2016年9月12日月曜日

[190] 介護分野に関する調査報告書【国内政経】

2016.9.5に公正取引委員会は、介護分野の現状について調査・検討を行い、競争政策上の考え方を整理し、調査報告書を公表しています。公正取引委員会としては、介護分野について検討を行うに当たっては、[1]多様な事業者の新規参入が可能となる環境、[2]事業者が公平な条件の下で競争できる環境、[3]事業者の創意工夫が発揮され得る環境、[4]利用者の選択が適切に行われ得る環境が整っているかといった点が重要であると考えているようです。なお、調査報告書の要旨は、以下のとおりとなっています。

<1> 提供主体等による規制の緩和:特別養護老人ホームの開設主体に係る参入規制については、多様な事業者の新規参入を図るためにこれを撤廃し、医療法人、株式会社等が社会福祉法人と対等の立場で参入できるようにすることが望ましいとし、多様な事業者の新規参入を図る観点から、自治体が設置する特別養護老人ホームにおいて、株式会社等を指定管理者とするように、指定管理者制度を積極的に活用していくべきであるとしています。
<2> 需給調整を目的とした規制の緩和:自治体は、介護保険事業計画等の本来の目的に立ち返り、総量規制を適切に運用すべきであり、あわせて、選定基準を明確化し、客観的な指標に基づいて選定を行うなど、恣意性の排除を図るとともに選定の透明性を高めるべきであるとしています。
<3> 補助制度・税制等の見直し:自治体は、助成・補助に当たっては経営主体による差異を設けないように求める厚生労働省の通知の趣旨を踏まえ、独自に行う補助制度について、法人形態を問わず公平な補助制度とすべきであるとしています。なお、特別養護老人ホームに対する補助は、例えば、低所得者層の自己負担の軽減等といった公益的な役割を果たすために必要な範囲で行われるべきであり、それを超える過剰な補助は好ましく、社福軽減事業についても、導入していない自治体においては、法人形態を問わずに利用できるようにすることが望ましいとしています。また、社会福祉法人に対する税制上の優遇措置等については、基本的枠組みは維持するとしても、株式会社等が提供可能な介護サービスと同一の介護サービスを提供する場合には、その部分について社会福祉法人に対する税制上の優遇措置は除外する方向で検討することが望ましいとしています。
<4> 介護サービス・価格の弾力化:介護サービス事業者間の競争を促進し、介護サービスの効率性の向上や利用者の多様なニーズに応えるためには、混合介護の弾力化を認めることにより、事業者の創意工夫を促し、サービスの多様化を図ることが望ましいとしています。介護付き有料老人ホームの体験入居費について、割引提供を行おうとすると、一部の自治体から値引き提供を禁止する指導が行われるなど、事業者の価格の弾力的な運用を妨げる指導が行われているといった指摘があり、このように、自治体によって制度の解釈や運用が異なると、事業者が十分に創意工夫を発揮できなくなるため、国は、自治体により事業者の創意工夫を妨げるような運用が行われることがないよう、制度の解釈を明確化し、事業者の予見可能性や透明性を高めるべきであるとしています。
<5> 情報公開の促進:事業者には、利用者が入手しやすい方法により、更に積極的な情報公開を行うことを期待したい。国は、介護サービス情報公表制度の抜本的な見直しを含めて、その在り方について検討すべきであるとしています。
<6> 第三者評価の活用:自治体においては、第三者評価の対象となるサービスをできるだけ拡大し、事業者が第三者評価を受審できる体制を整えるとともに、受審を促進するための積極的な施策を講じるべきであるとし、事業者においては、第三者評価の必要性や意義を十分に認識し、積極的な受審や評価結果の公表に努めるべきであるとしています。

詳細は、公正取引委員会のWebサイトをご覧ください(http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/sep/160905_1.html)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士・税理士 松澤公貴】 Webサイト | www.jp-kmao.com

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