2016年4月28日木曜日

[151] 世界のパスポートランキング【国際政経】

GWを目の前にして、面白いランキングが発表になっていますのでご紹介します。
カナダに本拠を置くコンサルティング会社アートン・キャピタルが2015.3月に「Passport Index」を開設し、データを最新版に更新し、更に機能を加えた2016年版の公開を発表しました。ランキングは、199の国・地域を対象とし、ビザ不要または、事前の手続なく到着時のビザ取得で入国できる国・地域の数を集計した「ビザ自由度指数」に基づいています(RANK1~RANK93)。日本のパスポートでビザなし渡航できるのは153ヶ国であり、ギリシャ、アイルランドと並ぶRANK5に位置づけられています。


PASSPORT POWER RANK: 1
◆Germany◆Sweden

PASSPORT POWER RANK: 2
◆Finland◆Italy◆Switzerland◆France◆Spain◆United Kingdom

PASSPORT POWER RANK: 3
◆Denmark◆Netherlands◆Belgium◆South Korea◆Norway

PASSPORT POWER RANK: 4
◆Singapore◆Luxembourg◆Austria◆Portugal◆United States of America

PASSPORT POWER RANK: 5
◆Greece◆Ireland◇Japan


詳細は、アートン・キャピタルのWebサイトをご覧ください。https://www.passportindex.org/byRank.php

【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年4月25日月曜日

[150] 歪んだ資本主義【国内政経】

三菱自動車の燃費データ不正が世間を騒がせていますが、三菱自動車は過去にも2回リコール隠しが発覚し、近年何とか経営再建にこぎつけただけに今回のニュースは「またか」と思った人も多いのではないでしょうか。

そもそもリコール隠しの時にも会社は相当のダメージを受けましたが、三菱グループが支援し再建を行いました。通常であれば度重なる不正により市場での信頼が失墜すれば資本市場からの退場を促されるのが自然な流れです。ただ、三菱自動車は三菱グループの1社であり、株主に三菱グループの企業が多いこと、グループからのさまざまな支援を受けることにより不自然に生き残ってしまったのです。それゆえ企業体質の改善も行われず、再度同じ過ちを犯してしまったのでしょう。
資本市場も10年前と現在では状況も変わってきています。外国人株主も増え、三菱グループ各社にも三菱自動車を支援する経済的合理性が求められると思います。これまでのように三菱グループだから救済するという訳にはいかないと思うので、今後の動向が注目されます。

【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2016年4月21日木曜日

[149] 第2回ラオスへの企業進出の概要【国際政経】

第2回はラオスです^^(参考資料;JETROアジア進出より)
I.進出形態・進出手続き   
1.現地法人  
  (1)設立申請先 ;商工業機関(中央省庁・地方関係窓口)の投資ワンストップサービス
  (2)手続期間 ;一般事業は10~13公用日以内に企業登録証発行。その後7公用日以内に社印の審査を実施。(目安)
  (3)活動範囲 ;原則、国内外の投資は区別されないが、実際は諸官庁との交渉に依るためケースバイケースで異なる。外国企業による土地所有は認められていない。
  (4)法人形態; ①法人(Company) 、有限法人(Limited Company)、公開法人(Public Company)に分類される。
   ②合名会社(Partnership Enterprise) 、一般(General)合名会社、有限(Limited)合名会社に分類される。
   ③個人事業者
  (5)責任範囲 ;法人形態により異なる。



2.駐在員事務所  
 (1)設立申請先 ;計画投資省ワンストップサービス事務所
 (2)手続期間  ;申請の受理から5公用日以内に登録証が発給される。(目安)
 (3)活動範囲 ;①投資に関する情報収集と可能性調査、②政府と外国の親会社との間の連絡業務、③政府との覚書締結、④契約の実施監督に限られ、事業活動を行う権利はない。認可期間は1年間で2回延長が可能。
 (4)責任範囲 ;本社が負う。

3.支店  
(1)設立申請先 ;商工省ワンストップ・サービス事務所
(2)手続期間;申請の受理から15公用日以内に登録証が発給される。(目安)、登録証の取得後に別途、税務登録手続きなどが必要。
(3)活動範囲; 親会社の代理としての事業活動を行うが、事業分野は銀行、航空会社、コンサルタント、保険会社に限定。
(4)責任範囲 ;本社が負う。

II.外資規制   
1. 製造業; 原則、外資100%出資可能。コンセッション(免許)を伴う事業への投資の場合は、覚書(MOU)もしくは契約に出資比率の上限が規定されている場合はそれに従う。 また、コーヒー加工工場への投資については、外国企業は20%以下までに制限されている。
2.卸売業; ラオス国籍投資家とのジョイントベンチャー(JV)であれば可能だが、その出資比率は不明。卸売業の中のなかでも「小規模」なものについては、ラオス国籍者のみに認可される。(規模の定義は不明)
3.小売業; ラオス国籍投資家とのJVであれば可能であるが、外資の出資比率は25%未満とされている。小売業の中でも「小企業」なものについては、ラオス国籍者のみに認可される。(規模の定義は不明)なお、ハイパーマーケットなど近代的商業施設の建設に対する投資可能。
4.運輸業; ラオス国籍投資家とのJVであれば可能であるが、外資の出資比率は最大49%まで。倉庫事業についても同様。   商工省での企業登録、財務省での納税者番号取得に続き、中央銀行で資本輸入許可を取得する必要がある。
5.建設業; ラオス国籍投資家とのJVであれば可能であるが、外資の出資比率は最大49%まで。公共事業運輸省にて、出資比率などについて事前に交渉する。その後、商工省での企業登録、財務省での納税者番号取得に続き、中央銀行で資本輸入許可を取得する必要がある。
6.金融・保険業; 銀行業は外資100%出資が可能。保険業は出資比率49%まで。中央銀行の許可が必要。

III.労働事情   
1.一般的採用手段; ・労働者:工場前の貼り紙や関係者への呼びかけで募集。
       ・高度人材:国内の大学などを通じて採用するケースが多い。
2.労働条件 ;(1)労働時間:1週間6日、1日8時間または48時間を超えてはならない。
    (2)休暇:有給休暇は1週間1日、1年以上の雇用につき15日間取得可能。
    (3)時間外労働:1月45時間、1日3時間以下。賃金は150%、深夜(22時~翌5時)は200%、休日出勤時は250%。深夜は300%。
3.賃金  ; ・最低賃金月額62万6000キープ(約78ドル)に諸手当が加わる。
   ・平均賞与は、製造業作業員で0.9カ月、非製造業スタッフで0.9カ月
4.解雇・人員削減  
   ・解雇によって雇用契約を終了させることができるのは、①当該労働者が必要な専門技能を欠いている。もしくは労働者が良好な健康康状態になく労働を継続できない場合、②使用者が労働者数を減少させる必要があると考えた場合。いずれの場合も事前通知義務、補償金(退職金)の支払い義務あり。
   ・労働者に重大な過失があった場合は、使用者に補償金を支払うことなく雇用契約を終了させることができる。その場合は3日前までに通知する必要がある。5.労働組合・労働争議  
   ・労働者・労働組合・労働代表者による、使用者が労働法、事業所就業規則、雇用契約を遵守していない、と考えれる行動をとったとの苦情申し入れ後15日を経過しても合意に至らない場合は、調停のため労働監督機関に争議を付託することができる。
   ・労働監督機関が15日以内に争議を解決できなかった場合は、人民裁判所に提訴することになる。
6.近年の労働需給  
   ・タイやベトナムなどの周辺国と比べると絶対数の規模が小さく、大量の労働者を必要とする事業は不向きで、50~300人規模の事業に適す。
・ 特に都市部では教育レベルの向上に従い、サービス業の人気が高くなると見られ、工業分野と競合することも考えられる。

IV.税制・税務手続き   
1.法人税・優遇措置  
   (1)法人税率:24%
   (2)優遇措置:新投資奨励法による法人税免除については、投資奨励レベルによって、1~10年の免除期間が定められている。奨励レベルは、投資地域と事業内容で9段階に分かれる。経済特区では投資額に応じ上記水準を上回る優遇措置。
   (3)その他 :赤字は3年間繰越可能。会計監査機関や独立会計会社の証明が必要。

2.個人所得税  
   (1)課税範囲:居住者の場合、ラオス国内源泉所得と外国源泉所得のいずれも課税対象。非居住者は国内源泉所得のみ課税対象。
   (2)税率 ; :給与所得の場合、居住者・非居住者とも累進課税方式により5~24%。ただし、月額ベースで100万キープまで免税。
   (3)その他 :適用税率は所得の種類によって異なる。株式や不動産の売却、利息、配当については10%、不動産などの賃貸収入は15%

 3.源泉徴収税(日本向)  
   (1)配当  :10% 
   (2)利息  :10%
   (3)ロイヤリティー:5%  


        ***日本との二国間租税条約、不締結***

4.付加価値税  
   (1)付加価値税(VAT):10%(標準税率)
   (2)課税対象:原則すべての製品の国内販売やサービス提供を対象に課税。製品/サービスの輸入時にも課税。

 5. 物品税・サービス税  
   (1)課税対象:自動車やたばこ、ゲーム機器、燃料などの特定商品、ディスコやカラオケ、マッサージなどの特定サービスに対して、個別物品税(Excise Duty)が課税。
   (2)税率  :四輪車25~150%、たばこ60%、車両用燃料10%、ディスコ、カラオケのサービス料(VAT不含)に60%

 6.その他特記事項  
   付加価値税(VAT)登録をしていない中小規模生産者を対象に「請負税」として、事業種類(生産、商務、サービス)により、年次売上額に応じて0~7%が徴収される。

V.金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)   
 1.送金・決済  
  (1)口座開設 
   ①居住者・非居住者ともに口座開設可能。
   ②外貨口座は、ドル、バーツの開設が可能。

  (2)国内販売 
   ①現地通貨キープ建てで行うことが求められる。(ドル、バーツ建てもある)
   ②小切手もしくは送金による決済が一般的(地方では現金決済も多い)

  (3)海外送金 
   個人、法人は利益もしくは資本を外国にラオス国内の銀行を通じて送金可。
   1億キープ以上の送金をする場合は、中央銀行の許可が必要となる。
   外貨送金も可能だが、その際にはインボイスや税務支払の証明書が必要。

 2.資金調達  
  (1)主な調達形態 
   〈現地通貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
   〈外貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの外貨通貨建て借入は可能。
    ・親子ローンも使われているが、ラオス中央銀行から許可取得が必要。

  (2)借入期間・金利 
   〈現地通貨建て〉
   ・ラオス国内で現地通貨建て資金調達を行う場合、借入期間1年で金利は、 7~9%程度。(2012年12月~2013年1月時点)

   〈外貨建て〉
   ・ラオス国内でドル調達を行う場合、借入期間1年で金利は4.2~8.0%程度。(2012年12月~2013年1月時点)
   ・親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。

VI.貿易・通関制度   
 1.輸出・入規制  
   (1)貿易管理:外国企業でも、商工省の企業登録局に登録すれば、輸出入業務を行うことができる。
   (2)輸入規制:兵器、芥子種子・大麻などの一部の品目を禁止。エンジン付き車両などの輸入規制品目は事前許可が必要。
   (3)輸出規制:50年以上経過した仏像などは輸出禁止。籾米などの輸出規制品目は事前許可が必要。

 2.貿易取引(決済)  
   (1)決済通貨:米ドルが一般的。
   (2)外為取引は自由化されており、特に規制なし。
   (3)輸出代金支払:信用状(L/C)も可能だが、電信送金(T/T)が一般的。
   (4)輸出代金回収:信用状(L/C)も可能だが、電信送金(T/T)が一般的。

 3.通関制度 ;タナレーン(タイとの陸路国境)において、唯一「電子通関システムASYCUDA」が導入されており、それ以外の国境ではIM4と呼ばれる手続をふむ。

 4.輸入関税、諸税  
   (1)関税率:2013年1月のWTO加盟に際し、平均上限関税率として農産物19.3%、工業製品18.7%とすることで合意。
   (2)その他(輸入時):付加価値税(10%)、燃料など特定の物品の 輸入に関わる個別物品税が課税される。
 5.特恵関税(日本)  
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税・無枠措置が適用される。


VII.インフラストラクチャー   
   
 1.電力      (1)電源構成は殆どが水力。
   (2)総発電量:8,449GWh(2010年)
   (3)需給状況(産業向け):豊富な水力資源がもたらす電力により、周辺国に比べると比較的安定した電力が供給されている。 ただ、送電網の未整備により、地方への供給は不安定であり、また乾期になると需要に供給が追いつかず、タイから輸入することになる。

 2.エネルギーコスト 〈ビエンチャン〉 
      ①業務用電力料金:0.063ドル/kWh(22kV)、 0.074ドル/kWh (0.4kV)
     ②業務用ガス料金:1.33ドル/kg
       ③レギュラーガソリン料金:1.347ドル/リットル
     ④軽油:1.189ドル/リットル

 3.陸上輸送   (1)輸送環境
(2)主要ルート:首都のビエンチャンから、バンコクまでを結ぶルートが、物流の主要ルート。タイ側、ラオス側ともに道路事情はよく、国境での積み替えも不要となり、頻繁に利用されている。主に、バンコクのレムチャバン港などを経由しての輸出入の際に利用されるが、この国内の輸送コストが全体を引上げており、周辺国に比べると輸送コストが高くなっている。

 4.港湾   ラオスは内陸国のため、港湾をもたない。現在外資企業の多くはビエンチャンに進出しており、輸出入にはタイのレムチャバン港を利用している。将来的には、ベトナムのダナン港やハノイとダナンの間に位置するブンアン港(ビエンチャンから最短距離)などの利用も期待される。

 5.工業団地 (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、リースとなる。
   (2)リース料:月額0.038ドル/㎡(サワンセノン経済特区、2ha未満、75年)
       月額0.028~0.039ドル/㎡(ビエンチャン近郊のビタパークSEZ、75年)
   (3)整備状況:国内に10ケ所のSEZが認可され、稼働しているのは5ケ所。日系企業の投資候補となるビタパークSEZとサワン・セノSEZでは、電気、水道など基本的なインフラは整備されている。

                
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年4月18日月曜日

[148] 「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査【国内不祥事】

東京商工リサーチは2016.4.14に、2015年度に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は58社(58件)で、2007.4月の調査開始以来、年度ベースで最多を記録したと発表しています。

<調査結果要約>
❏ 年度別推移 2015年度は過去最多を更新
❏ 年度別3月の開示社数 2015年度は前年の2倍
❏ 内容別 「粉飾」が最多の22社
❏ 発生当事者別 「子会社・関係会社」が26社でトップ
❏ 市場別推移 東証1部が29社でトップ
❏ 産業別 製造業が21社で最多

詳細は、東京商工リサーチのWebサイトをご覧ください。http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160414_01.html
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年4月14日木曜日

[147] 初の女性会長【国内政経】

2016.4.11に日本公認会計士協会が、初の女性会長として関根愛子さんが選出されたことを公表しました。

男社会と思っていた会計士業界もついに女性が会長になる時代が来るのは世の趨勢ですね。最近不祥事ばかりが目につく業界ですので、明るい話題はうれしいです。ぜひ女性ならではの能力を活かして頑張ってほしいものです。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2016年4月11日月曜日

[146] 第1回カンボジアへの企業進出の概要【国際政経】

アジア6ケ国の経営形態の概要を追って記載します。参考資料;JETROアジア進出より
第1回はカンボジアからです^^


I.進出形態  
1.現地法人 
  (1)設立申請先
   ①特別経済区(SEZ)で優遇措置を受ける場合→経済特別区委員会(CSEZB)
   ②SEZ外で優遇措置を受ける場合→カンボジア投資委員会(CIB)
   ③優遇措置を受けない場合→商業省ビジネス登録オフィス
  (2)手続期間
   2週間~1か月(目安)  商業省登記 
  (3)活動範囲
外国企業による出資が51%以上の場合、会社法上は外国企業扱いだが、原則、内国法人(カンボジア国籍の会社)と同様の業務ができる。
  (4)会社形態
   私的有限責任会社、公開有限責任会社の2種類。
  (5)責任範囲
   出資範囲内で責任を負う。
2.駐在員事務所 
  (1)設立申請先 商業省ビジネス登録オフィス
  (2)手続期間 5営業日(目安)
  (3)活動範囲
①親会社の代理として顧客にコンタクト
②商業関連情報の調査と親会社への提供
③市場調査
④展示会もしくは事務所内におけるサンプル・ 商品の展示、展示会出展用物品購入・保管
⑤事務所の賃借と従業員の雇用
⑥親会社の代理としての顧客との契約行為
  (4)責任範囲
   法的責任や債務は親会社が負う
3.支店 
  (1)設立申請先 商業省ビジネス登録オフィス
  (2)手続期間 5営業日(目安)
  (3)活動範囲
   ・外国企業に禁止されている業務を行わない範囲で、内国企業と同様に、製品。
   ・サービスの販売・製造、加工などの業務を行うことができる。
  (4)責任範囲 法的責任や債務は親会社が負う。

II.外資規制  
1.製造業
外資100%出資可能。略すべての業種は投資適格プロジェクトの対象。最低投資額の条件(業種により10~100万ドル)5,000万ドル超投資の場合、カンボジア評議会を通じ、閣僚評議会の認可要。
2.卸売業・小売業 
   税制上の優遇措置なし。支店形態でも現法と同様に従事できる。
3.運輸業 
   外資100%出資可能。公共事業運輸省よりライセンスを取得すること。
4.建設業 
   外資100%出資可能。不動産開発等を除き、投資適格プロジェクトの対象。
5.金融・保険業 
   外資100%出資可能。税制上の恩典なし。最低資本金制度あり。

III.労働事情  
1.一般的採用手段 
   ・労働者:経済特区で貼り紙、地方の村長と相談して確保。
   ・高度人材:ウェブサイト、新聞、ラジオなどで募集、人材紹介会社を利用。
   ・日本語人材:王立プノンペン大学、NGOなどからの紹介。
   ・経済特区内企業の場合、経済特区管理会社のサポートを受けるのが一般的。
2.労働条件 
   (1)労働時間:1日8時間、1週間48時間まで。
   (2)休暇:週休は最低1日(24時間)連続して与える必要があり、週6日を越えての労働は不可。1カ月当たり1.5日の有給休暇取得権利。
   (3)時間外労働:賃金5割増し、深夜(22時~翌5時)および休日出勤は10割増し。
3.賃金 
   ・最低賃金月額61ドル(繊維、縫製、製靴企業)に加え、皆勤手当(10ドル)通勤・在宅手当(7ドル)、健康手当(5ドル)といった義務的給付あり。
   ・平均賞与は、製造業作業員で0.8カ月、非製造業スタッフで1.4カ月。
4.解雇・人員削減 
   ・有期雇用契約の解除(解雇)の条件は、
    ①被雇用者に重大な過失があった場合
    ②雇用者・被雇用者の双方が合意し、労働監査官(Inspector)立会いの下で書面にサインした場合
    ③病気や死亡、災害などのコントロール不能な事態が発生した場合
   ・無期雇用契約の場合、事前通告を前提に、従業員の資質や技術(能力)を理由に契約を終了することも可能。ただし、実態面においては客観的に資質や技術面での問題を証明するのは難しい。
5.労働組合・労働争議 
   ・最小8人を常時雇用するすべての企業や団体においては、すべての労働者の代表として、組合代表委員を選出する必要がある。ただし、実態では労働組合を組織せず、交渉窓口である「労働者代表」を立てるのみで対応している企業が多く、多くの進出日系企業でも労働組合は存在しない。
   ・労使間での紛争の際には、労働者傘下の仲裁委員会に仲裁を求めるのが望ましい。ただし、仲裁決定を拒否する場合に一方の当事者がストライキなどを行う権利が保障される。
6.近年の労働需給 
   ・内戦の影響などによる教育普及の遅れから、教育水準の高い人材不足が懸念。
   ・進出企業によれば、縫製業を中心とした外資の進出増にエンジニアや管理職等の高度人材の供給が追いつかず、地方部(パペット、ポイペト等)での人材採用がとりわけ困難。

IV.税制・税務手続き  
1.法人税・優遇措置 
   (1)法人税率:20%
   (2)優遇措置:一定の条件を満たす適格投資案件(QIP)については、最大9年間の法人税免税が認められる。
   (3)その他 :最低課税として売上高に対する1%の支払い義務(外形標準に相当)あり。法人税額(利益に対する20%)と比べ、いずれか高いほうを支払う。(QIPステータスを有する企業は適用対象外)
2.個人所得税 
   (1)課税範囲:居住者の場合(給与税として)カンボジア国内源泉所得と国外所得のいずれも課税所得。非居住者は国内源泉所得のみ課税対象。
   (2)税率  :累進課税方式により0~20%。20%の最高税率は年間1,250万リエル(約3,097ドル)を超える部分に適用。非居住者は一律20%。
   (3)その他 :企業が支給する住居や食事については一律20%の付加給付税(FBT)が課せられる。
3.源泉徴収税(日本向) 
   (1)配当  :14% (操業開始年からの3年間は7%)
   (2)利息  :14%
   (3)ロイヤリティー:14%  
   ***日本との二国間租税条約、不締結***
4.付加価値税 
   (1)付加価値税(VAT):10%(標準税率)
   (2)課税対象:国内における物品販売やサービス提供を対象に課税。公共郵便、交通サービスは非課税.         
5.物品税・サービス税 
   (1)課税対象:特定商品・サービスに対して物品・サービス税が課税。
   (2)税率  :娯楽・たばこ10%、飲料20%、航空券10%、国内・国際通信3%、石油製品、大型自動車・同部品30%
6.その他特記事項 
   法人/個人へのサービス費用などの支払に対し、源泉徴収の義務がある。コンサルタント費、ロイヤリティー、利息などについては15%、動産・不動産の賃貸収入については10% など

V.金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)  
1.送金・決済 
  (1)口座開設
   ①居住者はカンボジア国内で口座開設は可能。
   ②外貨建て口座開設も可能。
  (2)国内販売
   ①ドルが幅広く国内決済で利用。
   ②小切手による決済が一般的。
  (3)海外送金
   外国為替法に基づき、公認銀行を通じた取引である限り、外国為替取引には一切制限なし。ただし、10万ドル以上の送金については、カンボジア中央銀行への届け出義務がある。
2.資金調達 
  (1)主な調達形態
   〈現地通貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
    ・国内経済がドル化しているため、現地通貨建ては稀。
   〈外貨建て〉
    ・親子ローン、もしくは海外銀行からのオフショア借入によるドル建て資金調達が一般的。なお、地場銀行、外資系銀行からドル建て借入は可能だが、国内の商業銀行からの借入は金利が割高。
  (2)借入期間・金利
   〈現地通貨建て〉
   ・カンボジア国内でリエル調達を行う場合は、借入期間1年で金利は、11~24%程度。(2012年1月時点)
   〈外貨建て〉
   ・カンボジア国内でドル調達を行う場合、借入期間1年で金利は11~19%程度。(2012年1月時点)
   ・親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。
   ・海外銀行からのオフショア借入は、貸出銀行内におけるカンボジアのカントリーリスクに対する格付が低いことから、親会社保証をつけることで調達金利を引き下げる手段が取られている。

VI.貿易・通関制度  
1.輸出・入規制 
   (1)貿易管理:外国企業の輸出入業に対する制限はなく、商業省に登記したすべての企業は自由に輸出入業務を行うことができる。
   (2)輸入規制:一部の例外を除いて撤廃済み(タイヤなどの中古品、右ハンドルの自動車などが禁止品目)。薬品等では輸入許可が必要。
   (3)輸出規制:骨董品、麻薬などの輸出禁止/規制品目を除き自由。天然ゴムなど一部の商材に関して原則10%以下の輸出税が課せられる。縫製品については、商業省より輸出管理費の徴収。
2.貿易取引(決済) 
   (1)決済通貨:米ドルが一般的。
   (2)外為取引は自由化されており、特に規制なし。
   (3)輸出代金支払:信用状(L/C)が一般的。
   (4)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。
3.通関制度 
   貿易・通関手続きの簡素化のために、「電子通関システムASYCUDA」と新しい通関申告書である「単一管理書類SAD」が導入され、シハヌークヴィル港やプノンペン国際空港などの税関で運用されている。
4.輸入関税、諸税 
   (1)関税率:原則として0%、7%、15%、35%の4段階。鉱工業製品の平均譲許税率は17.7%、平均実効税率10.3%(譲許率100%)
   (2) その他(輸入時):輸入関税に加え、特別税(自動車、バイクなど、アルコール類、石油・同製品など)および付加価値税(VAT)が課せられる。
5.特恵関税(日本) 
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税・無枠措置が適用される。

VII.インフラストラクチャー  
1.電力 
   (1)火力34%、水力2%、タイ・ベトナムなどからの輸入64%
   (2)総発電量:1,018GWh 輸入,1829GWh (2011年)
   (3)需給状況(産業向け):ベトナムとの国境付近の経済特区(SEZ)では、入居企業独自による自家発電の設置が不可欠。南部のシハヌークビルでも自家発電装置が必要。
2.エネルギーコスト
   〈プノンペン〉
     ①業務用電力料金:0.216ドル/kWh
     ②業務用ガス料金:1.33ドル/kg
      ③レギュラーガソリン料金:1.26トル/リットル
     ④軽油:1.21ドル/リットル
3.陸上輸送 
   (1)輸送環境(2)主要ルート:ホーチミンからプノンペンを通り、バンコクまでを接続する南部経済回廊が最重要。道路状況は良好で片側一車線であるが乗用車であれば、平均時速80~90km走行可能。
4.港湾 
   (1)主要コンテナ港:シハヌークビル港
   (2)貨物取扱量:約240万トン(2011年)
   (3)主要工業団地への距離・時間:プノンペンから国道4号線で230km, 約4時間。
5.工業団地 
   (1)工業団地購入可否(運用上):100%外資系企業による土地・工業団地の購入は不可で、リースとなる。
(地場企業と合弁なら可能)
   (2)リース料:月額0.091ドル/㎡(プノンペン経済特区、最大50年、延長可)
   (3)整備状況:国内に25か所の経済特別区が認可され、現在7か所が稼働中。電力、給水、下水、排水処理など基本的なインフラは供給されるが、電力などは自家発電設備を備えているところは限られるなど整備水準には差がある。日本政府が開発支援をしたシハヌークビル港SEZは日本企業の設計、施工による質の高いインフラが整備されている。
                                      
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

2016年4月7日木曜日

[145] 2015年度「コンプライアンス違反」企業の倒産【国内不祥事】

2016.4.8東京商工リサーチが公表した2015年度(2015.4月-2016.3月)の全国企業倒産状況によると、企業倒産(負債総額1,000万円以上)は前年度比9.0%減の8,684件、負債総額は同8.9%増の2兆358億500万円だったそうです。

産業別倒産件数は、10産業のうち金融・保険業を除く9産業で前年度を下回り、増加した金融・保険業は49件(前年度比28.9%増)で、年度としては2年ぶりに前年を上回っています。一方、建設業は1,690件(同9.7%減)、製造業1,272件(同5.4%減)、小売業1,189件(同4.8%減)、いずれも7年連続で前年度を下回っています。

詳細は、東京商工リサーチのWebページをご覧ください(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160408_07.html)
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

2016年4月4日月曜日

[144] タックスヘイブン【国際税務】

最近話題になったパナマ文書について。タックスヘイブン(租税回避地)はパナマを含めて世界に30ヶ所ほどあり、非常に小さな国や島国が多いようです。そもそも、タックスヘイブンは特定の産業がない国や地域が国際物流の拠点となることを促進するために作った制度で、近年ではこれが国際金融取引で利用されています。



タックスヘイブンに会社を設立し、そちらに取引を移すことで世界中で多くの企業が税負担の軽減を図っていますが、日本ではタックスヘイブン対策税制があり、タックスヘイブンの税率と日本での税率の差分について課税する制度が整っています。ただ、適用除外になるような抜け道もあり、今後パナマ文書の分析が進めば誰がどのように節税しているのか明らかになり、また話題になるでしょうね。いずれにしてもこれまで闇になっていた富裕層の税金逃れの実態が明らかになるのは興味深いです。

【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】