2016年1月18日月曜日

[122] 「財産債務調書」の提出は全員必要でしょうか…提出しないとペナルティ?【国内税務】

◆財産債務調書は今年からの新しい制度
昨年2015年度の税制改正に時に創設されたものです。目的は、所得税や相続税の申告の適正性を確保するという名目で、今までの【財産及び債務の明細書】を見直した上で、その対象者を絞り込み、保有する財産に関して調書を提出するように求める制度です。

◆財産債務調書提出を提出する方の基準
①その年の所得金額が2,000万円超、かつ
②次のどれかの人
a.その年の12/31日において合計額3億円以上の財産を有している
b.その年の12/31日において合計額1億円以上の有価証券を有している
C.国外転出をする場合の譲渡所得等の特例資産額の合計が1億円以上である
以上が提出対象の基準となっており、早速2016年1月1日以後の財産債務調書から適用されます!

◆記載する内容
➣ その財産の種類
➣ 数量
➣ 価額並びに債務の金額
➣ その他必要な事項

◆重要です;通達に追加されました更に次の事項が最近追加されました。
➣給与などの人的役務の対価は除くのですが、新株予約権や株式の有利取得の行使可能権利は対象になりますので注意が必要です!
➣対象資産に、2015年7月にスタートした国外転出課税特例の対象資産12/31日における時価の算定がむずかしい場合は、時価相当の「見積価額」でもおおむねOK。
➣さらに「匿名組合契約の出資の持分」や「未決済信用取引等に係る権利」などは見積価額で記載するように追加されました。
➣非上場株式の見積価額も挙げられ、売買実例や譲渡価額がない場合は「その法人の12月31日又はこの最も近い日に終了した事業年度の決算書での法人の純資産価額(帳簿価額によって計算)に自己の持株割合を乗じて計算するなど合理的な価額」 を見積価額としても概ねよいとされています。

◆加算税等の特例とはなんでしょう
“財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例の取扱い”があります。具体的には次のように“優遇”と“罰則”の両方を指します。
① 有利(過少申告加算税の優遇措置)
調書に記載がある財産に関する所得税及び相続税の申告漏れがあっても、その財産にかかる本税部分の加算税は5%減額されます。

② 罰則(過少申告加算税等の加重措置)
調書の提出が提出期限内にない場合や、提出期限内に提出された調書に記載すべき財産の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その財産に関する所得税等の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じたときは、その財産の申告漏れに係る部分の過少申告加算税等については5%加重されます。
③これは相続税と亡くなられた方の所得税についての適用はありません。

◆国外財産調書との関係
資産価額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、ほかに“国外財産調書”の提出も必要になりますので注意してください。(国外送金等調書法5①)
(平成27年12月2日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。)

*** あとづけ ***
さて、税務当局はこれら新制度の他に、OECD(経済開発協力機構;Organisation for Economic Co-operation and Development)に加盟したこと等から、国内財産はもとより海外資産やその取引も把握できる情報収集環境を整えています。マイナンバーも先はその一連の流れに組み込まれるのでしょう。国際的取引がひろがりはじめた近年、私達は日本の法制度をふまえながら、各国間の法制度も視野にいれた明確な取引や資産保全がますます重要な時期になったといえます。
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト |
http://et-inc.jp 

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