2015年10月29日木曜日

[102] ふるさと納税制度の改正【国内税務】

そろそろ年末が近づいてきましたが、個人事業主の私は自分の所得と相談しつつどの程度ふるさと納税を行うかを検討する時期になりました。今年からふるさと納税制度の改正が行われ、使い勝手がよくなりました。

改正ポイントは大きく2つ
1. 特例控除額の上限が個人住民税所得割額の約1割から約2割に拡充
2. 給与所得者等の場合、確定申告不要
特別控除額の上限が倍になったことにより寄付できる金額が単純に倍になるわけではありませんが、概ねこれまでの上限額の倍になると思って間違いないでしょう。例えば年収600万円で既婚(専業主婦)、子供2人のサラリーマンで7万円程度が寄付の上限となります。
また、給与所得者でも年収が2,000万円を超えていて確定申告が必要な人は従来通り確定申告することになりますし、寄付の相手先は5団体までは
確定申告不要ですが、6団体以上に寄付をすると確定申告が必要となってしまいます。確定申告が不要の場合でも寄付をした自治体に対して申告特例申請書を提出することになりますが、やはり確定申告をしないメリットは大きいのでサラリーマンの方でまだふるさと納税をやっていない方は今から検討してはいかがでしょうか?以下のサイトは寄付先を見つけるのにとても便利です。
http://www.furusato-tax.jp/
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年10月26日月曜日

[101] 経済財政運営と改革の基本方針2015【国内税務】

♪ 政府の方針はいつもの骨太⁈♪
政府の「税制構造改革の基本方針」(骨太の方針)の公表内容は、歳入改革、資産・債務圧縮しながら税制構造改革を進める!です。進行中の成長志向法人税改革は、できるだけ早期に完了することを掲げており、国・地方を合わせた法人実効税率は、2015年度現在の32.11から2016年度に31.33%になる予定ですが、今後の税制改正により法人実効税率20%台まで引き下げることを目指しています。


◆税制の構造改革の内容の特徴
 ①夫婦共働きで子育てをする世帯にとっても、働き方に中立的で、安心して子育てができること
 ②格差が固定化せず、若者が意欲を持って働くことができ、持続的成長を担える社会の実現を目指すこと
 このため、基本方針を踏まえ、速やかに具体的な制度設計の検討に着手し、税制の見直しをできるだけ早期に行うようにし、その際、今後の改革の中心となる個人所得課税については、税収中立の考え方を基本として、総合的・一体的に税負担構造の見直しを行う!としています。
 
◆女性の働きやすさと子育て支援として
女性の活躍推進・子育て支援の観点等を踏まえつつ、多様化する働き方・稼ぎ方等への中立性・公平性を高める。
>具体的には・・・、夫婦共働き世帯に比べ専業主婦世帯が、税制上も社会保険上でも有利である現状は、女性の働き方に対して中立とは言えないことから、配偶者控除の見直しは必至としており、年齢ではなく所得や資産等の経済力を重視しつつ、世代間・世代内の公平を確保するとしています。

◆年金課税と高齢者優遇について
今年(2015年)の税制改正において検討事項として取り上げられていた、年金課税など高齢者に対する優遇税制が見直される模様で
す。
>具体的には・・・、世代間・世代内の公平を確保する観点から、資産格差が次世代における子女教育等の機会格差につながることを避ける必要があることとし、老後扶養の社会化が相当程度進展している実態の中で遺産の社会還元といった観点が重要となっていることを踏まえての見直しも行うようです。
 
◆歳入改革
2017年4月に消費税率10%への引上げの実施予定ですが、それ以外の国民負担増は極力抑制するよう努めると明記しています。今後の動向に注目です。

◆2016年度税制改正に関するアンケート結果を公表
全国法人会総連合(全法連)は、全国の法人会税制委員、役員を中心に実施した「2016年度税制改正に関するアンケート」調査結果を下記のように公表しました。

⦅軽減税率⦆
2016年度税制改正では、消費税の軽減税率の導入が焦点の一つとなると思われますが、どの品目を軽減税率の対象とするかについて、例えば「全ての飲食料品」に軽減税率を適用した場合は1%軽減されるごとに6,600億円が減収になると試算されており、この対象品目の線引きについての回答として、
・「最低限の飲食料品のみにとどめるべき(1)」との回答が46.8%で最も多く、
・次いで「飲食料品全般を対象とすべき(2)」が30.4%、
・「(1)と(2)の中間にする」が12.4%でした。

⦅事業者の軽減税率の計算は?⦆
消費税率10%への引上げに伴い軽減税率が導入された場合、適正な仕入税額の計算には適用税率・税額の記載が必要とされますが、この点についてEU諸国ではインボイス制度を採用していますが、このインボイスの導入については、
・「インボイスを導入すべき」との回答が30.0%、
・「現行の請求書等保存方式の見直し(請求書等に税率区分を追加する等)により対応すべき」が33.7%、
・「わからない」が32.8%となりました。

 ⦅軽減税率が導入された場合の自社で特に懸念される点(2つ選択)⦆
・「煩雑な経理処理」との回答が27.5%、
・次いで「ソフトウェアの変更や新規購入」が20.3%、
・「事務負担の増加による人件費の負担増」が11.7%、
・「軽減税率についての社員教育」が8.1%、
・「適正な価格表示」が6.8%、
・「レジスターなどの新たな設備投資」が3.7%、
・「特に問題はない」が18.4%となっています。
 
⦅中小企業税制の見直し⦆
中小企業に対する法人税の課税ベースの拡大について
・「反対」との回答が48.0%、
・「中小企業について、ある程度課税ベースを拡大することはやむを得ない」が31.2%となりました。

(上記の記載内容は、平成27年10月20日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません)

*** あとづけ ***
《 ご参考までに、各省庁からの税制改正の要望が次のように公表され出揃っていますよ 》
*経済産業省からの要望は・・・、
(1)未来投資を拡大する成長志向の法人税改革、(2)地域経済再生、中小企業・小規模事業者の活性化、(3)車体課税の抜本的見直しの要望(1)では、法人実効税率の早期の20%台引下げや、企業経営者に「攻めの経営」を促すため、コーポレートガバナンスが強化されている上場企業等を対象に、役員給与における多様な業績連動報酬や株式報酬の導入を促進することを求めています。

*内閣府・・・、
「企業版ふるさと納税」の創設や、国家戦略特区で事業を行う法人に対する所得控除制度の創設などを要望。企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、地方公共団体が地方創生、人口減少克服といった国家的課題に対応して行う地方創生事業などを支援するため、これらの事業を行う地方公共団体へ企業が寄附した場合に係る税制上の優遇措置として、現行の損金算入措置に加え、法人税及び法人住民税の税額控除の優遇措置を新たに講じるというものです。

*金融庁・・・、
家計の資産形成の支援と成長資金の供給拡大のため、NISAの更なる利用拡大に向けた利便性向上やマイナンバーの導入に伴う手続きの簡素化、金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)、「国際金融センター」としての利便性向上と活性化の観点から、日本版スクークに係る非課税措置の恒久化などを要望。

*国土交通省・・・、
(1)空き家の発生を抑制するための特例措置の創設、(2)地方を訪れる外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充、(3)自動車車体課税の見直し、などが要望項目として。空き家発生抑制の特例措置は、旧耐震基準の下で建築された居住用家屋を相続し、相続後一定期間内に耐震リフォーム又は除却を行った場合に、標準工事費の10%を所得税額から控除する特例措置を創設するというものです。

*総務省・・・、
中小企業者等に対する少額減価償却資産における取得価額の損金算入特例措置の延長を要望。同特例制度は、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、資産の年間取得価額の合計額300万円を限度に全額を損金算入できるというもので、今年度でこの特例措置の期限切れを迎えることから、同省が延長を求めたものです。

*厚生労働省・・・、
セルフメディケーションを推進する観点から、「市販薬控除」、「検診控除」など、従来の医療費控除を補完する新しい所得控除の創設を盛り込んでいます。セルフメディケーションは国民自らが自己の健康管理を進めるものですが、例えば、「市販薬控除」は、市販薬を年間1万円以上購入した世帯について、総額から1万円を引いた金額を最大10万円まで所得控除の対象にするというもの。現行制度は自己負担額が10万円を超えない場合には対象とならないため、要指導医薬品及び一般医薬品を用いてセルフメディケーションに取り組んでも医療費控除の対象外となる場合があるため、金額的なハードルを下げて使いやすくする狙いがあります。現行の医療費控除との選択適用となります。

*みなさまに直接関係する項目はございましたか^^;。
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】 Webサイト |
http://et-inc.jp

2015年10月22日木曜日

[100] ISOとは【規制】

いまさら、人には聞けないシリーズです。ISOとは、International Organization for Standardizationの略で「国際標準化機構」と訳されています。

国際間の取引をスムーズにするために共通の基準がISO規格により定められており、国際規格がそのまま国内規格となるため、国際取引がない会社にも適用されることになります。ご存知のとおり、ISOにもいくつかの種類があり、目的によってわかれています。
❏ ISO9001(品質マネジメントシステム):製造やサービス提供といった業務プロセスの維持や改善によって、製品やサービスの質の向上を図るためのものです。
❏ ISO14001(環境マネジメントシステム):組織の活動、製品及びサービスの環境負荷の低減といった環境パフォーマンスの改善を実施する仕組みが継続的に運用されるシステム(環境マネジメントシステム)を構築するために要求される規格です。
❏ ISO20000(ITサービスマネジメントシステム):サービス提供者が、提供するITサービスのマネジメントを効率的、効果的に運営管理するための仕組みです。
❏ ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム):個別の問題毎の技術対策の他に、組織のマネジメントとして、自らのリスクアセスメントにより必要なセキュリティレベルを決め、プランを持ち、資源配分して、システムを運用することです。
❏ ISO 22000(食品安全マネジメントシステム):「農場から食卓まで」のフードチェーンのあらゆる組織を対象とした食品安全マネジメントシステムの要求事項を規定した国際規格です。


詳細は、ISO(国際標準化機構)のWebサイトをご覧ください。http://www.iso.org/iso/home/standards.htm
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2015年10月19日月曜日

[99] 中国のGDP成長率7%割れ【国際政経】

本日発表された中国のGDPの成長率が6.9%となり、6年ぶりに7%を切ったようです。

政府発表のものであるためどれだけ信憑性があるかは疑問ですが、そもそも中国ではGDPは各地方政府が数字を出し、それを中央政府がまとめて国全体のGDPにするという方法で集計されています。しかし各地方政府はGDPの数字を上げることで共産党から出世の機会などが与えられるため、水増しして実際より高い数字を提出することが多いと言われています。よって、今日発表されたGDPも、実際より水増しされている可能性があり、実際には4%程度という意見もあるほどです。
そうなると心配なのは日本の景気への影響ですが、日本では中国での反日デモ以来、対中輸出は減少傾向であり、他の国に比べると直接受ける影響は相対的に少ないようです。ただ、中国景気の減速は世界的な資源価格の下落をもたらしており、中国に資源を輸出していたカナダ、ブラジルなどはこの影響をもろに受け景気後退に陥っているようです。さらにこの2か国に対する輸出が大きいアメリカでもカナダ、ブラジルの景気後退の影響を受けて輸出が減少しているとのこと。利上げ議論が出るほど景気が過熱していると言われていたアメリカにも暗雲が立ち込めてくるとアメリカが最大の輸出国である日本にとっても大きな影響があるということで、改めて世界経済は密接に繋がっているのだと感じます。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年10月15日木曜日

[98] 含み損を実現してみてはいかがでしょうか【国内税務】


♪ キャッシュフローが増えるしくみ ♪
経営を考える上でキャッシュフローは重要ですが、キャッシュフローを増加させるには、キャッシュインを増やすか、キャッシュアウトを減らすしかありません。しかし、キャッシュインを増やすには、銀行や取引先などの外部の取引先との交渉が大きなウェートを占めるのでそう簡単にはできません。ところが、キャッシュアウトの減少は自社内でできるものが多く、決断次第で即効性が期待できます。
⇒その一つの方法として税金の圧縮があります。

◆資産に含み損がある場合を考えてみます。
損は含みのままでは何の価値も持ちませんでしたが、含み損を実現損に変えることで節税手段として有力な武器になります。
⇒ 本業で利益が出ているなら、含み損を抱える資産を売却して、 含み損を顕在化させることにより課税所得を圧縮し、税額のキャッシュアウトを抑えることができます。
⇒ 本業で収益を上げ税金を払いながら、含み損を抱える遊休資産を保有し続けるのは、キャッシュフローから見て無駄ですね。「資産を売るのは、価格が高くなるまで待とう」と考える経営者の方もいるかもしれません。しかし、経済環境も時代スピードも変化します。
高度成長時のように資産価格が目に見えて上がる時代ではなくなってきているので、将来の不確定な値上がりに期待をかけるより、現在の安値を有効に利用して税金を抑える方が合理的です。

◆含み損を有する資産を売却すると、以下のような効果が生じます。
*プラス効果(1)…総資産・総負債の圧縮
資産の売却代金で借入金を返済すれば、資産・負債を圧縮できます。そしてこの借入金返済に使えるキャッシュは資産の直接の売却代金だけではなく、含み損の実現化で削減できた税金額も、その分キャッシュが残りますので、借入金返済に回すことができます。また、資産を圧縮できれば、ROA(総資産利益率)は向上し、将来の減損リスクを減らすこともできます。

*プラス効果(2)…将来利益の増加
借入金が減れば支払利息が削減できますし、売却した資産が減価償却資産であれば減価償却費が減少します。それは、将来の損益計算にプラスの効果をもたらします。

*マイナス効果…当期損益の低下、自己資本比率の低下
一方、含み損を実現化すれば、当期の損益計算書上の損益は悪化し(場合によっては 赤字になるかもしれません)、貸借対照表上でも自己資本比率の実態上は既に存在していた事実ですから、含み損の実現化はそれを表面化させたに過ぎないのです。そうしたマイナス事象は隠しておくより表面化させた方が的確な経営戦略が取れるはずです。

重視すべきは表面上の決算書の悪化を糊塗することではなく、当面のキャッシュフローの改善です。経営にはキャッシュフローの観点からも、保有資産を不断に見直していく姿勢が求められます。(記事提供者:税務研究会)

 *** あとづけ ***
土地付き建物を利用したい場合、[購入] すべきか [賃貸]にするべきか・・・。これを借入金で取得する場合はまず注意すべき点があります。土地は費用にならない上、流動比率もさげますので、財務諸表の見た印象はよくありません。
◆たとえば、土地20,000万円・建物10,000万円=借入金30,000万円 で取得した場合。
*借入で取得した場合の経費算入額 ⇒ 10,000万円(建物償却費だけ経費)
*賃貸取得の場合の経費算入額 ⇒ 30,000万円(リース料として全額経費)
(単純な話こうなります。もちろんそのほかに支払利息や登記費用、固定資産税もかかりますが、上記は単純にするため割愛しています)

もちろんこれは一側面ですから、将来値上がりが見込める投資案件かも、相続で使用したい、会社評価を下げたい。。。等、他の目的もあるかもしれませんが、(購入)vs(賃貸)では、基本的にこの構造が根底にあることを認識の上で決定をしていかなくてはなりませんね。大きな買い物ですので含み損、キャッシュフロー、納税、保有リスクを十分に検討してから決定をしてください。                                                              
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】 Webサイト |
http://et-inc.jp  

2015年10月12日月曜日

[97] 世界死刑廃止デー【国際政経】

死刑廃止世界連盟(WCADP・2002年結成・本部パリ)は、毎年10月10日を世界死刑廃止デーと定め、世界各地で死刑廃止に向けた取組みがなされるよう呼びかけています。
2014.12.18には、国連総会「死刑執行停止決議」が史上最多の117ヵ国の賛同を得て採択されました。これは、死刑制度を廃止しようというコンセンサスが、国際社会で醸成されてきていることを意味しています。全世界で3分の2以上の国が死刑を正式に廃止したかその適用を停止しています。米国においても、死刑を執行しない州は増えています。
このような世界的な潮流を受けながら日本は、いまだに死刑を存置している国の一つです。しかしながら、「人を殺したら死刑が当然」「被害者の無念を考えろ」「遺族の悲しみをどう癒やすのだ」などと言う死刑肯定論者の主張もありますが、日本の現状をみると殺人事件の犯人のうち、死刑が確定するのは全体の1%程度と言われており、それ以外の99%は、死刑になっていません。今後どのような議論を経てどのような方向に進むのか注目したいと思います。

2015.10.10の共同宣言は下記をご覧ください。
https://www.eda.admin.ch/content/dam/countries/countries-content/japan/en/JA_Joint%20Declaration%20of%20October%2010.pdf
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2015年10月8日木曜日

[96] 司法取引導入へ【法務】

取調べの録音・録画の義務付けや司法取引制度を導入する刑事訴訟法等の改正案が、2015.8.5に衆議院法務委員会で可決、衆議院本会議で可決され、参議院に送付されています。司法取引は逮捕・起訴された容疑者や被告が他人の犯罪を明かせば、検察が起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりできる制度です。
特に日本版司法取引は、被疑者や被告人が、他人の犯罪事実を明らかにした場合には、検察官がその見返りとして起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりする協議・合議制度と、証人に対し、自分も関わった犯罪行為について、罪に問われないことを条件に、共犯者の裁判でその犯罪行為について証言させる刑事免責制度が柱だそうです。司法関係者による適切な運用が期待されます。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト |
www.jp-kmao.com

2015年10月5日月曜日

[95] 退職金の勤続5年以下は課税額がかわります【国内税務】 

♪役員等で5年以下の勤続ですと退職金の1/2課税はなくなります^^
いつもお世話になっております。

◆節税効果の内容
退職金には節税効果があると喧伝されている理由は次のような事からです。
1.勤続年数に応じて控除をうけることができる!
=退職所得控除額(勤続1~20年…40万/年・勤続20年以上…70万/年)
2.所得金額が1/2になること
退職所得が退職所得控除後“2分の1”になる!
3.所得税は雑所得として一律20%
 


 
=具体例=
・前  提: 退職金の額1,500万円・勤続年数5年
・所得額: 退職所得額650万円
(退職金の額1,500万円-退職所得控除額40万×5年)×1/2
・税額:13万円 (650万円×20%)
★かなり税額は安いですよね。
◆〔渡り〕の人とは
今までこの退職金に対する2分の1課税は、一部外国人役員の給与等の節税に利用される他、特権を持った一部の人が退職後に外郭団体で役員に就任して短期間で退職し、その都度退職金の支給を受ける等の、いわゆる「渡り」と呼ばれる人が上手く利用していました。
◆改正された経緯
役員等の勤続期間5年以下の場合の1/2課税方式は超過累進税率の適用を緩和するためのもので、こういった特殊な事例で適用されることは想定されておらず本旨に反するとの批判が高まり、平成24年度に税制改正がありました。
改正内容⇒ 役員等に就任し、その勤続年数5年以下の当該役員等の期間に対する退職金については、1/2課税は適用しない。なお、平成25年1月1日以後の支給分から適用となっています。
◆すべての法人等に適用
この1/2課税は中小法人であっても適用され、当然使用人から兼務役員になった役員期間も対象です。中小法人では、よく定年前に使用人から兼務役員へ、場合によっては更に本役員(常務等)に昇格をし、5年以下で退職してもらうという事例がよくあります。この場合、役員等の勤続期間が5年以下ですので、役員としての退職金には1/2課税の適用はありませんので、⇒留意が必要です。
そう考えると、5年超勤続させるか、それができない場合には、役員期間の退職金を合理的に算定してできる限り少なくするか等も考えられます。少なくとも、気持や感謝の心だけで根拠なく役員部分の退職金を多くすることは考えものです。

★☆彡 なお、使用人部分の退職金は、勤続期間の有無にかかわらず、2分の1課税は適用されますのでご心配ありません^^
*** あとづけ ***
昨今のCompanyは5年以内であたりまえのように組織編制などして形態を変えており、新設スタートの事業原型が大幅に修正されたり、変更される等が恒常的になっています。会社自体も吸収される、分割される、外国に行く、役員が独立して・・・等で無くなる。

以前のように“今の事業も地道に5年頑張れば必ず目がでます!”なんてことが簡単に言えなくなってきました(笑)
ほんとうそれだけ経済環境はめくるめく変化し、流動性に拍車がかかっています。逆に経営方法を変更した方がいいと思える事はいっぱいあります。

歴史の古い安定した老舗を除くと、新設法人は小回りが利きますので縦横無尽の柔軟的な対応が必要と言えるかもしれません。然るべき5年以内の役員退職で次の会社に移動する!等というのは今後も増えるでしょう。し、実際には退職金の支払いをしない企業も増えることが予想できます。

税法は日本のよき伝統である年功序列による弾痕世代ageの退職金の考えをそのまま踏襲していますが、もしかしたら近い未来は“退職金”という概念すらなくなるかもしれませんね。
余談ですが昨今の大人のひきこもりが、これらの環境へついていけないことがひとつの原因であると指摘されています。しかし残念ながら、嘆きいじけていても、環境は人にあわせようとはしません。ですから人が環境に適合していくか、それを追うのをやめればいいのでしょうから、その人たちは多忙に翻弄されずにゆっくりとり休み、環境とのよき関係を築ける自分を見つけることができれば、また元気になる日が訪れる事でしょう・・・。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】          

2015年10月1日木曜日

[94] 韓国カルテル、取締り強化へ【国際不祥事】

韓国のソウル中央地検は2015.9.14までに、小型ベアリングの価格や流通量を不正に操作したとして、「ミネベア(本社・長野県)」と同社の韓国販売子会社「NMB Korea」が、独占規制及び公正取引に関する法律違反で起訴されています。

韓国では既に、韓国公正取引委員会がベアリング(日本精工、ジェイテクト、不二越、ミネベア)の分野で執行しており、4社総額で約529億ウォンの課徴金を課し、これを検察に告発したものです。なお、同地検によれば、韓国外の企業による国際カルテルについて韓国検察が起訴したのは初めてだそうです。
韓国では、韓国公正取引法(「独占規制及び公正取引に関する法律」)が1981.4より施行され、韓国公正取引委員会が同法の執行を担っています。カルテル行為は、韓国公正取引法19条1項で禁止されており、同条項は、事業者が、価格の決定・維持・変更、取引条件の制限、取引地域の制限など、同条項所定の不当に競争を制限する一定の行為について、契約、協定、決議その他いかなる方法によるかを問わず、合意することが禁止されています。
日本企業は今後も留意が必要ですね。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】Webサイト |
www.jp-kmao.com