経営を考える上でキャッシュフローは重要ですが、キャッシュフローを増加させるには、キャッシュインを増やすか、キャッシュアウトを減らすしかありません。しかし、キャッシュインを増やすには、銀行や取引先などの外部の取引先との交渉が大きなウェートを占めるのでそう簡単にはできません。ところが、キャッシュアウトの減少は自社内でできるものが多く、決断次第で即効性が期待できます。
⇒その一つの方法として税金の圧縮があります。
◆資産に含み損がある場合を考えてみます。
損は含みのままでは何の価値も持ちませんでしたが、含み損を実現損に変えることで節税手段として有力な武器になります。
⇒ 本業で利益が出ているなら、含み損を抱える資産を売却して、 含み損を顕在化させることにより課税所得を圧縮し、税額のキャッシュアウトを抑えることができます。
⇒ 本業で収益を上げ税金を払いながら、含み損を抱える遊休資産を保有し続けるのは、キャッシュフローから見て無駄ですね。「資産を売るのは、価格が高くなるまで待とう」と考える経営者の方もいるかもしれません。しかし、経済環境も時代スピードも変化します。
高度成長時のように資産価格が目に見えて上がる時代ではなくなってきているので、将来の不確定な値上がりに期待をかけるより、現在の安値を有効に利用して税金を抑える方が合理的です。
◆含み損を有する資産を売却すると、以下のような効果が生じます。
*プラス効果(1)…総資産・総負債の圧縮
資産の売却代金で借入金を返済すれば、資産・負債を圧縮できます。そしてこの借入金返済に使えるキャッシュは資産の直接の売却代金だけではなく、含み損の実現化で削減できた税金額も、その分キャッシュが残りますので、借入金返済に回すことができます。また、資産を圧縮できれば、ROA(総資産利益率)は向上し、将来の減損リスクを減らすこともできます。
*プラス効果(2)…将来利益の増加
借入金が減れば支払利息が削減できますし、売却した資産が減価償却資産であれば減価償却費が減少します。それは、将来の損益計算にプラスの効果をもたらします。
*マイナス効果…当期損益の低下、自己資本比率の低下
一方、含み損を実現化すれば、当期の損益計算書上の損益は悪化し(場合によっては 赤字になるかもしれません)、貸借対照表上でも自己資本比率の実態上は既に存在していた事実ですから、含み損の実現化はそれを表面化させたに過ぎないのです。そうしたマイナス事象は隠しておくより表面化させた方が的確な経営戦略が取れるはずです。
重視すべきは表面上の決算書の悪化を糊塗することではなく、当面のキャッシュフローの改善です。経営にはキャッシュフローの観点からも、保有資産を不断に見直していく姿勢が求められます。(記事提供者:税務研究会)
*** あとづけ ***
土地付き建物を利用したい場合、[購入] すべきか [賃貸]にするべきか・・・。これを借入金で取得する場合はまず注意すべき点があります。土地は費用にならない上、流動比率もさげますので、財務諸表の見た印象はよくありません。
◆たとえば、土地20,000万円・建物10,000万円=借入金30,000万円 で取得した場合。
*借入で取得した場合の経費算入額 ⇒ 10,000万円(建物償却費だけ経費)
*賃貸取得の場合の経費算入額 ⇒ 30,000万円(リース料として全額経費)
(単純な話こうなります。もちろんそのほかに支払利息や登記費用、固定資産税もかかりますが、上記は単純にするため割愛しています)
もちろんこれは一側面ですから、将来値上がりが見込める投資案件かも、相続で使用したい、会社評価を下げたい。。。等、他の目的もあるかもしれませんが、(購入)vs(賃貸)では、基本的にこの構造が根底にあることを認識の上で決定をしていかなくてはなりませんね。大きな買い物ですので含み損、キャッシュフロー、納税、保有リスクを十分に検討してから決定をしてください。
【執筆者: Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】 Webサイト | http://et-inc.jp
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