2015年7月30日木曜日

[76] 日本の経済連携協定・自由貿易協定【国際政経】

私ごとですが、最近海外コンプライアンスに関連する業務を多くクライアントに提供しており、いまさら、人に聞けないということでFTA、EPA、TPPについて纏めてみます。

自由貿易協定(FTA)は、特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定であり、一方経済連携協定(EPA)は、貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定です。そもそも機能不全に陥っている世界貿易機関(WTO)に代わり、取沙汰されたものが、FTAであり、そして、FTAの発展型がEPAです。FTAを多国間に拡大したものがTPPで、環太平洋という広い地域での経済連携を目指す協定です。対象も幅広く、環境、労働、電子商取引など新しい分野を含む21分野で交渉が進められています。ややこしいですが、TPPもFTAのひとつであり、EPAでもあります。

なお、日本の2015.3現在の経済連携協定・自由貿易協定は図のとおりとなっています(出典:外務省Webサイト)。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】
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www.jp-kmao.com

2015年7月27日月曜日

[75] 約400人が1億円超の役員報酬を手にしている【国内政経】

2015.3月期に1億円以上の報酬を受け取った役員が411人で前年よりも50人増加したそうです。アベノミクスによる円安、株高による企業業績の回復を受けてのことですが、業績と報酬にはどの程度関連性があるのか気になったので、自動車3社の役員報酬について調べて見ました。

これを見るとトヨタは日産よりも利益が5倍くらいありますが、報酬総額はほぼ同額です。ホンダと日産の利益は同程度ですが、役員報酬は日産がホンダの倍になっています。日産ではカルロスゴーン氏が10億円も貰っているためこのように歪んだ結果になってしまいましたが、この影響を除くと1名平均6千万円程度となり日産もホンダも変わりません。ゴーン氏は日産を立て直した手腕は評価されていますが、何だかその後はパッとした活躍がないように思え、果たしてこれだけの報酬をもらうのが適切なのか?と思ってしまいます。もしゴーン氏が10億円もらえるくらいすごい手腕を発揮しているのだとすれば、他の役員がむしろもらいすぎということになるかもしれません。
なお、ソフトバンクでは次期CEO候補のアローラ氏に165億円の報酬を支払ったとのことで、人材獲得競争が激しいIT業界ではやむを得ないのかもしれませんが、どのような活躍をされるのか楽しみですね。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年7月23日木曜日

[74] 金融商品にかかる賢い節税【国内税務】

♪ 株の生前贈与 & 改正される金融商品税制 ♪

◆贈与税編
~生前贈与をする場合値上がりの見込める財産を優先して贈与するがポイント~
相続税は今年の1/1から基礎控除額5000万円から3000万円に引き下げられ、税率もupしましたね。これら等も踏まえつつ団魂の世代が、相続対策として生前贈与を積極的にする傾向がだんだん強くなる予測です。

さて、贈与税の非課税枠は110万円ですが、これは贈与資産の評価額が110万円までは非課税ということですから、現預金などを贈与する場合はぴったりその金額です。しかし、株式の贈与の評価額(時価という)の算出は少し違います。というのは、次の4つのうち最も低い価格が贈与の価格として計算されます。
① 贈与日の最終価格(終値) 
② 贈与した月の終値の平均額
③ 贈与した前月の終値の平均額
④ 贈与した前々月の終値の平均額

つまり・・・過去3か月間に値上がりした株式や、上場投資信託(RTF)、上場不動産信託(J-REIT)などを贈与すれば、①~④の最低価格で贈与できるので、贈与を受けた側に含み益をもたらすことができます。・・・⇒値上がりする相続資産を早目に移転できる!
例えば)
7/22終値720円の株式を贈与しても、その株式の
5月の平均終値が500円、
6月の平均終値が600円、
7月の平均終値が710円だとすると  ・・・⇒贈与の評価額は500円になります。

現在、株価は堅調に推移していますので、年末までの贈与であれば今年の基礎控除が使えます。これからの上場株式等に投資し株価等の推移を見ながら、子孫に贈与することもできますね。
さらに、子孫が20歳以上であれば、非課税枠の110万円を贈与して、贈与を受けた子孫が100万円をNISA(少額投資非課税制度)に回し、残った10万円をその他の金融資産で運用することなでもできます。

~ところで贈与というと基礎控除の110万円にこだわりがちですが~
基礎控除を多少こえて10%の税率で贈与税を納める事も、贈与の事実を税務署に認識してもらえるよい方法です。たとえば115万円の贈与なら5千円の贈与税で(115-110万円×10%)済みます。 ・・・⇒ 贈与納税をすることで、逆に贈与を柔軟的に堂々と利用する!


◆証券税制編
~公社債投信の改正~
今年までは、国内外の国債、外貨建てMMFといった公社債や公社債投信の譲渡益は非課税ですが、来年1月より税制改正により、これらは上場株式と同様に一律20%の課税対象になります。(別に地方税5%)

★ここで、気を付けないといけないのは外貨建ての公社債や公社債投信が安値で含み益を抱えている場合です。
例えば、1$=80円の時に1万円㌦分のMMFを購入したとします。現在レート120円だと仮定しますと40万円超の含み益が発生しています。
今期末までにMMFを売却し含み益を実現しても税金はかかりません。しかし来年1月以降に売却すると売却益に20%の税金がかかります。
・・・⇒含み益を抱えている場合は年内に利益を確定してしまうのが賢い節税かもしれません。

一方含み損を抱えている場合は、売却によって発生する譲渡損を株式などの利益と損益通算して節税できるようになります。その年に控除できない分は翌年から3年間繰越すことも可能です。債券などのリスや償還損益も株式などどの損益通算の対象となります。これらの税制の改正にともない、公社債や公社債投信の利子収入や売却益は原則として確定申告が必要です。
★ただし、
来年1月からは公社債や外貨建てMMFも株式や株式投信同様に特定口座の対象に加わることになりますので【源泉徴収ありの特定口座】という制度を使えば、確定申告が不要になり金融機関が投資家の代わりに年間の損益を通算して納税を行ってくれます。(‘注意:口座が複数の金融機関に分散しているとやはり確定申告が必要となります)

※上記の記載内容は、平成27年6月末現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

*** あとづけ ***
最近、国内の財政にも少し明るい兆しが見ており、2015年度予算の歳入は24年ぶりの高水準!新規国債発行額も6年ぶりに40兆円を下回りました。これも、実際には昨年の消費税の増税の貢献が大きいようです。政府は相続税の増税につづいて、今後も歳入を増やす試みとし所得税、法人税の課税対象拡大による増税をするようですが、わたしたち納税者はこれらを受けて少しでも賢い納税を検討していきたいです(汗^^)
相続対策については、上記のような株式の他に値上がりする資産の代表的なものとして“不動産”が考えられます。実際にオリンピックを前にインフラもどんどん整備されており、都心近郊の地価もじわじわと値上がっています。
たとえば婚姻20年の夫婦では、配偶者に自宅を贈与した場合2,000万円までの非課税枠などもあります。相続の納税資金を確保しながら、これら生前贈与の他にも、資産の評価を組み替える、保険を組み替え検討する等、最適な組み合わせを行い益々賢い対策を検討することがますます望まれます。
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト |
http://et-inc.jp

2015年7月20日月曜日

[73] 国際労働条約と日本の批准状況【規制】

国際労働条約とは、労働条件の改善を目的とした国連の専門機関の1つである国際労働機関(ILO)によって採択された条約のことで、雇用、賃金、労働時間、労働者の保健・衛生などに関する国際規範を取り決め、加盟国にその批准を促しています。
ILOには189の条約と202の勧告がありますが、条約は批准されない限り、その国で効力を発しません。この他に、既存の文書の改正、補足を行うより簡易な形式のものとして議定書があり、これも発効には批准を要します。一方、勧告は批准を前提とせず、条約を補足する細則を規定し、法律や団体協約の指針等として用いられることを意図して採択されるものです。日本の批准条約総数は現在49であり、加盟国の平均批准条約数43は上回っていますが、OECD諸国の平均批准条約数74には遠く及びません。

条約のうち、8つの基本労働条約(中核的労働条約と呼ばれる場合もあります)があり、これは、全加盟国に批准を求める重要な条約ですが、日本はこのうち「強制労働の廃止」(105号条約)と「雇用と職業における差別待遇の禁止」(111号)の2条約を批准していません。前者に関しては、国家公務員法・地方公務員法でストを「企て、共謀し、そそのかし、若しくはあおった」者に対する懲役刑を定めているのが条約に抵触が未批准の理由であり、後者に関しては、条約の禁止する7つの根拠に基づく差別を明確に禁止する国内法の不在と、使用者側の心理的抵抗が未批准の理由だそうです。
今後、日本の労働環境は改善するのでしょうか。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】
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www.jp-kmao.com

2015年7月16日木曜日

[72] 新日本監査法人に対して立入調査【国内不祥事】

東芝の粉飾決算問題に関連して新日本監査法人に対して日本公認会計士協会の調査に続き、金融庁の公認会計士・監査審査会の立入検査も行われるようです。
一般的に会計士協会による調査は身内組織みたいなものなので審査会の検査に比べると緩いものになっていると思われます。これに対して審査会の検査は(実際に検査をする人は監査法人から出向している人も多いですが)かなり厳しめで処分に結びつくものが多いと思われます。
今回の件で、新日本監査法人では金融庁に対して「監査は適切な手続で行ったが、東芝から実態と異なる説明を受けた」と説明しているようですが、説明を受けた内容が実態と異なっているかどうかを監査証拠を入手して判断するのが会計士の仕事であって、この説明の内容は意味不明なものと言わざるを得ません。
今回は東芝という日本を代表する大企業で起こった粉飾であり社会的注目度も大きく、社会的影響も大きいと思います。新日本監査法人オリンパスの件でも業務改善命令が出されていることを考えるとより厳しい処分が下る可能性もありますね。そしてこのような事件を契機に追加的な監査手続が誕生するという繰り返しがここ10年くらいの業界の動きだと思います。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年7月13日月曜日

[71] 海外に1年以上住む子供を扶養控除するには【国内税務】 

♪海外に居住する親族の扶養控除等書類の添付が義務化されます♪
平成28年(平成27年度税制改正)から、海外に居住する親族の〝扶養控除等の書類の添付等〟が義務付けられることになりました。

◆内容
海外に親族がいる納税者(A氏とする)が、海外在住の親族(B子さんとする)を扶養控除または、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用者として所得控除を受けたい場合には、(★)確定申告または年末調整において、「親族関係書類」及び「送金関係書類」を確定申告書に添付するか、又は確定申告書の提出の際に提示、もしくは年末調整時に提出しなければならなくなりました。
(★)⇒ここでいう海外にすむ親族とは、海外に1年以上在住している家族を指します。

◆書類の説明
①「親族関係書類」とは、
・戸籍の附票の写し(その海外の親族B子さんが、申告をする方の親族であることを証するもの)+パスポートのコピー
・外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、その海外親族B子さんが、申告者A氏の親族であることを証するもの
②「送金関係書類」というのは、その年における
・金融機関が行う為替取引によりその親族B子さんへ支払われたことを明らかにする書類
・クレジットカード発行会社のカードを提示してその親族B子さんが商品等を購入したことと、購入代金を受領したことを証するもの

◆制度の背景
この税制改正は、円滑・適正な納税のための環境整備の一環として行われたと言われていますが、もうひとつの背景として、“海外に住む扶養親族を、実際より多く届け出ているのではないか”と疑われる事例?が散見しており、申告時点にチェックすることで不正防止につなげる為との位置付けもあるようです。

◆提出の方法
A氏がB子さんを所得控除の対象としたい場合・・・
①確定申告において、確定申告の際、B子さんの親族関係書類及び送金関係書類を添付または提示しなければなりません。
②給与等・公的年金等の源泉徴収において、年末調整の際、B子さんの親族関係書類及び送金関係書類を提出・提示しなければなりません。この場合は、これらの書類は、確定申告時の添付、提示は不要となります。

◆ほかの注意事項
・親族関係書類や送金関係書類が外国語により作成されている場合には、訳文を添付等する必要があります。
・この扶養控除等書類の添付等の義務化は、平成28年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに平成28年分以後の所得税について適用されますので、ご注意ください。

※上記の記載内容は、平成27年5月12日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


*** Coffee Break ***
この時期になると、うちの近所にはホタルが飛び交い夏の訪れを感じます。この田園風景は、戦前日本を訪れた多くの外国人にも感嘆を与え「こんな美しい国に永住したい」と言わしめたそうです。水田には満々と水がはられ、その上をホタルが幻想的に舞い飛ぶ。日本人にはありきたりの光景が、外国人には息を呑む感動に映ったにちがいありませんね。しかし、残念ながら毎年ホタルが減少しているのを感じます。。。祖先が残したそんな原風景を、次代に引き継いでいきたいものです。

さて、「ホタル」の光りが黄緑色に光る秘密は、発行生物に共通のルシフェリンと呼ばれる物質で、酵素の作用によって発光が誘発されるそうですが、実は私たちのまわりを眺めると、生物で光るものはまだまだ沢山あります。たとえば「発光きのこ」類、ナラタケ、ワサビタケ、ツキヨタケなど。これは発光菌類の仕業です。
動物界では、クラゲ、貝、イカ、ホタルミミズ、ゴカイ、エビ、ウミボタル、そして夜光虫などが私達になじみの発光生物です。

梅雨があけると、日本の短い夏が始まりますが、陸地に山に海にたくさんの自然を感じられる良い時期です。普段ゆっくり過ごせないご家族やお友達と一足伸ばす時間を作るよいチャンスかもしれませんね^^
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト |
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2015年7月9日木曜日

[70] 国税庁、「マルサ」が摘発した脱税手口を一部公開【国内不祥事】

脱税を摘発する国税局の査察部が2015.7.6に昨年度に摘発した脱税手口を一部公開しています。今回はこの内容を一部ご紹介したいと思います。

❏ 平成26年度において査察に着手した件数は、194件でした。
❏ 平成26年度以前に着手した査察事案について、平成26年度中に処理した件数は180件、そのうち検察庁に告発した件数は112件であり、告発率は62.2%でした。
❏ 平成26年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で150億円、そのうち告発分は123億円でした。なお、告発した事案1件当たりの脱税額は1億1,000万円でした。
❏ 平成26年度に告発した査察事案で多かった業種・取引は、「不動産業」、「クラブ・バー」、「建設業」でした。
❏ 脱税の手段・方法としては、売上除外や架空の原価・経費の計上が多くみられたほか、平成23年度に創設された単純無申告ほ脱犯の事例もありました。なお、脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金、株式及び不動産として留保されていたほか、高級外車や腕時計の購入、競馬などの遊興費、特殊関係人に対する資金援助や老人ホームの入居権利金などに充てられていた事例も見受けられました。
❏ 脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、自宅階段下の納戸の奥に置かれた段ボール箱に現金を隠していたものなどがありました。
❏ 平成26年度中に一審判決が言渡された件数は98件であり、うち96件について有罪判決が出され、実刑判決が11人に出されました。

詳細は、国税庁のWebサイトをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2014/sasatsu_h26/index.htm

【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】
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2015年7月6日月曜日

[69] 世界遺産と経済効果【国内政経】

2015.7.5に「明治日本の産業革命遺産」が紆余曲折を経て世界遺産への登録が決定しました。今回は富士山や富岡製糸場と異なり遺産が8県にまたがり、全部で23件がまとめて登録されることになるため、登録を祝うセレモニーが各地で行われていたようです。
さて、世界遺産というとどうしても経済効果に注目が集まりますが、世界遺産に登録されると世界遺産を有する国、地域には、遺産の価値を損なわないように恒久的に保護する義務や責任が生じます。富岡製糸場では経済効果は毎年33億円程度のようですが、建物の保存修理や防災工事、トイレなどの整備に30年で100億円ほどかかるとのことです。その他地元の役所には世界遺産に係る担当部署が設置され、駐車場や道路の整備も必要になります。おそらく経済効果は年々減少していくでしょうし、本当に世界遺産への登録により経済的メリットは得られるのでしょうか。
まあ、当然経済効果が目的ではなく過去の素晴らしい遺産を後世に受け継いでいくということが大目標ではあるのですが。今回の世界遺産は複数地区にまたがっているため維持管理コストもそれなりにかかるでしょうし、よくよく見るとそんなの必要かという資産もあり、個人的には今回の世界遺産は別に登録する必要がないのでは?と思っています。
【執筆者:公認会計士・税理士 青木重典】

2015年7月2日木曜日

[68] 相続税の申告の要否チェック&おまけは外国人も相続税【国内税務】

♪ 国税庁サイトで・・・、うちは相続発生する!?♪
   
◆相続税判定の便利ツール!
相続税の申告が必要かどうかをインターネット上で簡単に判定できる「相続税の申告要否判定コーナー」が、国税庁ホームページ上に公開されました。
画面上の指示に従って相続人の人数や財産の価額を入力することで、相続税の申告要否が自動で判定されます。
https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top#bsctrl
配偶者、子の数、父母、兄弟姉妹の数などを入力して法定相続人の数を確定させ、次に土地、建物・有価証券・現預金・生命保険金といった相続税の対象となる財産の価額を入力します。そして、債務と葬式費用を差し引いた額が相続税の基礎控除額を上回っていたときは、相続税の申告が必要と判定されることになります。
ただし、相続財産を大幅に減らすことができる<小規模宅地の特例>や<配偶者控除>には対応していないため、本当にあくまで「おおよその目安がわかるもの」と考えたほうが良いようです。正確に知るためには、税理士や税務署に見てもらう必要があるでしょう。このコーナーで作成したデータは、相続税の申告書として利用することはできませんが、税務署から「相続税についてのお尋ね」などのタイトルで送られてくる、いわゆる「お尋ね文書」への回答には使えるようです。 


◆外国人にも相続税がかかる?準拠法令について
最近、少しずつこのようなことが身近になってきたことを感じます。

= 国際私法~私法の国際間の抵触を調整 =
「日本に居住(※1)する外国人が亡くなった場合」、あるいは「外国に居住する日本人が亡くなった場合」には、一体どの国の民法などの私法がどのように適用されるかが問題となります。(※1)現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人
このような日本と外国の私法が抵触する状況を解決するためにいちおう「国際私法」という法律があります。日本でも「法の適用に関する通則法」という「国際私法」が設けられています。この「通則法」36条には「相続は被相続人(亡くなった方)の本国法による」と規定されているため、亡くなった方の本国の相続関係の法律が適用されることになります。この適用される国の法律を「準拠法」と言います。

= では日本の相続税法ではどう考えるか? =
国税庁ホームページの質疑応答事例の中に「被相続人が外国人である場合の未分割遺産に対する課税」というものが掲載されていますが、これによると「通則法」36条で相続は本国法によるとされているので、未分割の場合には、その被相続人の本国法による相続分で計算するとされることになるようです。一方で、遺産に係る基礎控除額の計算基礎となる法定相続人や法定相続分については、被相続人が外国人であっても、日本の民法の規定の適用があるものとした場合の法定相続人や法定相続分をもとに相続税の総額を計算することとされています。

⇒ つまり、“未分割財産は外国の相続分で計算し、法定相続人は日本の法律をもとに ⇒ 相続税が計算される!” ということになるようです。
*** ひとりごと ***
ますます進展する「おカネ」「モノ」のグローバル化ですね。日経新聞によれば、家計の外貨建て金融資産が約46兆円となり約7年半ぶりに過去最高となったそうです^^。理由としてあげられているのは
①急速な円安で円建ての評価額が膨らんだこと。
②国内の低金利や円の先安観を背景に海外投資志向も強まったことが挙げられており、特に富裕層の個人資産が増えているとのこと。
③一方で海外からの不動産投資も拡大しているようで、2014年の海外企業による日本の不動産取得額はこれも過去最高の約1兆円で前年の約3倍となっており、国内不動産取引の約2割を占めたそうですよ!
⇒円安を基因とした一連の現象ではありますが、それでも「ヒト」「モノ」「おカネ」のうち、「おカネ」「モノ」の国際間移動についていよいよ障害が少なくなってきたことが実感されるところです。
“ちょっと重要なこと” さらに補足ですが…
1.出国時の含み益課税:それに関連しますが2015年度税制改正で2015年7月から金融資産1億円以上の人に対して、出国する時に含み益を課税される特例が創設されることになりました! 

2.財産債務明細の提出範囲がひろがります:これとあわせて、現行の“財産債務明細書”について記載内容を充実するなどの見直しがされます。
“財産債務明細書”とは、所得金額が年間2,000万円を超える人を対象に、その年12月31日現在の財産や債務の金額などを申告書と一緒に提出するものですが、この“財産債務明細書”を新たに「財産債務調書」として整備し、現行の提出基準である「所得金額が2,000万円超であること」に加えて、「その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が3億円以上であること、又は同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の価額の合計額が1億円以上であること」が提出基準とされることになります。
これは2016年1月1日以後に提出すべき「財産債務調書」から適用されます^^
この「財産債務調書」は、国外資産5,000万円以上の場合に提出する<国外財産調書>とは異なるのですが、同じように「財産債務調書」の提出の有無によって、その後もし発生した場合の所得税又は相続税に係る過少申告加算税等を加減算する特例が講じられことになりました。

* 具体的にはこのようなものです↓
<国外財産調書>について、提出期限内に提出した場合には、そこに記載がある国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときでも過少申告加算税等が5%軽減されるという優遇措置があります。
 
♪これも今後の動向に一層注目ですね~♪

(上記の記載内容は、平成27年5月7日現在の情報に基づいて記載しております。今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません)
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト |
http://et-inc.jp