経済統合の中で、ASEAN域内企業の投資には2013年までに合弁で70%までの出資比率を認め、運用が始まっている。ASEAN域外の企業にも同様の基準が適用されると思われるので、運輸省、鉄道省と事前協議が必要。なお、合弁相手はミャンマー国際フレート・フォワダー教会など所属の現地企業となる。
5.建設業 ;  建設省からの推薦を得れば、建設会社を設立することができる。この推薦を得るには、民間団体であるMyanmar Engineering Society傘下の Myanmar Board of Engineers の推薦を得る必要があるので同団体と相談。また、細則で「オフィスビル建設、販売」などに該当する場合は合弁のみ。建設省所管分野で「オフィス・商業ビル建設、賃貸」を外資100%で行う場合は、BOTのみ認める。
6.金融・保険業;外国企業は合弁も含め認められていない。(2013年2月現在) ただし、中央銀行の承認により駐在員事務所の開設はできる。

Ⅲ労働事情  
 1.一般的採用手段; ・労働者、高度人材ともに貼り紙、口コミ、新聞広告などを通じて募集。
       ・5人以上の従業員を雇用する会社が新たに雇用する場合は、労働事務所を通じて採用する必要がある。
 2.労働条件 ;(1)労働時間:1日8時間、1週間48時間まで工場では:1週間44時間(連続操業工場の場合は48時間限度)
   (2)休暇:就業日は週6日(工場は日曜日が休日、商業施設等は週のいずれかの曜日)12か月連続して働き、かつ各月24日以上働いた者は連続10日間の有給休暇を取得可能。
   (3)時間外労働:週12時間を超えてはならない。超過時間の標準賃金は2倍、休日出勤時の標準賃金も2倍。
 3.賃金 ;平均賞与は製造業作業員で1.1カ月、非製造業スタッフで1.5カ月
 4.解雇・人員削減; ・雇用者の都合による解雇の場合、勤務年数に応じ補償をする必要がある。
          ・雇用契約書であらかじめ非違行為・懲戒事由を定め、現地慣行に従い3度に渡り正式に警告した上で是正されない場合、退職金を支払わず解雇可。
 5.労働組合・労働争議;・工場などの労働者は最低30人によって組織することができ、30人に満たない工場などは同種の工場などと労働組合を結成できる。
・ ストライキは、官による公共サービスに係わる場合は、少なくとも14日前、官による公共サービスでない場合、少なくとも3日前には使用者および調停機関に対して通知しなければならない。
6.近年の労働需給 ; ・労働可能な人口、また若年労働力も豊富とみられるが、工場周辺、都市部に居住する人口が限られ、ワーカーを十分に確保できない点が課題。
・周辺国に比べ識字率が高い。15歳以上の識字率は、男性94.8%、女性89.9%。また15歳から24歳に限るとその率はさらに高くなる。

Ⅳ税制・税務手続き  
 1.法人税・優遇措置 ;(1)法人税率:25%
       (2)優遇措置:外国投資法に定める要件に基づき設立された企業は、生産・役務の提供開始から5年間、法人所得税免除が認めらる。申請によりミャンマー投資委員会(MIC)が個別に決定。
 2.個人所得税 ;  (1)課税範囲:居住外国人(年度内に183日以上滞在する外国人)はミャンマー国内源泉所得と国外源泉所得のいずれも課税対象。非居住外国人は国内源泉所得のみ課税対象。
       (2)税率  ::給与所得の場合、累進課税方式により1~20%、最高税率は2000万チャット(約23500ドル)以上の所得に課税。
       (3)その他 :適用税率は所得の種類(財産、事業他)によって異なる。
 3.源泉徴収税(日本向); 
   (1)配当  : 0% (投資委員会の認可が必要)
   (2)利息  : 15%
   (3)ロイヤリティー : 20%  

 ***日本との二国間租税条約、不締結***
4.付加価値税 ;(1)付加価値税:商業税として原則5%(奢侈品に対しては8~100%)
      (2) 課税対象:すべての事業者に対して、商品の販売・サービス提供に課税。
5. 物品税・サービス税;
            (1)課税対象:酒類や薬品等特定の品目を製造・販売する際に物品税として、一種のライセンス料を毎年支払う。
      (2)税率:定率ベースでなく、品目・生産量に応じて毎年一定額を支払う。
6.その他特記事項 ; 税務当局による不透明な制度運用や税務手続きに要する時間などの問題が指摘される。所得税法上でも課税対象や範囲が不明瞭な税金が存在する。現地会計事務所などに相談し、事後に問題が生じないような処理を行う。

Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)  
 1.送金・決済  
  (1)口座開設; ①居住者、非居住者とも口座開設可能。
       ②ミャンマーでの口座開設は、居住者、非居住者ともにチャット口座、外貨口座共に開設が認められる。
           ただし、非居住者口座は各種の提出書類が求められる。現在では、外貨口座は民間の商業銀行でも取り扱う。
  (2)国内販売 ;①現地通貨チャット建てで行うことが求められる。
           ②現金決済が主流。小切手も利用される場合がある。クレジットカードなども段階的に利用できるようになっている。
  (3)海外送金 ;ミャンマー国内からの海外送金は厳しい規制がある。配当・ロイヤリティーなどの送金についてはミャンマー投資委員会(MIC)や中央銀行からの許可取得が求められる。

 2.資金調達 ;
  (1)主な調達形態;〈現地通貨建て〉 ・現地通貨建て借入は可能。
        〈外貨建て〉  ・親子ローンなどで調達は可能。
  (2)借入期間・金利〈現地通貨建て〉
・金利は、13~15%程度(2013年1月時点)。土地を担保として求めらることが一般的であり、土地所有権が認められていない外資系企業が借り入れることは実質的に困難。
            
〈外貨建て〉
・ 親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。

Ⅵ貿易・通関制度  
 1.輸出・入規制  
   (1)貿易管理:外国企業による農水産物等の物品取引を目的とした貿易業は認められていない。ただし、製造、サービスに付随して行う輸出入可能。
   (2)輸入規制:原則、すべての品目について輸入ライセンスが必要だが、国際的な取引禁止品目やアルコール飲料など、一部を除き輸入が認められる。
   (3)輸出規制:原則、すべての品目について輸出ライセンスが必要だが、農産物、鉱物の一部を除き輸出が認められる。林産品など事前許可が必要なものもある。
 2.貿易取引(決済) 
   (1)決済通貨:米ドルが一般的。
   (2)輸出入ライセンスを取得していれば可能。
   (3)輸入代金支払:信用状(L/C)、電信送金(T/T)ともに可能。
   (4)輸出代金回収:信用状(L/C)を入手するか、前払のT/T送金が必要。
 3.通関制度 ・輸出通関では、送金の場合は支払通知を必要とする(前払送金を受けている必要あり)点が留意事項。
   ・輸入通関では、ミャンマーの取引銀行(L/C発行銀行)で決済し、船積書類を入手したうえで通関手続きを開始する。なお、輸入ライセンス取得前に当該貨物が相手業者から輸出された場合、ペナルティーが科せられるので注意が必要。
 4.輸入関税、諸税  
   (1)関税率:鉱工業製品の平均上限関税率は23%。(ただし、譲許率は5.1%と相当低い)
   (2)その他(輸入時):輸入関税課税対象額+輸入関税をベースに商業税が課せられる。そのほか、個別の輸入ライセンス取得時には、貨物に応じて輸入ライセンス料が徴収される。
5.特恵関税(日本)日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税・無枠措置が適用される。

Ⅶインフラストラクチャー  
 1.電力 ; (1)水力約75%。
   (2)総発電量:8,548GWh(2010年度)
   (3)需給状況(産業向け):特に乾期はダムの貯水量が減る一方、猛暑のため消費電力も増え、電力需要が満たせなくなるという構造的な問題を抱える。政府は電力不足回避に向け、ミャンマーの民間および外資に電力事業への参入を促している。
 2.エネルギーコスト ; 
   〈ヤンゴン〉
     ①業務用電力料金:0.12ドル/kWh
     ②業務用ガス料金:7.74ドル/1000立法フィート
       ③レギュラーガソリン料金:1.04ドル/リットル
     ④軽油:1.15ドル/リットル
 3.陸上輸送; (1)輸送環境
(2)主要ルート:進出日系企業が活用しうる主要ルートは、ヤンゴン-ミャワディ(タイ国境]ルート。ミャンマー国内側の道路の舗装状況が悪い。
 4.港 湾 ; (1)主要コンテナ港:ヤンゴン港(ヤンゴン港、ティラワ港)。ともに河川港。
    (2)貨物取扱量:約33万TEU (2010年)
    (3)主要工業団地への距離・時間:(狭義の)ヤンゴン港はヤンゴン市街地に近い。ティラワ港はヤンゴンから河口を23km下った地点。

 5.工業団地; (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、リースとなる。
     (2)リース料:月額0.255ドル/㎡(地場工業団地、借地料、管理費含む)月額0.15ドル/㎡(ミンガラドン工業団地、管理費、税込、2048年まで)
           (3)整備状況:インフラ整備が国際水準を満たすミンガラドン工業団地は、空きがない。その他の17の工業団地が進出先候補となるが、配電、水道などのインフラは自ら整備する必要がある。
                                                   以上。
                                      
    
     
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、
実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】