2015年7月23日木曜日

[74] 金融商品にかかる賢い節税【国内税務】

♪ 株の生前贈与 & 改正される金融商品税制 ♪

◆贈与税編
~生前贈与をする場合値上がりの見込める財産を優先して贈与するがポイント~
相続税は今年の1/1から基礎控除額5000万円から3000万円に引き下げられ、税率もupしましたね。これら等も踏まえつつ団魂の世代が、相続対策として生前贈与を積極的にする傾向がだんだん強くなる予測です。

さて、贈与税の非課税枠は110万円ですが、これは贈与資産の評価額が110万円までは非課税ということですから、現預金などを贈与する場合はぴったりその金額です。しかし、株式の贈与の評価額(時価という)の算出は少し違います。というのは、次の4つのうち最も低い価格が贈与の価格として計算されます。
① 贈与日の最終価格(終値) 
② 贈与した月の終値の平均額
③ 贈与した前月の終値の平均額
④ 贈与した前々月の終値の平均額

つまり・・・過去3か月間に値上がりした株式や、上場投資信託(RTF)、上場不動産信託(J-REIT)などを贈与すれば、①~④の最低価格で贈与できるので、贈与を受けた側に含み益をもたらすことができます。・・・⇒値上がりする相続資産を早目に移転できる!
例えば)
7/22終値720円の株式を贈与しても、その株式の
5月の平均終値が500円、
6月の平均終値が600円、
7月の平均終値が710円だとすると  ・・・⇒贈与の評価額は500円になります。

現在、株価は堅調に推移していますので、年末までの贈与であれば今年の基礎控除が使えます。これからの上場株式等に投資し株価等の推移を見ながら、子孫に贈与することもできますね。
さらに、子孫が20歳以上であれば、非課税枠の110万円を贈与して、贈与を受けた子孫が100万円をNISA(少額投資非課税制度)に回し、残った10万円をその他の金融資産で運用することなでもできます。

~ところで贈与というと基礎控除の110万円にこだわりがちですが~
基礎控除を多少こえて10%の税率で贈与税を納める事も、贈与の事実を税務署に認識してもらえるよい方法です。たとえば115万円の贈与なら5千円の贈与税で(115-110万円×10%)済みます。 ・・・⇒ 贈与納税をすることで、逆に贈与を柔軟的に堂々と利用する!


◆証券税制編
~公社債投信の改正~
今年までは、国内外の国債、外貨建てMMFといった公社債や公社債投信の譲渡益は非課税ですが、来年1月より税制改正により、これらは上場株式と同様に一律20%の課税対象になります。(別に地方税5%)

★ここで、気を付けないといけないのは外貨建ての公社債や公社債投信が安値で含み益を抱えている場合です。
例えば、1$=80円の時に1万円㌦分のMMFを購入したとします。現在レート120円だと仮定しますと40万円超の含み益が発生しています。
今期末までにMMFを売却し含み益を実現しても税金はかかりません。しかし来年1月以降に売却すると売却益に20%の税金がかかります。
・・・⇒含み益を抱えている場合は年内に利益を確定してしまうのが賢い節税かもしれません。

一方含み損を抱えている場合は、売却によって発生する譲渡損を株式などの利益と損益通算して節税できるようになります。その年に控除できない分は翌年から3年間繰越すことも可能です。債券などのリスや償還損益も株式などどの損益通算の対象となります。これらの税制の改正にともない、公社債や公社債投信の利子収入や売却益は原則として確定申告が必要です。
★ただし、
来年1月からは公社債や外貨建てMMFも株式や株式投信同様に特定口座の対象に加わることになりますので【源泉徴収ありの特定口座】という制度を使えば、確定申告が不要になり金融機関が投資家の代わりに年間の損益を通算して納税を行ってくれます。(‘注意:口座が複数の金融機関に分散しているとやはり確定申告が必要となります)

※上記の記載内容は、平成27年6月末現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

*** あとづけ ***
最近、国内の財政にも少し明るい兆しが見ており、2015年度予算の歳入は24年ぶりの高水準!新規国債発行額も6年ぶりに40兆円を下回りました。これも、実際には昨年の消費税の増税の貢献が大きいようです。政府は相続税の増税につづいて、今後も歳入を増やす試みとし所得税、法人税の課税対象拡大による増税をするようですが、わたしたち納税者はこれらを受けて少しでも賢い納税を検討していきたいです(汗^^)
相続対策については、上記のような株式の他に値上がりする資産の代表的なものとして“不動産”が考えられます。実際にオリンピックを前にインフラもどんどん整備されており、都心近郊の地価もじわじわと値上がっています。
たとえば婚姻20年の夫婦では、配偶者に自宅を贈与した場合2,000万円までの非課税枠などもあります。相続の納税資金を確保しながら、これら生前贈与の他にも、資産の評価を組み替える、保険を組み替え検討する等、最適な組み合わせを行い益々賢い対策を検討することがますます望まれます。
【執筆者: 金田一希世美 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト |
http://et-inc.jp

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