Ⅰ進出形態・進出手続き
1.現地法人
(1)設立申請先 :パキスタン証券取引取引審議会(SECP)
(2)手続期間 :3日間~2週間(目安)[法人登記成立]。加えて中央銀行の認可取得や税務 登録、地方政府への登録
等が必要。
(3)活動範囲 :原則、禁止業種を除く、すべての領域で活動が許される。
(4)会社形態 :非公開株式会社、公開株式会社が一般的。
(5)責任範囲 :出資比率に応じて責任を負う。
2.駐在員事務所
(1)設立申請先 :投資庁(BOI)
(2)手続期間 :通常、書類の提出から6~8週間以内(目安)にBOIが審査を行い、決定。
(3)活動範囲 :営業活動が禁止される。
課税もされないが、マーケティング活動や連絡など、最低限の活動しか許されないため、指摘されないよう注意する必要がある。
(4)責任範囲 :本社が負う。
3.支店/支店
(1)設立申請先 :投資庁(BOI)
(2)手続期間 :6~8週間 (目安)
(3)活動範囲 :建設などに多い形態で、契約ベースでの事業活動ができるが、商業・貿易活動には従事できない。
(機械設備の輸入は可能)
(4)責任範囲 :本社が負う。
(5)撤退手続 :1か月程度要する。
Ⅱ外資規制
1.製造業 :原則、外資100%出資可能。最低投資額などの制約はない。
業種、活動内容、所在地、企業規模などの制約はない。政府の事前認可、業界団体からのライセンス取得は必
要としない。
2.卸売業・小売業
:卸売・小売業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万
ドル以上の投資が求められる。政府の事前認可、業界団体からのライセンス取得は必要としない。
3.運輸業 :運輸業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万ドル以上
の投資が求められる。 航空業については、パキスタン市民航空庁(CAA)、防衛省への申請、認可が必要とな
る。
4.運輸業 :運輸業は「サービス産業」に該当するため、外国企業が出資して現地法人を設立するためには、15万ドル以上
の投資が求められる。 パキスタン・エンジニアリング協議会(PEC)、地方の管轄局からのラインス取得が必
要となる。
5.金融・保険業
:銀行業は銀行法により、49%までしか出資が認められていない。パキスタン中央銀行の統制を受ける。
保険業はパキスタン証券取引委員会の統制を受け、51%までしか出資が認められない。
生命保険の場合は、最低資本金として1億5,000万ルピーが求められる。
それ以外の保険の場合は最低資本金として、8,000万ルピーが求められる。
加えて外国企業の場合は200万ドル以上の外貨をパキスタン国内に持ち込むことを求めらる。
Ⅲ労働事情
1.一般的採用手段
・非熟練のワーカーは街頭で募集しても容易に集まる。口コミで応募が送られてくることも多い。
・中間管理職や営業職ではインターネット、新聞広告を通じて募集。
2.労働条件
(1)労働時間:1日9時間、1週間48時間まで。工場では5時間ごとに30分、6時間ごとに1時間、8.5時
間ごとに2時間のいずれかを選択。ラマダンの時期はシフトをずらすといった対処も必要。
(2)休暇:工場では日曜が休日。有給休暇は12か月勤務したものに限り年間14日間の取得可能。
(3)時間外労働:賃金は通常の2倍。
3.賃金 ・最低賃金は基本給と生活費手当から構成される。金額は州により異なる。
・平均賞与は製造業作業員で2.2カ月、非製造業スタッフで1.9カ月。
4.解雇・人員削減
・労働者クラスは労働法によって保護されており、重大な過失がない限り、解雇はできない。
マネジャークラスは契約のみの関係であるため、労働裁判所に訴えることはできない。
・代表的な解雇方法は
① 自主退職制度:申し込みがあったら断れず、優秀な人ほど抜けていく。
② 人員削減:業績不振時、給料を1~3カ月支払って退職してもらえるが、次の採用で優先的に雇用する義務がある。
③ 一時的解雇:天災などがあった時に、2週間程度休職させる。
5.労働組合・労働争議
・日系企業では労働争議を経験していない企業が多い。
・一つの労働組合で、組合員数は従業員総数の1/5を下回ってはならない。
同じ企業内の複数の組合の中で、選出された組合が労使交渉にあたる。経営者は自社の労働者でなく、労働
組合が外部から雇った労使交渉専門の交渉人と話し合うことが一般的。
6.近年の労働需給
・労働者人口(15~64歳)は2010年時点で1億500万人が、2030年には1億5000万人、2055年のピーク
時には1億9100万人となる。
直近でも労働市場では人が余っており、労働者市場とは無縁な環境。
Ⅳ税制・税務手続き
1.法人税・優遇措置
(1)法人税率:35%
(2)優遇措置:2011年7月1日~2016年6月30日の期間に、借入金なし
で製造業の現地法人を設立する企業には、法人所得分のタックスクレジットが5年間付与される。
同クレジットは他の税金と相殺される。また、EPZ入居企業は輸出所得に対し、輸出額(FOB)の1%を
納税すれば法人税を代替する。
(3)その他 :売上高の1%が法人税額を上回る場合、ターンオーバー・タックスとして、同相当額を納税す
る義務が発生する。
2.個人所得税
(1)課税範囲:居住者の場合、パキスタン国内源泉所得と国外所得のいずれも課税対象。非居住者は国内源泉
所得のみ課税対象。
(2)税率 :累進課税方式により居住者は5~25%。40万ルピーまでは免税。最高税率は250万ルピーを超える
所得に対して課税。
(3)その他 :日本との間では二国間租税条約に基づき、短期滞在者免税が認めらる。
3.源泉徴収税(日本向)
(1)配当 :10% (配当受取側の持株割合50%以上の場合5%、25%以上で7.5%)
(2)利息 :10%
(3)ロイヤリティー:10%
***「日本パキスタン租税協定」に基づく***
4.付加価値税:(1)付加価値税:売上税(Sales Tax)として16%(標準税率)
(2)課税対象:原則、すべての製品、サービスの国内販売および輸入に対して課税される。
5. 物品税・サービス税
(1)課税対象:特定商品・サービスの国内での製造・提供、および輸入に対して連邦物品税が課せられる。 (2)税率 :標準税率 16%
6.その他特記事項
基本投資インセンティブとして、「国内で生産されていない」工場設備、機械類、機器類の輸入に対する関税減
免や売上税の減免が規定されている。
Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)
1.送金・決済
(1)口座開設: ①居住者・非居住者ともに口座開設可能。
②外貨口座は一定制限のもとに開設可能。
(2)国内販売: ①現地通貨パキスタン・ルピー建てで行われる。輸出加工区[EPZ]内は、ドル建てが可能。
②小切手による決済が一般的。
(3)海外送金: 配当、技術的役務、フランチャイズ料、ロイヤリティーなどに基づく送金が認められている。
中央銀行への各種書類提出が求められる。
2.資金調達
(1)主な調達形態
〈現地通貨建て〉・地場銀行、外資系銀行からの現地通貨建て借入は可能。
〈外貨建て〉 ・地場銀行、外資系銀行からの外貨通貨建て借入は原則認められない。
ただし、外貨収益からローンの返済できる立場に輸出業者および間接輸出業者は、国内の商
業銀行を通じ外貨建て借入が認められる。
・親子ローンなどでの調達は可能。
(2)借入期間・金利
〈現地通貨建て〉・借入金利は10~13%程度。(2012年11月時点)
土地を担保として求められることが一般的。
〈外貨建て〉 ・親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。
Ⅵ貿易・通関制度
1.輸出・入規制
(1)貿易管理:外国企業でも現地法人を設立したうえで、輸出業務をすることは可能。
(2)輸入規制:輸入政策令に基づいて輸入禁止・規制品目を定めている。
(3)輸出規制:輸出政策令に基づいて輸出禁止・規制品目を定めている。
2.貿易取引(決済)
(1)決済通貨:米ドル、ユーロが多い。(円、ポンドでも決済)
(2)輸出代金支払:信用状(L/C)が一般的。
(3)輸出代金回収:信用状(L/C)が一般的。
輸出取引の場合、船積後6カ月以内に決済する必要がある。さらに、パキスタンの厳しい外貨繰の関係から、
前払代金を含め、外貨で支払われた輸出代金を3日以内にルピーに替えるように銀行から指示。
3.通関制度 ・パキスタン税関電子化システム(PaCCS)が導入されているが、2011年からウェブ・ベース統一税関(WeBOC)
というシステムが導入された。
4.輸入関税、諸税
(1)関税率:鉱工業製品の平均譲許税率は54.6%、平均実効税率13.4%。(譲許率は99.1%)
(2)その他(輸入時):原則としてすべての輸入品に関税込価格ベースに一律16%の売上高が課税される。加え
て連邦特別消費税(1%)、源泉税(4%)、および中央物品税が課せられる。また、特定の品目に調整関税、
追加関税、特別関税などが課税。
5.特恵関税(日本)
日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象とはならないが、一般特恵関税制
度の対象になり、一般の関税率より低い特恵税率が適用される。(品目によって免税にならないものもある)
Ⅶインフラストラクチャー
1.電力 (1)天然ガス66%、水力30%。
(2)総発電量:95,400GWh (2009年)
(3)需給状況(産業向け):需要に対して供給能力が圧倒的に不足。
自家発電機の設置は不可欠、変圧器が必要な場合もある。
2.エネルギーコスト 〈カラチ〉
(1) 業務用電力料金:0.89~25.8ドル/kWh
(2) 業務用ガス料金:163.66~188.32ドル/MMBtu
(3) レギュラーガソリン料金:0.99ドル/リットル
(4) 軽油:1.09ドル/リットル
3.陸上輸送 (1)輸送環境(国内輸送):国道・高速道路は国内交通量の80%を占め
るが、国道は整備されておらず、トラックは主要幹線道路で時速40~50kmしか出せない。
鉄道は主にカラチ港に貨物を運ぶ際に使用される。
日系企業は通常ディーラーを使用して販売しているため、国内物流を直接課題として感じることは少ない。
4.港湾 (1)主要コンテナ港:カラチ港、カシム港
(2)貨物取扱量:約150万TEU(2011年/12年度)
(3)主要工業団地への距離・時間:カラチ港からカラチEPZまで35KM、 約1時間。
(4) 港湾でのハンドリングは悪い。
5.工業団地 (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、
リースとなる。
(2)リース料:月額0.125ドル/㎡(カラチEPZ、30年)
(3)整備状況:輸出加工区庁が開発・管理するEPZが10カ所あり、カラチEPZが最大の進出候補。
EPZは優先的な電力供給、十分な水道供給があり進出すると有利。
国内販売目的には、「国家工業団地開発経営公社」開発の工業団地が用意されている。
以上
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp
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