2015年7月20日月曜日

[73] 国際労働条約と日本の批准状況【規制】

国際労働条約とは、労働条件の改善を目的とした国連の専門機関の1つである国際労働機関(ILO)によって採択された条約のことで、雇用、賃金、労働時間、労働者の保健・衛生などに関する国際規範を取り決め、加盟国にその批准を促しています。
ILOには189の条約と202の勧告がありますが、条約は批准されない限り、その国で効力を発しません。この他に、既存の文書の改正、補足を行うより簡易な形式のものとして議定書があり、これも発効には批准を要します。一方、勧告は批准を前提とせず、条約を補足する細則を規定し、法律や団体協約の指針等として用いられることを意図して採択されるものです。日本の批准条約総数は現在49であり、加盟国の平均批准条約数43は上回っていますが、OECD諸国の平均批准条約数74には遠く及びません。

条約のうち、8つの基本労働条約(中核的労働条約と呼ばれる場合もあります)があり、これは、全加盟国に批准を求める重要な条約ですが、日本はこのうち「強制労働の廃止」(105号条約)と「雇用と職業における差別待遇の禁止」(111号)の2条約を批准していません。前者に関しては、国家公務員法・地方公務員法でストを「企て、共謀し、そそのかし、若しくはあおった」者に対する懲役刑を定めているのが条約に抵触が未批准の理由であり、後者に関しては、条約の禁止する7つの根拠に基づく差別を明確に禁止する国内法の不在と、使用者側の心理的抵抗が未批准の理由だそうです。
今後、日本の労働環境は改善するのでしょうか。
【執筆者:公認会計士・公認不正検査士 松澤公貴】
Webサイト |
www.jp-kmao.com

0 件のコメント:

コメントを投稿