2016年4月11日月曜日

[146] 第1回カンボジアへの企業進出の概要【国際政経】

アジア6ケ国の経営形態の概要を追って記載します。参考資料;JETROアジア進出より
第1回はカンボジアからです^^


I.進出形態  
1.現地法人 
  (1)設立申請先
   ①特別経済区(SEZ)で優遇措置を受ける場合→経済特別区委員会(CSEZB)
   ②SEZ外で優遇措置を受ける場合→カンボジア投資委員会(CIB)
   ③優遇措置を受けない場合→商業省ビジネス登録オフィス
  (2)手続期間
   2週間~1か月(目安)  商業省登記 
  (3)活動範囲
外国企業による出資が51%以上の場合、会社法上は外国企業扱いだが、原則、内国法人(カンボジア国籍の会社)と同様の業務ができる。
  (4)会社形態
   私的有限責任会社、公開有限責任会社の2種類。
  (5)責任範囲
   出資範囲内で責任を負う。
2.駐在員事務所 
  (1)設立申請先 商業省ビジネス登録オフィス
  (2)手続期間 5営業日(目安)
  (3)活動範囲
①親会社の代理として顧客にコンタクト
②商業関連情報の調査と親会社への提供
③市場調査
④展示会もしくは事務所内におけるサンプル・ 商品の展示、展示会出展用物品購入・保管
⑤事務所の賃借と従業員の雇用
⑥親会社の代理としての顧客との契約行為
  (4)責任範囲
   法的責任や債務は親会社が負う
3.支店 
  (1)設立申請先 商業省ビジネス登録オフィス
  (2)手続期間 5営業日(目安)
  (3)活動範囲
   ・外国企業に禁止されている業務を行わない範囲で、内国企業と同様に、製品。
   ・サービスの販売・製造、加工などの業務を行うことができる。
  (4)責任範囲 法的責任や債務は親会社が負う。

II.外資規制  
1.製造業
外資100%出資可能。略すべての業種は投資適格プロジェクトの対象。最低投資額の条件(業種により10~100万ドル)5,000万ドル超投資の場合、カンボジア評議会を通じ、閣僚評議会の認可要。
2.卸売業・小売業 
   税制上の優遇措置なし。支店形態でも現法と同様に従事できる。
3.運輸業 
   外資100%出資可能。公共事業運輸省よりライセンスを取得すること。
4.建設業 
   外資100%出資可能。不動産開発等を除き、投資適格プロジェクトの対象。
5.金融・保険業 
   外資100%出資可能。税制上の恩典なし。最低資本金制度あり。

III.労働事情  
1.一般的採用手段 
   ・労働者:経済特区で貼り紙、地方の村長と相談して確保。
   ・高度人材:ウェブサイト、新聞、ラジオなどで募集、人材紹介会社を利用。
   ・日本語人材:王立プノンペン大学、NGOなどからの紹介。
   ・経済特区内企業の場合、経済特区管理会社のサポートを受けるのが一般的。
2.労働条件 
   (1)労働時間:1日8時間、1週間48時間まで。
   (2)休暇:週休は最低1日(24時間)連続して与える必要があり、週6日を越えての労働は不可。1カ月当たり1.5日の有給休暇取得権利。
   (3)時間外労働:賃金5割増し、深夜(22時~翌5時)および休日出勤は10割増し。
3.賃金 
   ・最低賃金月額61ドル(繊維、縫製、製靴企業)に加え、皆勤手当(10ドル)通勤・在宅手当(7ドル)、健康手当(5ドル)といった義務的給付あり。
   ・平均賞与は、製造業作業員で0.8カ月、非製造業スタッフで1.4カ月。
4.解雇・人員削減 
   ・有期雇用契約の解除(解雇)の条件は、
    ①被雇用者に重大な過失があった場合
    ②雇用者・被雇用者の双方が合意し、労働監査官(Inspector)立会いの下で書面にサインした場合
    ③病気や死亡、災害などのコントロール不能な事態が発生した場合
   ・無期雇用契約の場合、事前通告を前提に、従業員の資質や技術(能力)を理由に契約を終了することも可能。ただし、実態面においては客観的に資質や技術面での問題を証明するのは難しい。
5.労働組合・労働争議 
   ・最小8人を常時雇用するすべての企業や団体においては、すべての労働者の代表として、組合代表委員を選出する必要がある。ただし、実態では労働組合を組織せず、交渉窓口である「労働者代表」を立てるのみで対応している企業が多く、多くの進出日系企業でも労働組合は存在しない。
   ・労使間での紛争の際には、労働者傘下の仲裁委員会に仲裁を求めるのが望ましい。ただし、仲裁決定を拒否する場合に一方の当事者がストライキなどを行う権利が保障される。
6.近年の労働需給 
   ・内戦の影響などによる教育普及の遅れから、教育水準の高い人材不足が懸念。
   ・進出企業によれば、縫製業を中心とした外資の進出増にエンジニアや管理職等の高度人材の供給が追いつかず、地方部(パペット、ポイペト等)での人材採用がとりわけ困難。

IV.税制・税務手続き  
1.法人税・優遇措置 
   (1)法人税率:20%
   (2)優遇措置:一定の条件を満たす適格投資案件(QIP)については、最大9年間の法人税免税が認められる。
   (3)その他 :最低課税として売上高に対する1%の支払い義務(外形標準に相当)あり。法人税額(利益に対する20%)と比べ、いずれか高いほうを支払う。(QIPステータスを有する企業は適用対象外)
2.個人所得税 
   (1)課税範囲:居住者の場合(給与税として)カンボジア国内源泉所得と国外所得のいずれも課税所得。非居住者は国内源泉所得のみ課税対象。
   (2)税率  :累進課税方式により0~20%。20%の最高税率は年間1,250万リエル(約3,097ドル)を超える部分に適用。非居住者は一律20%。
   (3)その他 :企業が支給する住居や食事については一律20%の付加給付税(FBT)が課せられる。
3.源泉徴収税(日本向) 
   (1)配当  :14% (操業開始年からの3年間は7%)
   (2)利息  :14%
   (3)ロイヤリティー:14%  
   ***日本との二国間租税条約、不締結***
4.付加価値税 
   (1)付加価値税(VAT):10%(標準税率)
   (2)課税対象:国内における物品販売やサービス提供を対象に課税。公共郵便、交通サービスは非課税.         
5.物品税・サービス税 
   (1)課税対象:特定商品・サービスに対して物品・サービス税が課税。
   (2)税率  :娯楽・たばこ10%、飲料20%、航空券10%、国内・国際通信3%、石油製品、大型自動車・同部品30%
6.その他特記事項 
   法人/個人へのサービス費用などの支払に対し、源泉徴収の義務がある。コンサルタント費、ロイヤリティー、利息などについては15%、動産・不動産の賃貸収入については10% など

V.金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)  
1.送金・決済 
  (1)口座開設
   ①居住者はカンボジア国内で口座開設は可能。
   ②外貨建て口座開設も可能。
  (2)国内販売
   ①ドルが幅広く国内決済で利用。
   ②小切手による決済が一般的。
  (3)海外送金
   外国為替法に基づき、公認銀行を通じた取引である限り、外国為替取引には一切制限なし。ただし、10万ドル以上の送金については、カンボジア中央銀行への届け出義務がある。
2.資金調達 
  (1)主な調達形態
   〈現地通貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
    ・国内経済がドル化しているため、現地通貨建ては稀。
   〈外貨建て〉
    ・親子ローン、もしくは海外銀行からのオフショア借入によるドル建て資金調達が一般的。なお、地場銀行、外資系銀行からドル建て借入は可能だが、国内の商業銀行からの借入は金利が割高。
  (2)借入期間・金利
   〈現地通貨建て〉
   ・カンボジア国内でリエル調達を行う場合は、借入期間1年で金利は、11~24%程度。(2012年1月時点)
   〈外貨建て〉
   ・カンボジア国内でドル調達を行う場合、借入期間1年で金利は11~19%程度。(2012年1月時点)
   ・親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。
   ・海外銀行からのオフショア借入は、貸出銀行内におけるカンボジアのカントリーリスクに対する格付が低いことから、親会社保証をつけることで調達金利を引き下げる手段が取られている。

VI.貿易・通関制度  
1.輸出・入規制 
   (1)貿易管理:外国企業の輸出入業に対する制限はなく、商業省に登記したすべての企業は自由に輸出入業務を行うことができる。
   (2)輸入規制:一部の例外を除いて撤廃済み(タイヤなどの中古品、右ハンドルの自動車などが禁止品目)。薬品等では輸入許可が必要。
   (3)輸出規制:骨董品、麻薬などの輸出禁止/規制品目を除き自由。天然ゴムなど一部の商材に関して原則10%以下の輸出税が課せられる。縫製品については、商業省より輸出管理費の徴収。
2.貿易取引(決済) 
   (1)決済通貨:米ドルが一般的。
   (2)外為取引は自由化されており、特に規制なし。
   (3)輸出代金支払:信用状(L/C)が一般的。
   (4)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。
3.通関制度 
   貿易・通関手続きの簡素化のために、「電子通関システムASYCUDA」と新しい通関申告書である「単一管理書類SAD」が導入され、シハヌークヴィル港やプノンペン国際空港などの税関で運用されている。
4.輸入関税、諸税 
   (1)関税率:原則として0%、7%、15%、35%の4段階。鉱工業製品の平均譲許税率は17.7%、平均実効税率10.3%(譲許率100%)
   (2) その他(輸入時):輸入関税に加え、特別税(自動車、バイクなど、アルコール類、石油・同製品など)および付加価値税(VAT)が課せられる。
5.特恵関税(日本) 
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税・無枠措置が適用される。

VII.インフラストラクチャー  
1.電力 
   (1)火力34%、水力2%、タイ・ベトナムなどからの輸入64%
   (2)総発電量:1,018GWh 輸入,1829GWh (2011年)
   (3)需給状況(産業向け):ベトナムとの国境付近の経済特区(SEZ)では、入居企業独自による自家発電の設置が不可欠。南部のシハヌークビルでも自家発電装置が必要。
2.エネルギーコスト
   〈プノンペン〉
     ①業務用電力料金:0.216ドル/kWh
     ②業務用ガス料金:1.33ドル/kg
      ③レギュラーガソリン料金:1.26トル/リットル
     ④軽油:1.21ドル/リットル
3.陸上輸送 
   (1)輸送環境(2)主要ルート:ホーチミンからプノンペンを通り、バンコクまでを接続する南部経済回廊が最重要。道路状況は良好で片側一車線であるが乗用車であれば、平均時速80~90km走行可能。
4.港湾 
   (1)主要コンテナ港:シハヌークビル港
   (2)貨物取扱量:約240万トン(2011年)
   (3)主要工業団地への距離・時間:プノンペンから国道4号線で230km, 約4時間。
5.工業団地 
   (1)工業団地購入可否(運用上):100%外資系企業による土地・工業団地の購入は不可で、リースとなる。
(地場企業と合弁なら可能)
   (2)リース料:月額0.091ドル/㎡(プノンペン経済特区、最大50年、延長可)
   (3)整備状況:国内に25か所の経済特別区が認可され、現在7か所が稼働中。電力、給水、下水、排水処理など基本的なインフラは供給されるが、電力などは自家発電設備を備えているところは限られるなど整備水準には差がある。日本政府が開発支援をしたシハヌークビル港SEZは日本企業の設計、施工による質の高いインフラが整備されている。
                                      
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp

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