2015年4月30日木曜日

[50] 海外からのネット配信にAmazon税?【国内税務】 

♪海外取引にも消費税がちょっとづつ!
 


     
◆変更の内容です
2015年10月より、海外からインターネットで日本に配信される電子書籍や音楽などが消費税の課税対象になります。「電子書籍・音楽・広告の配信等の電気通信回線を介して行われる役務の提供を『電気通信役務の提供』(仮称)と位置付け、国内外の判定基準を、役務提供者の事務所所在地から、役務の提供を受ける者の住所地等に見直す! としています。それから海外からのネット配信は、そのサービスの提供が事業者向けと消費者向けで課税方法が異なります。

◆消費者向けの場合(B to C)
個人消費者向けにおいては『登録国外事業者制度』が創設され、そのサービスを提供した国外事業者が日本の国税当局にこの登録を行い消費税を納めます。そして消費者は国外事業者に消費税を上乗せした代金を支払うことになります。

◆事業者向けの原則(B to B)
広告などの事業者向けの場合は、その取引に係る消費税の納税義務を、サービスを受ける事業者に転換する『リバースチャージ方式』として導入します。引き受けた電気通信役務の提供(「特定仕入れ」)を課税対象とし、国内において行った課税仕入れのうち特定仕入れに該当するもの(「特定課税仕入れ」)を納税義務の対象とします。

リバースチャージ方式の導入に伴い、国内事業者には一定の事務負担が生じることになります。ただし、課税売上割合が95%以上である事業者等の場合は、リバースチャージ方式による納税額とほぼ同額の仕入控除税額が計上されることも踏まえ、事業者の事務負担に配慮する観点から、当分の間の措置として「リバースチャージ税額」と「リバースチャージ税額に係る仕入税額控除」を同額とみなして申告対象から除外すことが可能になります。
◆事業者向けの例外(B to B)        
国内事業者が国外事業者から消費者向けのサービス(電子書籍や音楽の配信など)を受けることが当然想定されるわけですが、この場合国外事業者が執行管理の及ばない外国に所在することより、“納税なき仕入税額控除”という問題が生じる可能性があるので当分の間仕入税額控除を認めないとしています。ただし上記記載の『登録国外事業者』に該当する者から受けた場合は、その登録国外事業者の登録番号等が記載された請求書等の保存等を要件として仕入税額控除を認めることにしています。
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★外国企業が『登録国外事業者』に登録しているかどうかで、日本企業の消費税の納税に影響がでるようです。
<ご注意>
上記の記載内容は、平成27年2月23日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
**** ひとりごと ****
身近に影響される事としては、今年の10月からは日本消費者がインターネットで配信された音楽などを、海外企業から購入した場合は、消費税を上乗せした金額を支払うということになりそうです。思い浮かぶのは、米アマゾンや楽天のカナダ子会社「Kobo」など海外に本店を置くインターネット業者から日本国内に配信された電子書籍や音楽データの取引の場合などですね…。
なぜこのような展開になったのでしょうか。
元をたどれば、建前は“アマゾン税”の実現のため!?という説。 ただしNet消費者を国内に呼び戻すという事が前提になっています。たとえば半沢直樹シリーズの「銀翼のイカロス」の価格は国内電子書店では消費税込み1,620円ですが、米アマゾンの電子書店や、楽天の「Kobo」では1,500円で消費税8%がかからない分安くなります。つまり、消費が国内から国外に逃げることを防止するという狙いがあるとの話ですが、実際のところ「Amazon税」的なものを実現する為に国内外事業者間の不公平感が口実として使われたという感じとも拭えません。
国税的にはそれ相応の成果を見込めるかもしれませんが、Amazon税を設けて恩恵を受けるはずの国内事業者は市場競争で今後有利に戦えるようになるのかというと、今のところそれは楽観的すぎる見方なのかなと感じなくもありません。
なぜなら、「Amazon税」の導入はいままでAmazonが海賊的に有利だったのが、今回の措置でイーブンになっただけ」という意見もあり、競争環境を整備しても国内事業者が恩恵を蒙るどころか一掃されてしまうことだって考えられる。
しかし、それにもまして大変なのは「どうやって消費税を海外業者に遺漏なく納めさせるのだろうか?」という点かもしれせんし、国内事業者の事務負担ですね。結局のところ消費税分の値上げのところだけ口実に使われて国庫に納税されないという可能性だってありえ今後の着目点となりそうです。

【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】
Webサイト/
http://et-inc.jp

2015年4月27日月曜日

[49] 今、不正発覚が増加しています【国内不祥事】

東京商工リサーチによると、「2014年度(2014年4月~2015年3月)に「不適切な会計・経理」により過年度決算に影響が出た、あるいは今後影響する可能性があることを開示した上場企業は42社であり、これは、2013年度(38社)を上回り、調査開始以来、最多を記録した」と2015.4.22に公表しています(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20150422_01.html)。

実は、私も不正調査を業とする公認会計士として、クライアントからの依頼の状況等から同じような感覚を持っています。


一般的に不正リスクは、景気後退期や不況期に高くなり、景気上昇期や好況期には低くなると言われています。この理論からすると、当該統計資料は寧ろ逆に見えるかもしれません。しかし、不正には「発生」するタイミングと「発覚」するタイミングとではラグがあり、景気上昇期や好況期には「発覚」する件数が増加するのではないでしょうか。全く根拠はなく、不正発覚の要因はこれだけではないでしょうが、これが私の実感です。

なお、グラフは、東京商工リサーチの統計資料に、日経平均を併せて当事務所が作成したもので、日経平均は、期初(XX.4.1)の終値と期末(XX.3.31)の終値を単純平均したものです。震災があった2011年を除き、私の実感に近い感じがするのは気のせいでしょうか。

【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】
Webサイト/
www.jp-kmao.com

2015年4月23日木曜日

[48] 日中関係若干の雪解け【国際政経】

先日日中首脳会談が行われました。

昨年末に行われた会談と比べると両首脳の笑顔も増え、今後の日中関係が改善の方向に進むのではないかと期待しております。やはり中国は世界第2位の経済大国で地理的にも近く、日本にとって重要な国であることは変わりません。両国とも協力して東アジア地域の経済的発展と政治的安定を促進してほしいです。
ところで、首脳会談のニュースでは「日中両首脳は戦略的互恵関係を推進し、地域や世界の安定や繁栄に貢献することで一致した」という内容が
書かれていますが、何かこれって当たり前の話でわざわざそんな当たり前のことを確認するために首脳会談やるのかとちょっと疑問を感じます。詳細は事務方が詰めていて、首脳は会って話すことに意義という意見もあると思いますが、実際にどういう感じで話をしているのか最初から最後まで聞いてみたいですね。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年4月20日月曜日

[47] 2015年度税制改正「ふるさと納税がさらに優遇」【国内税務】

いつもの寄付金控除に追加される制度です!
◆ふるさとへの納税
最近耳にすることが増えましたが、内容はだいたい次の通りです。
ふるさと納税とは、自分の生まれた故郷に限らず、他にも応援したい自治体等の都道府県・市区町村に対して寄附を行う事です。その上でその寄付金を所得税・個人住民税から控除し、個人所得・住民税を減額してあげようとのいうのが狙いです。これにより通常の寄附金控除に加えて個人は税額控除を増やす事ができます。
*今年の税制改正では地方創生を推進するための施策の一つとして、このふるさと納税の促進策が盛り込まれています。


◆制度のしくみ
寄附金のうち2,000円を超える部分について、一定部分まで所得税・個人住民税から全額が控除する事ができます。
具体的な控除額の計算は、
①所得税…「所得控除額(寄附金-2,000円)×所得税率」を軽減。
②個人住民税…基本部分として「(寄附金-2,000円)×10%」が税額控除されます。
③さらに、控除できなかった寄附金額は、
個人住民税の特例分として「(寄附金-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税率)」の計算により全額控除できます。

◆今年の税制改正
さて今年の税制改正の内容ですが、
①個人住民税の特例控除額の上限が引上げられます。⇒現行1割ですが、2016年度分以後の個人住民税からは2割に引き上げられます。
確定申告をしないサラリーマンについては2015年4月から、ふるさと納税を簡素な手続きで行える「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されます(ただし5つの自治体まで6つ以上なら今までどおり確定申告)。
②国は同時に、地方公共団体に対して返礼品等のお礼は、寄附金控除の趣旨を踏まえ良識ある対応を要請しています。
※上記の記載内容は、平成27年2月23日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

***** ひとりごと  ***** 
国が要請しているように、ふるさと納税が経済的利益の無償の供与であることや、通常の寄附金控除に加えて更に特例控除が適用される制度であることから、地方公共団体は豊かな地域社会の形成や、住民の福祉の増進に寄与するための都道府県・市区町村のふるさと納税である事を住民に十分に周知させ、募集等の事務を行い、当然その通りに資金を使用してほしいものです。

<参考>
どの自治体に寄付するかですが、だいたい寄付額の半額程度のプレゼントをしてくれるところを狙っているようで、カニ好きの方が多いのにもびっくりです。このあと7位~10位も全てカニがランキング!ちなみに蟹の種類って多いのですね(笑)
★2014年度(8/13時点)のギフトランキング
1位  :鳥取県   紅ズワイガニ
2   :北海道紋別市 毛ガニ
3   :鳥取県鳥取市 親ガニ
4   :鳥取県琴浦市 松葉ガニ
5   :大分県高田市 岬ガニ
6   :大分県宇佐市 豊幸ガニ
  
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】
Webサイト/
http://et-inc.jp

2015年4月16日木曜日

[46] 何もしてくれない監査役に報酬を払うくらいなら監査等委員会設置会社に移行しよう【法務】


周知のとおり、2015.5.1に施行予定の改正会社法において、監査役設置会社制度、指名委員会等設置会社制度に次ぐ、株式会社の第三の機関構成として、「監査等委員会設置会社制度」が創設されています。同制度に対しては色々な見方がされ、様々な評価がされていますが、「何もしてくれない監査役に報酬を払うくらいなら監査等委員会設置会社に移行しよう」というのが現段階における私の制度への評価です。

なお、同制度は、多くの大会社が採用している機関構成である監査役会設置会社と比較すると、下記のようになっています。

A.監査役、監査役会が設置されない。その代わり、3名以上(過半数は社外取締役)の「監査等委員である取締役」によって構成される監査等委員会が設置される。

B.「監査等委員である取締役」は、取締役会の一員として決議に当たって賛否の一票を投じることができる。

C.監査等委員会が選定した監査等委員は、株主総会において「他の取締役」の選任議案・報酬等について意見を述べることができる。

D.監査等委員会の監査権限は、適法性監査だけではなく、妥当性監査にも及ぶ(なお、監査役会は、適法性監査のみ)。

E.一定の要件を満たせば、取締役会決議事項の一部を、個別の取締役に委任することができる。

G.「監査等委員である取締役」の任期は2年以内、「他の取締役」の任期は1年以内(なお、監査役会設置会社の取締役は2年以内、監査役は4年以内)。


すなわち、監査役会設置会社と比較して「複数の社外取締役が設置」され、「経営者人事にも社外取締役が一定の関与を行うことが可能」であり、「適法性のみならず妥当性にも踏み込んだ監査が可能」となっています。

多くの経営者はどのように考えるのでしょうか。移行会社に注目です(経営財務が2015.3.31までに監査等委員会設置会社へ移行を表明した会社を集計したところ58社であった旨の記事が経営財務3208号に掲載されています)。

【執筆者:公認会計士松澤公貴】
Webサイト/
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2015年4月13日月曜日

[45] 平成27年度予算の成立【国内政経】

2015.4.9に平成27年度の予算が成立しました。総額96兆円と過去最大の予算ですがアベノミクス加速のため経済成長を重視した予算となっているようです。やっと上向いてきた景気を本格的なものとするため経済成長優先の予算は正しいと思いますが、やはり国の借金も気になります。


 増加する社会保障費に対する歯止めはかかりませんし、財政の抜本的な改革は先送り的な印象です。ひとまず簡単なところで公務員の削減から始めてほしいものです。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年4月9日木曜日

[44] マイナンバー制度スタート、でも銀行も必要なの?【国内税務】

源泉徴収票はA5サイズ(as Samsung GALAXY)
国税庁では、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)の利用開始に向け、個人・法人の番号を記載することになる国税書類様式の提供スケジュールの公表等の準備を進めています。
◆スケジュール
① 今年(2015年)10月から個人番号・法人番号の通知が始まります。
② 来年(2016年)1月から順次、社会保障、税、災害対策分野で利用が開始される予定です。
③ すでに、「配当・剰余金の分配及び基金利息の支払調書」や「報酬・料金・契約金及び賞金の支払調書」、「生命保険契約等の一時金の支払調書」、「生命保険契約等の年金の支払調書」、「先物取引に関する支払調書」、「特定口座年間取引報告書」の法定調書6様式(イメージ)が公表されており、
④ 年末調整の関係様式は今年の9月下旬に確定する予定です。
⑤ 所得税や相続税・贈与税・消費税などの申告書・申請書・届出書等は6月以降に確定し、その他の税務関係書類も順次公表される予定です。
◆大きさの変更
様式変更に伴い、法定調書のサイズも変わり、給与所得の源泉徴収票は、現行のA6サイズからA5サイズに大きくなります。なお、本人交付用の源泉徴収票には支払者の番号は記載しないこととなっております。
◆作成時の変更
各様式には、個人番号や法人番号を記載する箇所が設けられます。
例えば、
①事業者が個人に講演料などを支払った場合、
まず、事業者は個人から番号の提供を受け、その際個人番号カードにより本人確認を行う必要があります。
⇒ 次に「報酬・料金・契約金及び賞金の法定調書」に、その講演者の個人番号、支払者として事業者の法人番号を記載します。
② 年末調整の場合、
まず、年末調整時に従業員に提出させる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」などは、給与所得者本人のほか、控除対象配偶者、控除対象扶養親族の個人番号の記載も必要になります。ただし個人番号の確認については提供を行う給与所得者本人のみを確認することになります。

※ 上記の記載内容は、平成27年3月9日現在の情報に基づいて記載しており、今後の動向によって税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性がありますので、記載の内容等は将来にわたって保証されるものではありません。
***** ひとりごと  ***** 
政府はさらに金融機関に対して、預貯金口座情報をマイナンバー又は法人番号によって検索管理できるように義務付け、金融機関が預貯金者等に対してマイナンバーの告知を求めることができるようにすること等を内容とする法案を提出しています。目的は、社会保障制度の所得・資産を適正に調査することや、適正・公平な税務執行の観点から社会保障給付の際の資力調査や税務調査の効率性を高めるという点にあると説明しています。つまりマイナンバー制度の導入により、官と民における社会保障と税分野の様々な個人データを生涯一つのナンバーで管理しながら、情報提供ネットワークシステムを通じて確実に預金や資産の名寄せと統合利用を可能としようとしているのです。見方をかえれば、以前にもお伝えしましたが、市民の自己情報コントロール権は形骸化し、諸外国でも深刻な社会問題化しているように大量の情報漏えいや、なりすましなどのプライバシー侵害のリスクを更に高めることになる可能性もでてきています。
預貯金口座をマイナンバーで管理することは、今後はもしかすると民間分野での利用範囲はさらに拡大され、預貯金口座における預貯金者の生活と密接な関連を有する預貯金情報(日付・金額・支払先などは重要な個人情報である。)全体も含めてマイナンバーによる検索が可能となり、情報漏えい等が発生した場合のプライバシー侵害のおそれは極めて大きくなるでしょう。他方、多くの金融機関において本人確認が容易ではない口座が多く存在し、全ての口座についてマイナンバーによる検索を実現するためには多大な労力負担がかかること、金融機関のマイナンバーによる検索では、対象者の一部の資産のみを把握することになり、むしろ社会保障における調査や税務執行が不公平になる可能性があるなどの制度上の問題点もあがってきます。
★そして特定できない預金資産については国が没収???ということになる?! 

このように預貯金口座に付番することは、マイナンバー制度の本来の目的を超えていて、危険性が極めて高くなる反面、社会保障や税務執行の適正・公平に十分資するとは言えない結果となり、極めて合理性が認められないという指摘が多くあります。せめて、プライバシー保護のためには、個人情報の同一性確認が目的を超え「容易」にできないことや情報の結合はしないシステムを確立した上でマイナンバーが活用される事が大切でしょう。たとえば分野別の番号で管理するなど。平成27年3月10日日本弁護士連合会会長 村越進氏一部抜粋)
 昨年もこの記事の時にコメントしましたが、またもや国のわがままし放題がはじまり、今度はマイナンバーを使って、個人法人の金融資産を管理下におきたいというわけです。単純に考えても脱税防止と財産没収?ということが意図かなぁと。個人的にはどっちも関係ないのですが、ただこれからは〝統一番号で国に生涯管理されるんだなぁ・・・〟というペットのような(不)安心した気分です(笑)。意見はいろいろですが、いずれにしても民間に情報漏えいされることだけは注意して欲しいものです。

【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】
Webサイト/http://et-inc.jp

2015年4月6日月曜日

[43] 続・IPO不信―IPO企業には朗報だが、投資家には悲報?【国内政経】

2013年12月に公表された金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書では、新規・成長企業の新規上場を促進するために、新規上場時の負担を軽減する提言がされています(http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/risk_money/siryou/20131015/04.pdf)。これに伴い、金融商品取引法及び企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正が行われ、新規上場時の負担を軽減する改正が行われています。そして、2015.2.13において平成26年金融商品取引法等改正(1年以内施行)等に係る政令・内閣府令案等を公表しています。これにより新規上場企業においては、従来に比べ下記の事項の負担が軽減されることになっています。

A. 有価証券届出書
[現行] 過去5年分の財務書類の開示・うち直近2年分につき監査証明
[改正] 過去2年分の財務書類の開示・これらにつき監査証明

B. 内部統制報告書
[現行] 上場後、事業年度ごとに監査済部統制報告書の開示
[改正] 上場後3年間は開示する内部統制報告書に対する監査を免除
(ただし、「資本金100億円以上または負債総額1,000億円以上」の企業は対象外)


新規上場企業は、公開会社として相応しい内部管理体制の構築が求められていることは言うまでもありません。所謂オーナー経営から、組織的な企業運営を行うことができる体制を整える必要があります。これは、内部統制監査報告制度において整備、運用、評価が求められる全社レベルの内部統制及び業務プロセスレベルでの内部統制を整備することと異なることはありません。また、これは上場審査においてチェックを受けることになります。従って、上場準備における影響はあくまで「内部統制監査」部分についてであるということになり、不正を看過してもよいという言い訳にはならないのです。IPO不信にならないように、上場企業・取引所・証券会社・監査法人・投資者etc. ステークホルダーが一丸となって不正を看過しないように目を光らせる必要があるのでしょう。
【執筆者:公認会計士松澤公貴】
Webサイト/
www.jp-kmao.com

2015年4月2日木曜日

[42] IPO不信【国内政経】

2015.3.31、日本取引所グループはIPOに関する緊急対策を公表しました。
※「最近の新規公開を巡る問題と対応について」(
http://www.jpx.co.jp/news/1020/150331-02.html

証券会社や監査法人と協力して、業績見通しを開示する際に具体的な根拠を示すよう企業に求めるほか、証券会社などの業務が過密にならないよう上場時期も分散するとのことです。確かに証券会社や監査法人は企業と継続的な関係を有しているため、問題となるような事項を把握し経営者に対応を求めることは可能かもしれませんが、証券会社は早く上場させて手数料を稼ぎたいという動機が働くでしょうし、監査法人は基本的には監査するのが中心なので、会社の業績見通しなどについてはチェックが甘くなるかもしれません。やはり取引所が時間をかけてしっかり審査するのが筋だと思いますが、このように他人任せの対応では今後も改善が期待できないのではと思ってしまいます。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】