2016年6月20日月曜日

[166] 「継続企業の前提に関する注記」(2016/3期)【国内会計】

企業の財務諸表は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されるが、当該会計 基準は継続企業の前提を基礎としていると解されているため、財務諸表に計上されている資産及 び負債は、将来の継続的な事業活動において回収又は返済されることが予定されています。しかし、企業は様々なリスクにさらされながら事業活動を営んでいるため、企業が将来にわたって事業活動を継続できるかどうかは、もともと不確実性を有しています。このため、継続企業の前提に基づき作成された財務諸表といえども、必ずしも企業が将来にわたって事業活動を継続して営みうることを保証するものではありません。

継続企業の前提に関する評価は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状 況を解消し、又は改善するための経営者の対応策を含み、合理的な期間(少なくとも貸借対照表日の翌日から1年間)にわたり企業が事業活動を継続できるかどうかについて、入手可能なすべての情報に基づいて行うことが求められます。決算日において、単独で又は複合して継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような 事象又は状況としては、例えば、以下のような項目が考えらます。
 <財務指標関係>
・ 売上高の著しい減少
・ 継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュフローのマイナス
・ 重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上
・ 重要なマイナスの営業キャッシュフローの計上
・ 債務超過
<財務活動関係>
・ 営業債務の返済の困難性
・ 借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性
・ 社債等の償還の困難性
・ 新たな資金調達の困難性
・ 債務免除の要請
・ 売却を予定している重要な資産の処分の困難性
・ 配当優先株式に対する配当の遅延又は中止
<営業活動関係>
・ 主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
・ 重要な市場又は得意先の喪失
・ 事業活動に不可欠な重要な権利の失効
・ 事業活動に不可欠な人材の流出
・ 事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分
・ 法令に基づく重要な事業の制約
<その他>
・ 巨額な損害賠償金の負担の可能性
・ ブランド・イメージの著しい悪化

2016.6.8における東京商工リサーチの調査によると、2016/3期決算を発表した上場企業2,447社のうち、監査法人から「継続企業の前提に関する注記」が付いた企業は24社だったそうです(2015/3月期(27社)より3社減少)。注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」は43社だったそうです。

なお、詳細は東京商工リサーチのWebサイトをご覧ください(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160608_09.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

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