平成28年の今年は、平成26、27年ほど大きな改正はありませんでしたが、法人実効税率の 20%台への引下げや、消費税の軽減税率導入等が納税者優遇となりました。しかし、配偶者控除など、社会全体への影響のある個人所得税制の見直しは先送りです。
★以下に国税を中心にちりばめられた?主なTopics☆彡を概観します ☆彡
《法人税編》
法人税改革は 「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」 が基本方針になっており、デフレ脱却と経済再生を最優先としての改正内容となっています。
◆法人税の税率引下げ
法人税の税率は、
(1) 平成28年4月1日以後に開始する決算期からは23.4%(標準ベースでの実効税率は29.97%)、
(2) 平成30年4月1日以後に開始する決算期からは23.2%(標準ベースでの実効税率29.74%)です。
なお、中小法人等の軽減税率15%(所得800万円以下)はそのままです。
◆減価償却制度の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備、構築物の償却方法については,定率法を廃止して、定額法に一本化となります。
◆欠損金繰越控除の見直し
(1)欠損金の控除限度額は、
①平成28年4月1日以後に開始する決算期からは所得の60%(現行:65%)、
②平成29年度開始55%(現行:50%)、
③平成30年度以後開始50%(現行:50%)と一部見直し。
(2)資本金3千万円未満の中小法人等については従来どおり、
①控除限度額は所得の100%、
②欠損金にみあった税金の還付(繰戻還付)でそのままです。
(3)平成30年4月1日以後に開始する決算期からは、
①青色欠損金の繰越期間、
②青色欠損金の控除制度に係る帳簿保存期間、
③欠損金に係る更正の期間制限、
④欠損金に係る更正の請求期間が10年(現行9年)に延長されます。
◆少額減価償却資産の特例について
中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入は、対象となる法人から―従業員の数が1,000人を超える法人を除いた上で、適用期限が2年延長されます。
◆生産性向上設備投資促進税制の見直し
この税制の特別償却又は税額控除は、適用期限をもって廃止され、上乗せ措置についても平成28年3月末までで延長しない事になりました。
◆その他の改正
企業の「稼ぐ力」と「攻めの経営」を後押しするため、役員給与における多様な株式報酬等の導入などの整備といった改正もなされています。
《個人所得税編》
個人課税については、配偶者控除等各種控除の抜本的な改正は見送られました。
★ 次にちりばめられた?主なTopics☆彡を概観します ★
◆空き家に係る譲渡所得の特例
昨今、不動産は空き家が増えてかえって負の遺産となる事が社会問題化しています。その解消策としてこの特例が創設されました。
(1)相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人が住んでいた家屋(耐震性を具備したものに限る)を相続した相続人が、それを更地にもどした後の土地を譲渡した場合には、その譲渡益から3,000万円を控除することができるというものです。但し、次の要件等をクリアーしなければなりません。例えば、
①家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンションを除く)。
②相続発生時に、被相続人以外の居住者がいないこと。
③相続時から譲渡時点まで、居住・貸付け・事業の用に使われていないこと。
④譲渡価額が1億円を超えないこと・・・、などです。
(※適用期間は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの譲渡)
◆三世代同居改修工事の特例
三世代同居のために改修工事を行った場合、次の(1)又は(2)の特例が使えるというもので、新設です!
(1)改修工事の住宅借入金等(償還期間5年以上)の年末残高1,000万円以下の部分について、一定割合を5年間、所得税額から控除する。
(2)改修工事の標準的な費用の額の10%相当をその年だけの所得税額から控除する。改修工事には要件があり対象工事は次の部分。または2か所以上の増設の場合は50万円超であること。
①キッチン
②浴室
③トイレ
④玄関
⇒たとえば工事費150万円であれば、所得税が15万円少なくなるという計算です。
(※適用対象期間は、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの居住)
◆その他の改正
・非居住者への相続に係る「国外転出(相続)時課税」に関し遺産分割協議確定による修正申告や更正の請求を認める。
・市販薬の一定額購入による所得控除の創設(医療費控除との重複適用不可)。
・通勤手当の非課税枠15万円までの引上げ。 等があります。
***** ひとりごと *****
そういえば、今年の1月から法人が受ける利子等に係る税金 「利子割」5% が廃止されました。これも地方自治体のムダ遣いのあらためといえるでしょう。実に驚く内容ですが・・・、預金利息から徴収される利子割税金の5%は、法人税の前払なので,法人税の申告の際に精算されていました。しかし、この精算業務をするのに各自治体では多大な事務負担を要しており、さらに精算後5円や10円を還付するために、毎回数百円の銀行の振込手数料も税収から拠出されているという現実だったのです。
※ちなみに個人はそのまま5%徴収されます。
◎結果、預金利息の税金はこうなります。 ↓
利子割(地方税)/ 所得割(国税)
【法人】 0% / 15.315% 合計で15.315% になった。
【個人】 5% / 15.315% 合計で20.315% のまま…
♪それから、今回新設された“3世代同居改修工事の減税”は少子化対策が目的のようです♪
3世代で同居することにより、子育てがよりし易くなる環境を整備するという政府の考えで、少子化の原因の一つは、出産や子育てを自分達の世代だけで行うことに不安が大きいからではないかとの深読み?(浅読み?)の考え方にあるようです。3世帯同居!?とてもにぎやかで楽しそうですね~。。。しかし、税金が15万円(マックス100万円)くらいの減額なら、別居の方が,気が楽と思うのが最近の世代かもしれませんね^^
今ある制度で良く似たものに“住宅特定改修特別税額控除”があります。この制度は、バリアフリーの改修工事をした場合に所得税からその一部を控除できる制度になっていますね。
いかがでしたでしょう。ちりばめられた改正Topicsでお得感を感じていただけるといいのですが。。。☆彡
【執筆者:Kyosann 税理士・CFP・FP1級技能士】Webサイト | http://et-inc.jp
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