Ⅰ進出形態・進出手続き
1.現地法人
(1)設立申請先 ;商業登記所(RJSC&F)
(2)手続期間 ;会社設立承認証(Certificate of Incorporation)を商業登記所(RJSC&F)にて取得するのに、通常2
週間~2ケ月程度必要。(目安)前段階での申請書類作成にも1か月程度見ておいた方がよい。
(3)活動範囲 ;原則、禁止業種を除く、すべての領域で活動が許される。
(4)会社形態 ;日系企業は通常、非公開株式有限責任会社を選択。
(5)責任範囲 ;株式出資の範囲内。
2.駐在員事務所
(1)設立申請先 ;バングラデシュ投資庁(BOI)
(2)手続期間 ;1~6週間程度(目安)。BOI委員会が1か月毎に開催されるため、同委員 会の開催時期による。
原則、委員会の開催直後に許可の連絡がある。
(3)活動範囲 ;原則として
①現地関係先との連絡機能
②情報収集・提供
③技術サポート
④市場調査 の範囲内に限定。
(4)責任範囲 ;本社が負う。
3.支店
(1)設立申請先 ;バングラデシュ投資庁(BOI)
(2)手続期間 ;1~6週間程度(目安)。BOI委員会が1か月毎に開催されるため、同委員会の開催時期による。
(3)活動範囲 ;駐在員事務所に認められている活動に加え、BOIに別途申請を行うことに よりバングラデシュ源泉
所得を得る活動(本社の代理として契約行為等)に従事できる。ただし、BOIに許可された業務の
範囲に限定される。
(4)責任範囲 ;本社が負う。
Ⅱ外資規制
1.製造業 ;原則、外資100%出資可能。生産拠点として進出する場合は、輸出加工区(EPZ)に進出するか否かで手続き
が異なる。商業登記所(RJSC&F)で法人登記を行ったうえで、EPZの場合は、バングラデシュ輸出加工
庁(BEPZA)それ以外はバングラデシュ投資庁(BOI)で手続きを行う。
2.卸売業・小売業;
外国企業による卸売・小売業参入を禁止する明文規定はなく、手続きは輸入・販売拠点を自ら設置し、会社設立後に輸入登録証を取得すれば可能である。しかし、外資100%での現地法人設立による輸入・販売にあたっては、現地雇用を生むかという点が重視されるため、販売活動のみであまりローカル・スタッフを必要としない場合、様々な許認可を取得する際に問題となることも想定される。この場合、将来的な現地製造、一定規模の人材雇用を前提にした法人登記により外資でも許認可を得られる事例もある。
3.運輸業 ;バングラデシュ企業との合弁であれば認められる。外資49%まで出資上限。
4. 建設業 ;規制業種にあたる大規模インフラ、港湾建設などに関連することがなければ、特段の規制を受けることはな
い。ただし、現状で外資系の建設業の関与は、一部の援助プロジェクトや公共工事に限定されており、日系
企業でも現地法人としての進出事例はない。
当地ではプロジェクトオフィスの形態が存在しないため、援助プロジェクトや公共工事を国際入札で受注し、
支店を当地で設立し、現地の必要経費を海外から送金する形で運営するのがこれまでの事例となっている。
5.金融・保険業;
金融業は政府からの特別許可を必要とする。また、下記の通り資本金の最低額が設定されている。
銀行:20億タカ、一般保険:4億タカ、生命保険:3億タカ、その他特殊保険:1500万タカ 以外:10億タカ
Ⅲ労働事情
1.一般的採用手段
・新聞広告で募集をかけるほか、労働者クラスの場合は、工場前の貼り紙などで募集。工場労働者は近辺から
雇用することが多い。
2.労働条件 (1)労働時間:1日8時間+1時間休暇を基本とし、残業手当を支払えば最高10時間まで就労可能、1週48
時間を基本、最高60時間まで就労可。
(2)休暇:工場では週、1日の休日、商業施設などの場合は1週間に1.5日の休日が認められる。
有給年次休暇は、12か月間継続して就業としたすべての成人労働者に対し年間18日間付与。
(3)時間外労働:賃金は基本時間給の2倍。
3.賃金; ・最低賃金はEPZ内のオペレーターで月額61~66ドル、EPZ外の非熟練工で3000タカ(約37ドル)、プラス諸
手当
・平均賞与は製造業作業員で1.8カ月、非製造業スタッフで1.8カ月
4.解雇・人員削減
・一時解雇、人員削減のための解雇、身体的・精神的支障を来した場合の解雇がある。それぞれ必要な補償額
を支払う。
常勤労働者側からの辞職についても、5年以上の就業者は相当の補償を受け取ることができる。
・不正行為による解雇は補償を支払う必要はない。解雇するには、前提として相手に非があるかどうか(窃盗、
無断欠勤等)が重要となる。円満退社のためには警告を出し、輸出加工区の場合は輸出加工区庁にも
申告しておく。
5.労働組合・労働争議
・労働組合は議長と書記長の署名のもと、該当地域の労働組合/労働局所長の登録機関に登録。組合員数労者
数の30%以上必要。
・地場企業の経営者による労働者の扱いは悪い。それに比べて日系企業のマネジメントは厳しくないため、労
働争議は少ないが、近隣工場で起こった争議が飛び火するケースもある。
6.近年の労働需給
・2010年代は毎年約200万人、2020年代は毎年約130万人の労働者が供給されると予測。
・ ワーカークラスは、工場が密集するダッカ首都圏でも募集をかければ、多くの応募が見込めるが、営業職等では経験豊富な人材は集まりにくい。
Ⅳ税制・税務手続き
1.法人税・優遇措置
(1)法人税率:37.5%(非上場の場合、上場企業は27.5%)
(2)優遇措置:輸出加工区(EPZ)8か所に進出した企業は5年間の所得税減免措置あり。
[1~2年目は免税、3~4年目は50%、5年目は25%免税]地方部に進出した企業にも最大5年の法人税
減免あり。
(3)その他 :総売上の0.5%が法人税額を上回る場合、最低法人税制度によって、代替的に総売上の0.5%
分を納税する。
2.個人所得税
(1)課税範囲:居住者の場合バングラデシュ国内源泉所得と国外源泉所得のいずれも課税対象。
非居住者は国内源泉所得のみ課税対象。
(2)税率 :累進課税方式により免税(20万タカまで)~25%。
25%の最高税率は年間120万タカを超える所得に課せられる。非居住者は一律25%。
(3)その他 :自動車を保有する個人に対しては、車種に応じて最大10万タカの自動車税を納税。
日本との二国間租税条約により、短期滞在者免税が認めらる。
3.源泉徴収税(日本向)
(1)配当 :15% (配当を支払う企業の25%以上の株式保有の場合は10%)
(2)利息 :10%
(3)ロイヤリティー:10%
***「日本バングラデシュ租税条約」 に基づく***
4.付加価値税
(1)付加価値税(VAT):15%(標準税率)
(2)課税対象:国内における物品販売やサービス提供を対象に課税。製品/サービスの輸入時にも課税。
5. 物品税・サービス税
(1)課税対象:特定商品・サービスに対し補足税が課税。
①対象商品の輸入時
②生産時
③サービスの提供時
(2)税率 :商品20%、35%、65%、100%、250%、350%、500%
サービス 10%、15%、35%
6.その他特記事項
輸出企業の場合、輸出額の0.8%を輸出代金の入金口座を管理している取扱い銀行が源泉徴収する。
縫製品、農産品の輸出企業の場合、輸出所得に対する法人税を同源泉所得が代替するため、最終納税額となる。
縫製品、農産品以外の業種の場合、輸出所得に対しても通常の法人税を課税するため、源泉徴収税は前払い法
人税として取り扱う。
Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)
1.送金・決済
(1)口座開設
①居住者、非居住者とも口座開設可能。非居住者には一定の制限がある。
②外貨口座は開設可能だが、一定の制限あり。
輸出加工区(EPZ)内の企業については、外貨保有で有利な条件が認められている。
(2)国内販売
①国内での代金決済はタカ建てで行われている。
②小切手が最も一般的。
(3)海外送金
技術料、ロイヤリティー、サービスフィーは前年度売上(またはプロジェクトコスト)の6%まで送金することができ
る。
前年度売上(またはプロジェクトコスト)の6%を超える場合、中央銀行や投資庁の事前強化が必要。
2.資金調達
(1)主な調達形態
〈現地通貨建て〉
・地場銀行・外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
〈外貨建て〉
・ 親子ローンなどの海外借入を行う場合、資金調達計画をバングラデシュ投資庁(BOI)に事前申請する。使途に
ついては資本財の輸入などに限られ、輸入する物品名や単価、数量まで記載が求めらる。
返済期間は6年以内。
(2)借入期間・金利
〈現地通貨建て〉
・ 貸出金利水準(2012年11月現在)は、銀行によって大幅に異なるが多くの銀行は大企業向け短期ローン(借入期間1年)が14~16%、中小企業向け短期ローンが、15~17%である。
・
〈外貨建て〉
・「国際金融市場における該当通貨、該当借入期間の金利と比較した際に適当な利率」と表現されており、明確な定義はなく、その他の条件とともに承認次第となる。
・ 親子ローンも可能。当局から低めの金利設定の誘導がある。
Ⅵ貿易・通関制度
1.輸出・入規制
(1)貿易管理:外国企業でも現地法人を設立したうえで、輸出入業務をする
ことは可能。ただし、輸出入に係わる許可証などを複数取得する必要があり、外国企業が手続きを進める難
しさもある。
(2)輸入規制:輸入登録証を取得する必要がある。
輸入政策令などに基づいて、禁止品目、規制品目が定められている。
(3)輸出規制:輸出登録証を取得する必要がある。
輸出政策令などに基づいて、禁止品目、規制品目が定められている。
2.貿易取引(決済)
(1)決済通貨:米ドルが一般的。
(2)貿易決済の規制は特に強くないが、L/C決済遅延が頻発している点を注意。
(3)輸出代金支払:信用状(L/C)が事実上義務となっている。
(4)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。
3.通関制度
・船積前検査を受けないで貨物を出荷すると、現地での輸入通関に支障が生じるため、十分注意が必要。
4.輸入関税、諸税
(1)関税率:鉱工業製品の平均譲許税率は39.7%、平均実効税率14%(ただし、譲許率は2.7%と相当低い)
(2)その他(輸入時):諸税(調整税5%、補足税20~500%、
付加価値税15%、前払所得税5%、前払貿易付加価値税3%)が課税。
5.特恵関税(日本)
日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税、無枠措置が
適用される。
Ⅶインフラストラクチャー
1.電力 ; (1)天然ガス67%、ファーナス油22%。
(2)総発電量:37,862GWh (2009年)
(3)需給状況(産業向け):産業向けの電力供給が優先されているが、
電力不足は解消されていない。
2.エネルギーコスト
〈ダッカ〉
①業務用電力料金:0.05~0.09ドル/kWh
②業務用ガス料金:0.03~0.12ドル/㎥
③レギュラーガソリン料金:1.08ドル/リットル
④軽油:0.74ドル/リットル
3.陸上輸送;(1)輸送環境(国内輸送):都市周辺の渋滞は年々ひどくなっているが、日系企業の商品輸送は夜間に行われ
るため影響は軽微。
(2)主要ルート:主に日本に輸出する際のチッタゴン港やダッカ空港への輸送ルートが中心。
4.港湾 ; (1)主要コンテナ港:チッタゴン港
(2)貨物取扱量:約139万TEU(2011年)
(3)主要工業団地への距離・時間:チッタゴン港からダッカEPZまで304KM、約1時間。
(4) 港湾でのハンドリングは悪い。
5.工業団地;(1)工業団地購入可否(運用上):土地を含め一般区の工業団地は外国法人による購入可。個人は不可能。EPZ
はリースのみ。
(2)リース料:月額0.1~01.8ドル/㎡(国内8ケ所のEPZ)
(3)整備状況:8ケ所のEPZは、電力、水道、ガスが整備されている。EPZ外の建物や土地をリースで確保
し拠点にする動きも出ている。
以上。
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、
実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】
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