2016年5月2日月曜日

[152] 第3回ミャンマーへの企業進出の概要【国際政経】

第3回はミャンマーです^^(参考資料;JETROアジア進出より)
        

     
Ⅰ進出形態・進出手続き  
 1.現地法人 
      (1)設立申請先 ; 投資企業管理局(DICA)企業登記室(CRO)。外国投資法の適用を受ける場合は、ミャンマー投資委員会(MIC)の事前認可が必要。
  (2)手続期間 ; 投資提案の提出から15日以内に受理が判断され、受理された場合はその後90日以内に投資提案を許可するか判断。登記自体は1日で完了。(目安)
  (3)活動範囲 ; 外国資本が入る会社は、外国会社扱いとなり、輸出入や販売などの商業行為は認められない。資源分野の場合事業を管轄する関係官庁へ事前説明の上、活動範囲を協議。
  (4)会社形態 ;  株式有限責任会社が一般的
  (5)責任範囲 ; 株主の責任が基本定款により保有株式(未払込分を含む)に限定される。

 2.駐在員事務所 
  (1)設立申請先 ; 投資企業管理局(DICA)企業登記室(CRO)。
  (2)手続期間 ; 現地法人と同様、投資提案が提出されてから15日以内に受理するかどうか判断され、受理した場合はその後90日以内に投資提案を許可するか判断される。登記は1日。(目安)
  (3)活動範囲 ; 本国の親会社が銀行業・保険業の場合のみ、駐在員事務所の設立が許可される。営業行為は一切認められない。
  (4)責任範囲 ; 本社が負う。

 3.支店 
  (1)設立申請先 ;投資企業管理局(DICA)企業登記室(CRO)。
  (2)手続期間 ;現地法人と同様、投資提案が提出されてから15日以内に受理するかどうか判断され、受理した場合はその後90日以内に投資提案を許可するか判断される。登記は1日。(目安)
  (3)活動範囲 ;本国にある親会社の代理業務を行う。外資規制上、現地法人と同様に商業 行為は認められない。
  (4)責任範囲 ;本社が負う。

Ⅱ外資規制  
1. 製造業 ; 原則、外資100%出資可能。ただし、2013年1月末に外資法細則(以下細則)で示された分野に該当する場合、現地企業との合弁や特別な条件を満たすことが求められる。同分野で合弁する場合、外資の出資は80%まで。(細則以外分野では制限なし)
2.卸売業 ; 細則において、卸売分野への外資参入は「商業省見解」に従うことにより可能。ただし、その具体的記述はなく、2013年2月の時点では、外国企業が「商業」に従事することは運用上認められていない。(合弁も不可)商品の輸入(貿易)に直接従事することも不可。ミャンマー国内販売を検討する場合、輸入販売店・代理店となる現地企業を探す必要性がある。(2013年2月時点)
3.小売業 ;  細則に従い、一定の条件(2015年以降、投資額300万ドル以上等)を満たせば、外国企業の小売業の参入が可能になったと理解される。ただし、細則の複数の条項で「小規模小売業」「ミャンマー企業の既存店舗から近接した場所」への参入は認めていない。案件ごとに、投資企業管理局(DIGA)へ確認要。商品の輸入(貿易)に直接従事することも不可。(2013年2月時点)
4.運輸業 ; ASEANとの経済統合の中で、ASEAN域内企業の投資には2013年までに合弁で70%までの出資比率を認め、運用が始まっている。ASEAN域外の企業にも同様の基準が適用されると思われるので、運輸省、鉄道省と事前協議が必要。なお、合弁相手はミャンマー国際フレート・フォワダー教会など所属の現地企業となる。
5.建設業 ;  建設省からの推薦を得れば、建設会社を設立することができる。この推薦を得るには、民間団体であるMyanmar Engineering Society傘下の Myanmar Board of Engineers の推薦を得る必要があるので同団体と相談。また、細則で「オフィスビル建設、販売」などに該当する場合は合弁のみ。建設省所管分野で「オフィス・商業ビル建設、賃貸」を外資100%で行う場合は、BOTのみ認める。
6.金融・保険業;外国企業は合弁も含め認められていない。(2013年2月現在) ただし、中央銀行の承認により駐在員事務所の開設はできる。

Ⅲ労働事情  
 1.一般的採用手段; ・労働者、高度人材ともに貼り紙、口コミ、新聞広告などを通じて募集。
       ・5人以上の従業員を雇用する会社が新たに雇用する場合は、労働事務所を通じて採用する必要がある。
 2.労働条件 ;(1)労働時間:1日8時間、1週間48時間まで工場では:1週間44時間(連続操業工場の場合は48時間限度)
   (2)休暇:就業日は週6日(工場は日曜日が休日、商業施設等は週のいずれかの曜日)12か月連続して働き、かつ各月24日以上働いた者は連続10日間の有給休暇を取得可能。
   (3)時間外労働:週12時間を超えてはならない。超過時間の標準賃金は2倍、休日出勤時の標準賃金も2倍。
 3.賃金 ;平均賞与は製造業作業員で1.1カ月、非製造業スタッフで1.5カ月
 4.解雇・人員削減; ・雇用者の都合による解雇の場合、勤務年数に応じ補償をする必要がある。
          ・雇用契約書であらかじめ非違行為・懲戒事由を定め、現地慣行に従い3度に渡り正式に警告した上で是正されない場合、退職金を支払わず解雇可。
 5.労働組合・労働争議;・工場などの労働者は最低30人によって組織することができ、30人に満たない工場などは同種の工場などと労働組合を結成できる。
・ ストライキは、官による公共サービスに係わる場合は、少なくとも14日前、官による公共サービスでない場合、少なくとも3日前には使用者および調停機関に対して通知しなければならない。
6.近年の労働需給 ; ・労働可能な人口、また若年労働力も豊富とみられるが、工場周辺、都市部に居住する人口が限られ、ワーカーを十分に確保できない点が課題。
・周辺国に比べ識字率が高い。15歳以上の識字率は、男性94.8%、女性89.9%。また15歳から24歳に限るとその率はさらに高くなる。

Ⅳ税制・税務手続き  
 1.法人税・優遇措置 ;(1)法人税率:25%
       (2)優遇措置:外国投資法に定める要件に基づき設立された企業は、生産・役務の提供開始から5年間、法人所得税免除が認めらる。申請によりミャンマー投資委員会(MIC)が個別に決定。
 2.個人所得税 ;  (1)課税範囲:居住外国人(年度内に183日以上滞在する外国人)はミャンマー国内源泉所得と国外源泉所得のいずれも課税対象。非居住外国人は国内源泉所得のみ課税対象。
       (2)税率  ::給与所得の場合、累進課税方式により1~20%、最高税率は2000万チャット(約23500ドル)以上の所得に課税。
       (3)その他 :適用税率は所得の種類(財産、事業他)によって異なる。
 3.源泉徴収税(日本向); 
   (1)配当  : 0% (投資委員会の認可が必要)
   (2)利息  : 15%
   (3)ロイヤリティー : 20%  

 ***日本との二国間租税条約、不締結***
4.付加価値税 ;(1)付加価値税:商業税として原則5%(奢侈品に対しては8~100%)
      (2) 課税対象:すべての事業者に対して、商品の販売・サービス提供に課税。
5. 物品税・サービス税;
            (1)課税対象:酒類や薬品等特定の品目を製造・販売する際に物品税として、一種のライセンス料を毎年支払う。
      (2)税率:定率ベースでなく、品目・生産量に応じて毎年一定額を支払う。
6.その他特記事項 ; 税務当局による不透明な制度運用や税務手続きに要する時間などの問題が指摘される。所得税法上でも課税対象や範囲が不明瞭な税金が存在する。現地会計事務所などに相談し、事後に問題が生じないような処理を行う。

Ⅴ金融・外国為替(送金・決済、資金調達制度)  
 1.送金・決済  
  (1)口座開設; ①居住者、非居住者とも口座開設可能。
       ②ミャンマーでの口座開設は、居住者、非居住者ともにチャット口座、外貨口座共に開設が認められる。
           ただし、非居住者口座は各種の提出書類が求められる。現在では、外貨口座は民間の商業銀行でも取り扱う。
  (2)国内販売 ;①現地通貨チャット建てで行うことが求められる。
           ②現金決済が主流。小切手も利用される場合がある。クレジットカードなども段階的に利用できるようになっている。
  (3)海外送金 ;ミャンマー国内からの海外送金は厳しい規制がある。配当・ロイヤリティーなどの送金についてはミャンマー投資委員会(MIC)や中央銀行からの許可取得が求められる。

 2.資金調達 ;
  (1)主な調達形態;〈現地通貨建て〉 ・現地通貨建て借入は可能。
        〈外貨建て〉  ・親子ローンなどで調達は可能。
  (2)借入期間・金利〈現地通貨建て〉
・金利は、13~15%程度(2013年1月時点)。土地を担保として求めらることが一般的であり、土地所有権が認められていない外資系企業が借り入れることは実質的に困難。
            
〈外貨建て〉
・ 親子ローンの金利は、市場金利を勘案し親子で取り決める。

Ⅵ貿易・通関制度  
 1.輸出・入規制  
   (1)貿易管理:外国企業による農水産物等の物品取引を目的とした貿易業は認められていない。ただし、製造、サービスに付随して行う輸出入可能。
   (2)輸入規制:原則、すべての品目について輸入ライセンスが必要だが、国際的な取引禁止品目やアルコール飲料など、一部を除き輸入が認められる。
   (3)輸出規制:原則、すべての品目について輸出ライセンスが必要だが、農産物、鉱物の一部を除き輸出が認められる。林産品など事前許可が必要なものもある。
 2.貿易取引(決済) 
   (1)決済通貨:米ドルが一般的。
   (2)輸出入ライセンスを取得していれば可能。
   (3)輸入代金支払:信用状(L/C)、電信送金(T/T)ともに可能。
   (4)輸出代金回収:信用状(L/C)を入手するか、前払のT/T送金が必要。
 3.通関制度 ・輸出通関では、送金の場合は支払通知を必要とする(前払送金を受けている必要あり)点が留意事項。
   ・輸入通関では、ミャンマーの取引銀行(L/C発行銀行)で決済し、船積書類を入手したうえで通関手続きを開始する。なお、輸入ライセンス取得前に当該貨物が相手業者から輸出された場合、ペナルティーが科せられるので注意が必要。
 4.輸入関税、諸税  
   (1)関税率:鉱工業製品の平均上限関税率は23%。(ただし、譲許率は5.1%と相当低い)
   (2)その他(輸入時):輸入関税課税対象額+輸入関税をベースに商業税が課せられる。そのほか、個別の輸入ライセンス取得時には、貨物に応じて輸入ライセンス料が徴収される。
5.特恵関税(日本)日本に輸出する場合は、「後発開発途上国(LDC)向け特別特恵措置」の対象となり、原則、無税・無枠措置が適用される。

Ⅶインフラストラクチャー  
 1.電力 ; (1)水力約75%。
   (2)総発電量:8,548GWh(2010年度)
   (3)需給状況(産業向け):特に乾期はダムの貯水量が減る一方、猛暑のため消費電力も増え、電力需要が満たせなくなるという構造的な問題を抱える。政府は電力不足回避に向け、ミャンマーの民間および外資に電力事業への参入を促している。
 2.エネルギーコスト ; 
   〈ヤンゴン〉
     ①業務用電力料金:0.12ドル/kWh
     ②業務用ガス料金:7.74ドル/1000立法フィート
       ③レギュラーガソリン料金:1.04ドル/リットル
     ④軽油:1.15ドル/リットル
 3.陸上輸送; (1)輸送環境
(2)主要ルート:進出日系企業が活用しうる主要ルートは、ヤンゴン-ミャワディ(タイ国境]ルート。ミャンマー国内側の道路の舗装状況が悪い。
 4.港 湾 ; (1)主要コンテナ港:ヤンゴン港(ヤンゴン港、ティラワ港)。ともに河川港。
    (2)貨物取扱量:約33万TEU (2010年)
    (3)主要工業団地への距離・時間:(狭義の)ヤンゴン港はヤンゴン市街地に近い。ティラワ港はヤンゴンから河口を23km下った地点。

 5.工業団地; (1)工業団地購入可否(運用上):外資系企業(独資、合弁とも)による土地・工業団地の購入は不可で、リースとなる。
     (2)リース料:月額0.255ドル/㎡(地場工業団地、借地料、管理費含む)月額0.15ドル/㎡(ミンガラドン工業団地、管理費、税込、2048年まで)
           (3)整備状況:インフラ整備が国際水準を満たすミンガラドン工業団地は、空きがない。その他の17の工業団地が進出先候補となるが、配電、水道などのインフラは自ら整備する必要がある。
                                                   以上。
                                      
    
     
注意)この記載内容はJETRO最新版2013年を参考に抜粋しておりますが、近年の経済環境に変化はめまぐるしい為、
実際に進出される場合には入念に調べたり、専門家にアドバイスを受けてから実行されるようにしてください。
        
 【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】

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