国際政治学者のイアン・ブレマー氏をご存じですか。アメリカの調査会社、ユーラシア・グループの社長で毎年世界10大リスクを発表しています。昨年は原油価格の下落などを予想していました。当たっているかどうかわからないものも結構ありますが、今年2015年下記のとおり「ヨーロッパの政治」が1位、「ロシア」が2位とのことです。
(1) 「ヨーロッパの政治」:ヨーロッパでは反EU勢力が台頭していることに加え、各国の中でも現政権への不満が高まっている。また、ロシアや過激派組織「イスラム国」など外的な不安定要因も高まっており、このため、ヨーロッパの政治が国際情勢の最大のリスク要因となっている。
(2) 「ロシア」:経済制裁と原油安でロシアの経済状況が悪化するなか、西側諸国との対立がさらに進めば、ロシアがサイバー攻撃やNATOとの境界付近での武力による威嚇行為が活発になる可能性がある。
(3) 「中国経済減速の影響」:中国経済の見通しは楽観的だが、原油などの資源価格が下落するなかで、中国への輸出に依存してきたブラジル、オーストラリア、インドネシアやタイなどの資源国は経済的に大きな打撃を受けることになる。
(4) 「金融の兵器化」:アメリカはロシアやイランへの制裁の手段として軍事力に代わって金融を武器として多用している。これが結果的にIMFや世界銀行などの世界の金融システムが弱体化するリスクがある。
(5) 「イスラム国」:「イスラム国」の影響力がイラクとシリアだけでなく、ほかの中東や北アフリカの国々にも広がり、欧米諸国がこうした勢力を抑込むことは一層難しくなる。こうしたなかで、欧米諸国と協力するスンニ派が多数を占める国々で「イスラム国」は特に支持者を増やし、リスク要因となる可能性がある。
(6) 「力を失った指導者たち」:ブラジルや南アフリカ、トルコなどの新興国の指導者にかつてのような求心力がない。これによって生じる新興国の混乱は世界全体の経済成長や政治の安定を妨げる可能性がある。
(7) 「戦略部門の台頭」:経済成長よりも政治の安定を重視する傾向が強まり、ロシアや中国だけでなくアメリカにおいても、安全保障に関わる情報通信や金融など戦略的な部門で政府の介入が強まり、企業活動が制限されるようになる可能性がある。
(8) 「サウジアラビア対イラン」:シーア派のイランとスンニ派のサウジアラビアの対立がさらに顕著になる可能性がある。核開発問題を巡るイランと欧米との協議が決裂すれば、イランが反発を強めて地域のバランスを変え、中東全体で宗派間の対立の激化を引き起こすリスクが高まる。
(9) 「中国と台湾の関係悪化」:中国政府が台湾を経済的に取り込む政策が進まないと判断した場合、すでに合意した台湾との貿易協定を撤回するなど強硬姿勢に転じる可能性があり、それに伴いアメリカと中国の関係にも影響を与える可能性がある。
(10) 「トルコ」:エルドアン大統領が強権的に押し進める政策がことごとく裏目に出ており、「イスラム国」の台頭によって不安定になっている中東情勢をさらに混乱させる要因となる可能性がある。
やはり、ヨーロッパの政治情勢が世界の政治経済に大きな影響を与えるようです。まずは今月のギリシャの総選挙がどうなるか注目ですね。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】
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