2016年4月21日木曜日

[149] 第2回ラオスへの企業進出の概要【国際政経】

第2回はラオスです^^(参考資料;JETROアジア進出より)
I.進出形態・進出手続き   
1.現地法人  
  (1)設立申請先 ;商工業機関(中央省庁・地方関係窓口)の投資ワンストップサービス
  (2)手続期間 ;一般事業は10~13公用日以内に企業登録証発行。その後7公用日以内に社印の審査を実施。(目安)
  (3)活動範囲 ;原則、国内外の投資は区別されないが、実際は諸官庁との交渉に依るためケースバイケースで異なる。外国企業による土地所有は認められていない。
  (4)法人形態; ①法人(Company) 、有限法人(Limited Company)、公開法人(Public Company)に分類される。
   ②合名会社(Partnership Enterprise) 、一般(General)合名会社、有限(Limited)合名会社に分類される。
   ③個人事業者
  (5)責任範囲 ;法人形態により異なる。



2.駐在員事務所  
 (1)設立申請先 ;計画投資省ワンストップサービス事務所
 (2)手続期間  ;申請の受理から5公用日以内に登録証が発給される。(目安)
 (3)活動範囲 ;①投資に関する情報収集と可能性調査、②政府と外国の親会社との間の連絡業務、③政府との覚書締結、④契約の実施監督に限られ、事業活動を行う権利はない。認可期間は1年間で2回延長が可能。
 (4)責任範囲 ;本社が負う。

3.支店  
(1)設立申請先 ;商工省ワンストップ・サービス事務所
(2)手続期間;申請の受理から15公用日以内に登録証が発給される。(目安)、登録証の取得後に別途、税務登録手続きなどが必要。
(3)活動範囲; 親会社の代理としての事業活動を行うが、事業分野は銀行、航空会社、コンサルタント、保険会社に限定。
(4)責任範囲 ;本社が負う。

II.外資規制   
1. 製造業; 原則、外資100%出資可能。コンセッション(免許)を伴う事業への投資の場合は、覚書(MOU)もしくは契約に出資比率の上限が規定されている場合はそれに従う。 また、コーヒー加工工場への投資については、外国企業は20%以下までに制限されている。
2.卸売業; ラオス国籍投資家とのジョイントベンチャー(JV)であれば可能だが、その出資比率は不明。卸売業の中のなかでも「小規模」なものについては、ラオス国籍者のみに認可される。(規模の定義は不明)
3.小売業; ラオス国籍投資家とのJVであれば可能であるが、外資の出資比率は25%未満とされている。小売業の中でも「小企業」なものについては、ラオス国籍者のみに認可される。(規模の定義は不明)なお、ハイパーマーケットなど近代的商業施設の建設に対する投資可能。
4.運輸業; ラオス国籍投資家とのJVであれば可能であるが、外資の出資比率は最大49%まで。倉庫事業についても同様。   商工省での企業登録、財務省での納税者番号取得に続き、中央銀行で資本輸入許可を取得する必要がある。
5.建設業; ラオス国籍投資家とのJVであれば可能であるが、外資の出資比率は最大49%まで。公共事業運輸省にて、出資比率などについて事前に交渉する。その後、商工省での企業登録、財務省での納税者番号取得に続き、中央銀行で資本輸入許可を取得する必要がある。
6.金融・保険業; 銀行業は外資100%出資が可能。保険業は出資比率49%まで。中央銀行の許可が必要。

III.労働事情   
1.一般的採用手段; ・労働者:工場前の貼り紙や関係者への呼びかけで募集。
       ・高度人材:国内の大学などを通じて採用するケースが多い。
2.労働条件 ;(1)労働時間:1週間6日、1日8時間または48時間を超えてはならない。
    (2)休暇:有給休暇は1週間1日、1年以上の雇用につき15日間取得可能。
    (3)時間外労働:1月45時間、1日3時間以下。賃金は150%、深夜(22時~翌5時)は200%、休日出勤時は250%。深夜は300%。
3.賃金  ; ・最低賃金月額62万6000キープ(約78ドル)に諸手当が加わる。
   ・平均賞与は、製造業作業員で0.9カ月、非製造業スタッフで0.9カ月
4.解雇・人員削減  
   ・解雇によって雇用契約を終了させることができるのは、①当該労働者が必要な専門技能を欠いている。もしくは労働者が良好な健康康状態になく労働を継続できない場合、②使用者が労働者数を減少させる必要があると考えた場合。いずれの場合も事前通知義務、補償金(退職金)の支払い義務あり。
   ・労働者に重大な過失があった場合は、使用者に補償金を支払うことなく雇用契約を終了させることができる。その場合は3日前までに通知する必要がある。5.労働組合・労働争議  
   ・労働者・労働組合・労働代表者による、使用者が労働法、事業所就業規則、雇用契約を遵守していない、と考えれる行動をとったとの苦情申し入れ後15日を経過しても合意に至らない場合は、調停のため労働監督機関に争議を付託することができる。
   ・労働監督機関が15日以内に争議を解決できなかった場合は、人民裁判所に提訴することになる。
6.近年の労働需給  
   ・タイやベトナムなどの周辺国と比べると絶対数の規模が小さく、大量の労働者を必要とする事業は不向きで、50~300人規模の事業に適す。
・ 特に都市部では教育レベルの向上に従い、サービス業の人気が高くなると見られ、工業分野と競合することも考えられる。

IV.税制・税務手続き   
1.法人税・優遇措置  
   (1)法人税率:24%
   (2)優遇措置:新投資奨励法による法人税免除については、投資奨励レベルによって、1~10年の免除期間が定められている。奨励レベルは、投資地域と事業内容で9段階に分かれる。経済特区では投資額に応じ上記水準を上回る優遇措置。
   (3)その他 :赤字は3年間繰越可能。会計監査機関や独立会計会社の証明が必要。

2.個人所得税  
   (1)課税範囲:居住者の場合、ラオス国内源泉所得と外国源泉所得のいずれも課税対象。非居住者は国内源泉所得のみ課税対象。
   (2)税率 ; :給与所得の場合、居住者・非居住者とも累進課税方式により5~24%。ただし、月額ベースで100万キープまで免税。
   (3)その他 :適用税率は所得の種類によって異なる。株式や不動産の売却、利息、配当については10%、不動産などの賃貸収入は15%

 3.源泉徴収税(日本向)  
   (1)配当  :10% 
   (2)利息  :10%
   (3)ロイヤリティー:5%  


        ***日本との二国間租税条約、不締結***

4.付加価値税  
   (1)付加価値税(VAT):10%(標準税率)
   (2)課税対象:原則すべての製品の国内販売やサービス提供を対象に課税。製品/サービスの輸入時にも課税。

 5. 物品税・サービス税  
   (1)課税対象:自動車やたばこ、ゲーム機器、燃料などの特定商品、ディスコやカラオケ、マッサージなどの特定サービスに対して、個別物品税(Excise Duty)が課税。
   (2)税率  :四輪車25~150%、たばこ60%、車両用燃料10%、ディスコ、カラオケのサービス料(VAT不含)に60%

 6.その他特記事項  
   付加価値税(VAT)登録をしていない中小規模生産者を対象に「請負税」として、事業種類(生産、商務、サービス)により、年次売上額に応じて0~7%が徴収される。

V.金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)   
 1.送金・決済  
  (1)口座開設 
   ①居住者・非居住者ともに口座開設可能。
   ②外貨口座は、ドル、バーツの開設が可能。

  (2)国内販売 
   ①現地通貨キープ建てで行うことが求められる。(ドル、バーツ建てもある)
   ②小切手もしくは送金による決済が一般的(地方では現金決済も多い)

  (3)海外送金 
   個人、法人は利益もしくは資本を外国にラオス国内の銀行を通じて送金可。
   1億キープ以上の送金をする場合は、中央銀行の許可が必要となる。
   外貨送金も可能だが、その際にはインボイスや税務支払の証明書が必要。

 2.資金調達  
  (1)主な調達形態 
   〈現地通貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
   〈外貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの外貨通貨建て借入は可能。
    ・親子ローンも使われているが、ラオス中央銀行から許可取得が必要。

  (2)借入期間・金利 
   〈現地通貨建て〉
   ・ラオス国内で現地通貨建て資金調達を行う場合、借入期間1年で金利は、 7~9%程度。(2012年12月~2013年1月時点)

   〈外貨建て〉
   ・ラオス国内でドル調達を行う場合、借入期間1年で金利は4.2~8.0%程度。(2012年12月~2013年1月時点)
   ・親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。

VI.貿易・通関制度   
 1.輸出・入規制  
   (1)貿易管理:外国企業でも、商工省の企業登録局に登録すれば、輸出入業務を行うことができる。
   (2)輸入規制:兵器、芥子種子・大麻などの一部の品目を禁止。エンジン付き車両などの輸入規制品目は事前許可が必要。
   (3)輸出規制:50年以上経過した仏像などは輸出禁止。籾米などの輸出規制品目は事前許可が必要。

 2.貿易取引(決済)  
   (1)決済通貨:米ドルが一般的。
   (2)外為取引は自由化されており、特に規制なし。
   (3)輸出代金支払:信用状(L/C)も可能だが、電信送金(T/T)が一般的。
   (4)輸出代金回収:信用状(L/C)も可能だが、電信送金(T/T)が一般的。

 3.通関制度 ;タナレーン(タイとの陸路国境)において、唯一「電子通関システムASYCUDA」が導入されており、それ以外の国境ではIM4と呼ばれる手続をふむ。

 4.輸入関税、諸税  
   (1)関税率:2013年1月のWTO加盟に際し、平均上限関税率として農産物19.3%、工業製品18.7%とすることで合意。
   (2)その他(輸入時):付加価値税(10%)、燃料など特定の物品の 輸入に関わる個別物品税が課税される。
 5.特恵関税(日本)  
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税・無枠措置が適用される。


VII.インフラストラクチャー   
   
 1.電力      (1)電源構成は殆どが水力。
   (2)総発電量:8,449GWh(2010年)
   (3)需給状況(産業向け):豊富な水力資源がもたらす電力により、周辺国に比べると比較的安定した電力が供給されている。 ただ、送電網の未整備により、地方への供給は不安定であり、また乾期になると需要に供給が追いつかず、タイから輸入することになる。

 2.エネルギーコスト 〈ビエンチャン〉 
      ①業務用電力料金:0.063ドル/kWh(22kV)、 0.074ドル/kWh (0.4kV)
     ②業務用ガス料金:1.33ドル/kg
       ③レギュラーガソリン料金:1.347ドル/リットル
     ④軽油:1.189ドル/リットル

 3.陸上輸送   (1)輸送環境
(2)主要ルート:首都のビエンチャンから、バンコクまでを結ぶルートが、物流の主要ルート。タイ側、ラオス側ともに道路事情はよく、国境での積み替えも不要となり、頻繁に利用されている。主に、バンコクのレムチャバン港などを経由しての輸出入の際に利用されるが、この国内の輸送コストが全体を引上げており、周辺国に比べると輸送コストが高くなっている。

 4.港湾   ラオスは内陸国のため、港湾をもたない。現在外資企業の多くはビエンチャンに進出しており、輸出入にはタイのレムチャバン港を利用している。将来的には、ベトナムのダナン港やハノイとダナンの間に位置するブンアン港(ビエンチャンから最短距離)などの利用も期待される。

 5.工業団地 (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、リースとなる。
   (2)リース料:月額0.038ドル/㎡(サワンセノン経済特区、2ha未満、75年)
       月額0.028~0.039ドル/㎡(ビエンチャン近郊のビタパークSEZ、75年)
   (3)整備状況:国内に10ケ所のSEZが認可され、稼働しているのは5ケ所。日系企業の投資候補となるビタパークSEZとサワン・セノSEZでは、電気、水道など基本的なインフラは整備されている。

                
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

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