2016年6月2日木曜日

[161] 第6回 スリランカへの企業進出の概要【国際政経】

第6最終回はスリランカです^^(出典:JETRO)

 Ⅰ進出形態・進出手続き  
 1.現地法人 
  (1)設立申請先 :スリランカ投資庁(BOI)による承認を経て、会社登記局へ設立申請・登記 を行う。

  (2)手続期間 :通常2~3週間程度(目安)
  
  (3)活動範囲 :定款の範囲内で活動を行う。
  (4)会社形態 :非公開株式会社が一般的
  (5)責任範囲 :出資範囲内で責任を負う。

 2.駐在員事務所 
  (1)設立申請先 :会社登記局
  (2)手続期間 :通常1~2週間程度(目安)
  (3)活動範囲 :商業活動を伴わない範囲。本社のための商品/サービスを手配、調査・管理、代理店・商品に関する助言
の提供、広報、報告。
  (4)責任範囲 :本社が負う。

 3.支店/支店
  (1)設立申請先 :会社登記局
  (2)手続期間 :1~2週間程度(目安)
  (3)活動範囲 :外資規制の対象業種を除いて、商業活動を伴うことが認められる。
            (*外国会社の内、商業行為を伴えば支店、伴わなければ駐在員事務所)
  (4)責任範囲 :本社が負う。


Ⅱ外資規制  
 1.製造業  :原則、事前認可を必要とせず、外資100%出資が可能。
   ただし、ネガティブリストの規制業種に該当する「軍用ハードウェアおよび危険薬物」、出資制限業種に該当する
「国際的な輸出先の割り当て制限の対象である輸出財の生産」などを除く。

 2.卸売業 原則、外資100%出資が可能。
    ただし、国内販売する製品によっては別途、規制やライセンス取得の対象となる可能性があるため、事前にス
リランカ投資庁(BOI)に確認しておく。
    支店形態で拠点を設置し、本国の親会社の代理業務として輸出入や国内販売を行うことも可能。
    支店の場合は、スリランカの市中銀行に開設する「対内投資口座」(ⅡA)と呼ばれるルピー建ての特別口座を
通して外国から送金された資金から、最低20万ドル、またはその他の指定外国通貨で同等額を最低資本金とし
て出資する必要がある。

 3.小売業 :資本金100万ドル未満の小売業は、外資参入を認めない禁止業種に該当する。
   100万ドル以上の投資額を満たす場合は、特に国内法などによる規制などはない。
   支店形態で小売業へ参入することも可能だが、海外支店については「資本金200万ドル未満の小売業」が同様
に参入禁止の一つとして規定されている。
   なお、商業・取引・産業活動を行う海外支店を行う海外支店を設立する場合は、別途20万ドル以上の投資が必
要となるため、合計220万ドルの資本金が求められる。

 3.運輸業 : 航空運送業、沿岸海運業への外国投資は、BOIおよび所管政府機関による承認が必要である。
   BOIが窓口になり、BOI経由にて投資申請書が適切な所管政府機関に回送される。
   支店形態で航空運送業、沿岸海運業を営む場合、事前に為替管理局の許可が必要。
   貨物輸送業(物流業)、海運代理店業への投資は、原則40%の出資割合を上限に自動承認。40%を超える場合
は、事前にBOIからの個別を得る。
   また、外国企業が支店形態で貨物輸送業、海運代理店業を行うことは禁止。

 4.運輸業 : 原則、事前認可を必要とせず、外資100%出資が可能。なおBOI法第17条に基づき、
   ①都市部における住宅建設もしくは中心市街地開発
   ②商業ビル建設を含むインフラ事業
   ③工業団地/特別経済区の開発
    などの分野に該当する場合、(投資額300万ルピー以上の案件について)投資額に応じて6~12年のタックス・
ホリデー(法人税免税)の対象となる。優遇税制の適用には、BOIとの事前協議が必要。


 5.金融・保険業 
   ネガティブリストの禁止業種に「貸し金業」の記載があるため、外貨規制上は同分野への出資は認められない。
   ただし、外資銀行の法人・支店設立や地場銀行への出資は、中央銀行の特別ライセンスを取得することを条件
に可能。
   保険業は、ネガティブリストに含まれておらず原則として外資100%出資が可能。

Ⅲ労働事情  
 1.一般的採用手段 
   ・新聞・情報誌などの広告、スリランカ投資庁が運営するジョブ・バンク民間のワーカー登録サイト(有料)、
人材派遣会社の活用、大学などの教育機関を通じた募集。
   ・上記に各社独自の採用ルートを合わせて、求める従業員の規模やレベルに応じて複数の採用手段を使い分け
る。

 2.労働条件 (1)労働時間:1日8時間、1週間45時間まで。(休憩時間を含まず)
   (2)休暇:労働時間が週28時間を超える労働者には、1週間に1.5日間の休日が認められる。
   (3)時間外労働:賃金は通常の5割増。


 3.賃金 ・最低賃金は職種やレベル、勤務年数により設定される。縫製業の場合、1年目の非熟練工で6900ルピー(約
54ドル)+諸手当。
   ・平均賞与は製造業作業員で1.5カ月、非製造業スタッフで1.8カ月。

 4.解雇・人員削減 
   ・従業員の解雇や雇用削減、臨時休業を行う場合「雇用法」に定める規定に従う必要がある。
    なお、同法を含むその他の労働関連法では、被雇用者側の権利が最大限に保護されおり、雇用者側の解雇理
由を正当化するのが極めて難しいのが実態。
   ・解雇された従業員が補償の改善などを求めて労働祭場bb所に申し立てを行う慣習がある。
    解雇をめぐる係争の場合、たとえ従業員に過失があっても、それを立証するのは難しく、補償を支払わなけ
れば解決しないケースが多い。

 5.労働組合・労働争議 
   ・労働組合の組織および労働組合への参加の自由は、憲法において保証されている。
   ・労働組合の組織および管理に関する規定は、労働組合法およびその改訂法を根拠とする。
    同法では、組合はその設立から、3カ月以内の登録、ならびに登録における最低7人の署名を義務付けてお
り、組合の組織には最低7人が必要。
    また同法に基づき、労働組合は産業争議において、労働者を代表し必要に応じてストライキを遂行する。
 6.近年の労働需給 
   ・コロンボなどの都市部では賃金水準なども相対的に高く、人材はITやホテルなどのサービス業を志向する傾
向が強い。
   ・アパレル業では、欧米を中心に多国籍メーカーの進出も多く、外資系企業同士の従業員の引き合いが常態化
している。
    エンジニアや管理職レベルの人材は不足しており、確保した人材も高額の賃金で引き抜かれるリスクがある。
    他方、電機や機械製品などの産業では、アパレル産業に比べ、人材不足の問題はそれほど深刻でない。

Ⅳ税制・税務手続き  
 1.法人税・優遇措置 
   (1)法人税率:28%(課税所得が500万ルピー以上)
      課税所得が500万ルピー未満場合は12%、その他事業内容により8~40%、
   (2)優遇措置:BOI規定により製造業は5000万ルピー、サービス業・農業は2500万ルピーの最低投資額を条件
に新規投資に関して4~12年間のタックス・ホリデーを付与。
      関税や物品税についてもBOIの定めによる優遇税率の適用あり。
   (3)その他 :国家建設税として、輸入業者、製造業者、およびサービス業者に対して、売上高ベースに2%
を課税。


 2.個人所得税(1)課税範囲:居住者の場合スリランカ国内源泉所得と国外所得のいずれも課税対象。非居住者は国内源泉
所得のみ課税対象。
   (2)税率  :累進課税方式により4~24%。最高税率は年間300万ルピーを超える所得に対し課せられる。
   (3)その他 :日本との間では二国間租税条約に基づき、短期滞在者免税が認められる。


 3.源泉徴収税(日本向) 
   (1)配当  :10% 
   (2)利息  :15%
   (3)ロイヤリティー:7.5%  

   ***「セイロン・日本二重課税防止条例」に基づく**

 4.付加価値税(1)付加価値税(VAT):12%(標準税率)
   (2)課税対象:国内における物品販売やサービス提供を対象に課税。輸出や国外向けサービスに対しては免税。


 5. 物品税・サービス税 
   (1)課税対象:物品税(Exicise Duty)には
      ①アルコール飲料
      ②たばこや石油製品、家電製品 (特別規定)
      ホテルや通信事業者、建設請負業者には別途、売上や
      契約額に応じた税金が徴収される。
   (2)税率 :税率や特定製品の品目やサービスの内容によって異なる。


 6.その他特記事項 
   :各四半期の売上額が5000万ルピーを超える事業者は、売上高をベースに経済サービス税(ESC)が課税される。
   ただし、2012年度より所得税の納税業者についてはESCの納税義務が免除となった。


Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)  
 1.送金・決済 
  (1)口座開設 ①居住者・非居住者ともに口座開設可能。
       ②外貨口座は居住者は開設可能。
           非居住者については、国外に居住するスリランカ人は指定外国通貨の非居住者外貨口座を保有できる。

  (2)国内販売 ①原則として、現地通貨スリランカ・ルピー建てで行われる。
                ②オンラインによる銀行振り込みなどの電子決済が一般的。                                        

  (3)海外送金:現行の国際収支取引の分類に入るサービスに対する支払は、事由に許可される。
      利益・配当・特許権使用料・賃料収入の送金を含む貿易外取引の送金にかかる外国為替管理局の事前認
可取得、中央銀行への届け出は不要。

 2.資金調達 
  (1)主な調達形態
   〈現地通貨建て〉
    ・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
   〈外貨建て〉
    ・BOI法第17条の認可を受けた企業で、投資庁(BOI)との協定に基づき外国為替管理の規制を免除される
企業は、外国為替の規制を受けることなく、親子ローンを含む海外からの借入を行うことが認められる。

  (2)借入期間・金利
   〈現地通貨建て〉
   ・2012年10月時点の商業銀行の平均最優遇貸出金利(プライムレート)は約14%。スプレッドなどを加えた
実効金利は借り手の信用リスクや担保により、16~25%(2012年8月時点)。
    融資の際には不動産、売掛金などの担保、保証を求められる。一般的には担保に対して、50~70%の範囲で
融資が受けられる。

   〈外貨建て〉:親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。

Ⅵ貿易・通関制度  
 1.輸出・入規制 
   (1)貿易管理:外国企業でも現地法人を設立したうえで、輸出業務をすることは可能。
   (2)輸入規制:茶、ゴムなどの主要農産物を除き、原則自由。一部の品目で輸入許可が必要。
   (3)輸出規制:象牙や木材・木製品など輸出許可が必要な品目を除き、原則自由。


 2.貿易取引(決済) 
    (1)決済通貨:米ドル、ユーロ、円、ポンドなどの主要通貨が可能だが、米ドルが一般的。
   (2)輸入代金支払:信用状(L/C)が一般的。
   (3)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。外国為替管理の規制を受けることなく受取可能。


 3.通関制度 :各商業輸入業者、輸出業者乙仲(通関業務代行者)は、通関業務を行う場合、内国歳入庁により発行された
納税者識別番号(TIN)を税関に登録する必要がある。
 

4.輸入関税、諸税 
   (1)関税率:基本税率は原則、0%(現地生産できない基幹製品、原材料・資本財など、5%)(半製品原材料)、
15%(中間財、予備部品)、30%(自動車その他の重要な完成品)の4段階。  
    鉱工業製品の平均譲許税率は19.7%、平均実効税率は7.8%(ただし、譲許率は28.7%と高くない)
   (2)その他(輸入時):関税に加え、港湾・空港開設税(PAL)5%、国家建設税(NBT)2%、VAT12%、および
物品税が課せられる。また、特定の品目に調整関税、追加関税、特別関税などが課税。

5.特恵関税(日本) 
   日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象とはならないが、一般特恵関税制
度の対象になり、一般の関税率より低い特恵税率が適用される。(品目によって免税にならないものもある)

Ⅶインフラストラクチャー  
 1.電力 (1)火力59%、水力40%。水力を低下させ火力や再生可能なエネルギーなど電源の多様化を推進。
   (2)総発電量:11,528GWh (2011年)
   (3)需給状況(産業向け):コロンボ周辺のEPZでは、インド、バングラデシュ、パキスタンに比べ電力不足や停電の問題
は少ない。


 2.エネルギーコスト〈コロンボ〉
     (1)業務用電力料金:0.01~0.12ドル/kWh
     (2)業務用ガス料金:1.43ドル/kg
       (3)レギュラーガソリン料金:1.2ドル/リットル
     (4)軽油:0.74ドル/リットル


 3.陸上輸送 (1)輸送環境(国内輸送):スリランカ国内輸送の80%は道路輸送。高速道路をはじめとする道路網の開発計
画が進展。
   (2)主要ルート:コロンボから南部の主要都市ゴールの区間所要時間は1.5~2時間。


 4.港湾 (1)主要コンテナ港:コロンボ港、南部のゴール港、北部のカンケサントゥライ港東部のトリンコマリー港、オルヴィ
ル港。
   (2)貨物取扱量:426万TEU(コロンボ港、2011年)
   (3)主要工業団地への距離・時間:コロンボ港からコロンボ周辺のEPZまで30~35km、約1~1.5時間。
    (4) その他:チェンナイ港、コルカタ港まで2日、シンガポールまで3日、横浜港まで9日間。


 5.工業団地 (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、
リースとなる。工業団地以外の土地は外貨でも購入できるが、税金が100%かかるため、購入するケー
スはない。
   (2)リース料:月額0.087ドル/㎡ 一括前払契約金12.4ドル/㎡    (カトナヤケEPZ、50年)
   (3)整備状況:BOIが管轄する工業団地は、国内に12ケ所、うち10ケ所はEPZ。
     日系製造業の場合、手続きやインフラ事情を考慮するとBOI管轄の工業団地に入居検討するのが現実的。
                                     

     以上です。
6回にわたりアジア新興国と取引を始める場合の貿易や企業のインフラにつきまして簡単に記載してきました。なにかのご参考になれば幸いです。                                      
    
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】
※スリランカの祖先はライオンの血をひいているのでライオンがマーク!それからスリランカは満月の日は、お仕事はお休みになります。仏教性が強いのですね。

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